外交的合意に基づき解決 冷静で理性的対応必要
日本共産党の山添拓政策委員長は30日、NHK「日曜討論」に出演し、各党の政策責任者と日中関係や経済対策を巡って議論を交わしました。山添氏は、高市早苗首相が「台湾有事」は「存立危機事態」に「なり得る」と発言したことについて、日中の戦争の可能性に言及する極めて危険なものだと厳しく批判し、撤回を求めました。

山添氏は、「存立危機事態」とは日本が攻撃されていない状況でも集団的自衛権を行使し、自衛隊が米軍のために武力行使できる事態だと指摘し、「高市首相は台湾海峡で米中の武力衝突が起こることを想定して、『どう考えても存立危機事態になり得る』と発言した。日本への攻撃がなくても米軍を守るために参戦する、つまり、日本が中国と戦争することがあり得ると宣言したものに等しい」と批判。「そうなれば日本にも中国にも甚大な被害をもたらし、憲法も蹂躙(じゅうりん)する。ここに一番の問題があり、やはり撤回が必要だ」と強調しました。
また、中国側も事実に基づかない主張や対立をあおる言動は慎むべきだとして、「冷静で理性的な対応を求めたい」と述べました。
一方、自民党の小林鷹之政調会長は「従来の政府の立場を何ら変えるものではない」などと主張。国民民主党の田中健政調会長代理は「『存立危機事態になり得る』と可能性を述べただけで撤回の必要はない」、参政党の安藤裕幹事長も「少し踏み込んだ表現だが間違いではないので撤回することはない」と高市首相の発言を擁護し、ほとんどの党が撤回を求める姿勢を示しませんでした。
今後の日中関係について、山添氏は「政治的な対立を外交的な合意に基づいて解決していくことが大事だ」と強調しました。1972年の日中国交正常化に際する日中共同声明で、日本は「台湾は中国の領土の不可分の一部である」とする中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」としており、「高市首相が台湾問題で日本の軍事介入の可能性を公言したことは、この立場に反している」と指摘。また、2008年の日中共同声明の「双方は互いに脅威とならない」との合意にも反する軍事的威嚇の発言だと批判しました。
各党が経済面での「中国依存」解消を主張し、まともな外交戦略を語らない中、山添氏は「対立と緊張が高まりさまざまな影響が生じているが、発端は高市首相の誤った発言だ。解決のためには答弁を撤回するしかない。その上で日中双方がこれまでの合意に基づいた冷静な対話を行うことが必要だ」と重ねて訴えました。
(「しんぶん赤旗」2025年12月1日付より)

