都立病院 独法化でどうなる 「充実求める連絡会」が学習会

都立病院  独法化でどうなる 「充実求める連絡会」が学習会
「直営での充実こそ」
 「都立病院の充実を求める連絡会」は15日、東京都の病院経営委員会が都立病院の新しい経営形態でふさわしいとした地方独立行政法人化について、「都議とともに考える学習講演会」を都庁内(新宿区)で開きました。地域で運動を進める人など100人近くが参加しました。
 
 学習会では氏家祥夫共同代表が「私たちが都立病院をつくるという迫力で運動を進めましょう」と呼びかけ、前沢淑子同代表が「直営堅持」を求める署名を集めることや、独法化の問題点を短文投稿サイトのツイッターなどで拡散することなどの行動を提起しました。
 
 尾林芳匡弁護士が講演。石原慎太郎都政が「効率化」や「生産性の向上」の名で強行した「都立病院改革」で都立病院を半減させた経過や、医療法(別項)の条文を紹介した上で「医療とは何なのかという根本に立って、独法化は都民の願いにそっているのかを考えることが一番大事だ」と強調しました。
 
 尾林氏は公共サービスの主体を国や自治体直営から、独立行政法人に移す独法化法の狙いについて、総務省の研究会報告書も示して「交付金を削減するための制度だ」と指摘。独法化で運営交付金が毎年大幅に削減され、施設整備補助金はゼロにされた国立病院の例を紹介。人件費の削減による欠員や病床数の削減、患者への負担増が行われる一方、経常収支は大幅黒字に転換しました。都でも独法化した健康長寿医療センターで、同様に経営が重視され、コスト削減と患者への負担増が進んだことを指摘。また大阪府でも、府立病院を独法化(06年)した大阪府立病院機構は、非紹介患者の初診料が1701円から2625円に、成人病センターのセカンドオピニオン診療費が7000円から21000円に値上げしたほか、母子センターなどの分娩料の値上げ、入院日数の短縮化など「経営の効率化」を進めたことを詳細に説明しました。
 
地域から 声あげよう
 一方、都立病院では採算が取れない行政的医療が残っているのは、条例変更のための議会関与があるからだと強調。採算を重視する独法になれば、議会の通過なしで、不採算医療の切り捨てや患者への負担増が可能になると指摘しました。
 
 尾林氏は、この他に独法化の問題点として▽住民サービス後退の恐れ▽住民自治・住民参加の後退▽職員・労働者の身分保障と権利のはく奪―をあげました。
 
 その上で「公共サービスは経済的に弱い立場の人のためにあるもので、独法化は許されない。都民のための都立病院は、直営で充実させることこそ必要だ」と強調。「地域から都を包囲して、独法化にストップをかけましょう」と呼びかけました。
 
 学習会には日本共産党から和泉なおみ、里吉ゆみ、米倉春奈、藤田りょうこ、斉藤まり子の各都議のほか、足立、北、江戸川各区議らも参加。連絡会は3月27日にも、2回目の学習会を計画。安達智則氏(都留文科大学講師)を講師に招きます。
 
良質な医療求める医療法
 1条には「…医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もって国民の健康の保持に寄与する…」と目的を規定。医療の理念について「生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨と」(1条の2 1項)するとしています。
 
 国、地方自治体の役割については1条の3に「国及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない」(1条の3)としています。
 
 さらに7条第5項では「都道府県知事等は営利を目的にして病院を開設しようとする者に対しては、病院の開設許可を与えないことができる」としていますが、実際は民間の資金やノウハウで公共施設の建設と調達を行うPFI法(99年)や規制緩和を進める「特区」などの導入で、病院など、公共サービスが企業の営利追及の場になっていると、尾林氏は指摘しています。