神宮外苑再開発(港区、新宿区)から歴史的景観と緑の環境保全を求める住民らが東京都による事業認可は違法だとして取り消しを求めている訴訟が15日、東京地裁で結審しました。来年1月28日に判決が言い渡される見通しです。

来年1月に判決へ
訴訟は原告団長のロッシェル・カップさんら160人以上の住民らが原告となり、都を被告として2023年2月に神宮外苑の再開発事業の施行認可処分の取り消しを求めたものです。原告は「事業認可の前提となる都市計画決定や環境影響評価に重大な瑕疵(かし)があり、都知事による認可処分は裁量権の範囲を逸脱・濫用したもので違法だ」と主張しています。
裁判後、原告らは国会内(千代田区)で報告会を開催。カップさんは「長い時間が経ったが、ようやく判決が出る。最後の裁判で原告からインパクトのある意見陳述があり、原告代理人の農端康輔弁護士から訴訟全体を伝えることができた。良かったと思う」とあいさつしました。
2大争点を軸に
原告代理人の農端弁護士が2大争点を軸に裁判が進められたと報告。一つは「そもそも原告が訴訟を起こす資格を持つかという『原告適格』の問題」、もう一つが「事業認可の違法性」の問題です。
行政処分を争う訴訟では、訴えを起こすことができる原告は、原則として処分によって直接に権利が制限されたり義務を課せられる当人とされています。「原告適格」が認められなければ、審理に入ることなく「門前払い」となるため重要な争点です。
農端弁護士は「生活環境上の利益」「景観利益」「防災上の利益」の3つの側面から原告適格が認められるべきだと主張したとし、生活環境上の利益が認められた先例も紹介しました。
また、違法性については「公園まちづくり制度」の違法な適用を指摘。高層ビルなどを建てるための容積率緩和を可能とする「再開発等促進区」の適用についても、都市計画法が定める要件を満たしていないのに公園を民間企業の利益のために利用したとし、制度の濫用であり違法だと主張したことなどを説明しました。
伐採を止めるべき
原告の白田信重さんは、この日の裁判で行った意見陳述の内容を紹介しました。参加者からは「樹木は心と体に関係する大切なもの。伐採をストップさせるべきだ。民主主義を果たすために、もっと多くの人に関心をもってもらいたい」「神宮外苑だけでなく、全国の再開発で企業利益が優先され公共性が脅かされている。他の運動ともつなげてほしい」など、裁判とともに住民運動の重要性を強調する意見が相次ぎました。
当初から反対の声
再開発事業者は三井不動産、明治神宮、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)、伊藤忠商事の4者。計画では神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替え、高さ190メートル、185メートルの超高層ビルなどを建設。多数の樹木伐採や歴史的施設を壊して行われる事業に対し、住民からは計画当初から強い反対の声が上がっていました。
再開発計画を巡っては、本来開発が不可能な地域に対して、制度や条例を無理に解釈し、都と事業者が一体となって強引に進めるやり方が国内外から批判を浴びました。
国際NGO(非政府組織)国際記念物遺跡会議(イコモス)が計画撤回を求め、環境アセスメントの世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部も、住民とのコミュニケーションが足りないと厳しく指摘。音楽家の坂本龍一さんは、亡くなる約1カ月前に再開発見直しを求める手紙を小池百合子都知事に送っていました。
