差別や排外主義をあおる政治の広がりに反対し、多文化が共生する東京のあり方を考えようと、日本共産党東京都委員会は18日、シンポジウムを開きました。国会議員、地方議員、生活・医療支援の現場など、それぞれの立場から現状や取り組みを報告し、語り合いました。

吉良氏「差別許さぬ声をともに」
パネリストとして、吉良よし子参院議員、宮本徹前衆院議員、岩崎明日香同党幹部会委員、沢田あゆみ新宿区議が発言し、山添拓参院議員が司会を務めました。
吉良氏は「国会における差別・排外主義の現状」として、山添氏とともに報告しました。
7月の参院選について吉良氏は、「選挙戦が進むにつれ、排外主義をもとにしたデマが争点であるかのように描かれていった。『次は自分が攻撃されるかもしれない。差別をとめてください』と、不安そうに話しかけてくる人も増えていった」と振り返りました。
そのうえで、いま国で進められている排外主義的な政策の例として、博士課程の学生を支援する「スプリング」事業の対象から留学生を除外する問題と、入管による「不法滞在者ゼロプラン」について、詳しく紹介しました。
スプリングからの留学生の除外の動きは、自民党の有村治子参院議員が、対象者の4割が外国人で、中国人が多いと問題視する国会質疑を行ったことがきっかけで始まりました。その質問があった委員会に参加していた山添氏は、「外交防衛委員会の場で、『静かな侵略』がされているとして、この問題を取り上げた。異様な質問だった」と語りました。吉良氏は「重要なのは、博士課程にいて支援が必要な人たちに、きちんと支援が届くようにすることだ。予算を増やさず、その枠の中で、日本人の割合が低いのが問題かのように議論するのは間違いだ」と批判しました。
不法滞在者ゼロプランについては、吉良氏の聞き取りに入管の担当者がプランを打ち出した理由を、「国民の不安」と答えたことを報告。「『不安』という定量化できない根拠をもとに、強制送還の数を増やすなど定量化した目標を持とうというひどい政策だ。国際的な人権のルールを守らず、強制的に送還されるケースが、相次いでいる」と批判しました。
デマへの反論も
シンポジウムでは、「排外主義のデマを切る」(宮本氏)、「戦前からの日本共産党のたたかい」(岩崎氏)、「新宿での多文化共生の努力」(沢田氏)、「生活・医療支援の現場から」(谷川氏)と、それぞれの立場や現場からの報告も行われました。
宮本氏は、外国人が増えたことで犯罪が増えたというデマに、データも示して反論。「犯罪と国籍を結びつけない、そういう規範を日本社会に作っていこう」と呼びかけました。
また、「外国人が医療保険にただ乗りしている」などのデマに対しても、移民や外国人労働者には若い世代や現役世代が多く、社会保険料を支払う一方で、医療などにかかる人数は少ないため、むしろ医療財政に貢献していると説明しました。
岩崎氏は「日本の排外主義の特徴の一つは、戦前の侵略戦争の美化と結びついていることだ。戦前からのたたかいの歴史は、現代の問題にもつながっている」と、戦前の日本共産党のたたかいを紹介しました。
沢田氏は、新宿区は多様な国籍の人が暮らし、その数は135カ国に及ぶと切り出しました。区民のボランティアによる日本語学習支援など、草の根レベルでの交流が広がっている一方で、区長からは外国人の国保料滞納が多いかのような発信がされるなど、「水をさすような動きもある」と指摘しました。沢田氏は、外国人の国保滞納について「そもそも日本人も含めて、支払えないほど国保料が高すぎることが大きな問題だ。国によっては、保険制度になじみがなく、仕組みが理解しにくい場合もあり、丁寧に説明して理解を得てこそ、収納率も向上する」と提起しました。
命脅かす困窮が
谷川氏は、都庁前での食料配布など、生活・医療支援の現場にも、外国にルーツを持つ人たちが多く相談に来ているとして、「そうした人たちのコミュニティ自体が困窮して、医療などを受けられない状況が広がっている」と指摘しました。
その一方、外国の富裕層が日本に観光を兼ねて医療を受けに来る「医療ツーリズム」の政策を国が進める中で、外国籍というだけで、医療機関で日本人の3倍もの自己負担を求められるケースが広がっていることを報告。「命を脅かすような事態が、私たちのすぐ隣で日常的に起きている」と語りました。
「知人が排外主義的な主張の政党を支持しているときに、どう話せばよいか」「参政党の主張は反グローバリズムなのか」など、参加者からのさまざな質問に、パネリストが答えました。
議論のまとめで、吉良氏は「デマと差別をあおる政治で、たくさんの人が傷つけられている。そういう政治を許さないという声を、今こそありとあらゆる場所であげていこう」と呼びかけました。シンポジウムの動画は、日本共産党都委員会のユーチューブチャンネルで公開されています。

