裏金固執の自民 擁護の都ファ・公明
13日に告示される東京都議選(22日投開票)では、物価高騰や格差・貧困の拡大で苦しむ都民の暮らしそっちのけで、国政でも都政でも企業・団体から資金を集め裏金をつくってきた自民党の金権政治の一掃が、鋭く問われています。6日に閉会した都議会定例会の論戦で、どの党が真剣に裏金一掃に取り組むのか、どの党が妨害したのかが鮮明になりました。(東京都・川井亮)
パーティー禁止で態度くっきり
今年の都政で大きな焦点の一つとなったのが、都議会自民党の裏金問題を徹底究明し、再発防止に踏み出すのかどうか、という問題です。
6日の都議会最終本会議。日本共産党、立憲民主党、ミライ会議、「自由を守る会」、グリーンな東京、生活者ネットの6会派は、前文で裏金問題が都議会自民党によって引き起こされたことを明記し、政治資金パーティーの自主的な禁止を盛り込んだ政治資金倫理条例案を提出しましたが、自民党、都民ファーストの会、公明党が反対し否決。この3党は、都議会自民党を名指しせずパーティーを温存する「政治倫理条例」案を共同提出し、可決しました。
本会議で討論に立った共産党の白石たみお都議は、自民・都ファ・公明案を「真相解明にふたをする裏金自民免罪条例だ」と厳しく批判しました。
疑惑追及の発端は党都議団と「赤旗」
問題の発端は、都議会自民党が政治資金パーティーの売り上げを都議の手元に留め置く「中抜き」を行い、政治資金収支報告書に記載していなかったことが、共産党都議団と「しんぶん赤旗」の調査で発覚したことです。
都議会自民党が2019年12月のパーティーに向けて所属議員1人当たり200万円分のパーティー券を配り、100万円分しか納めなくてよいと「中抜き」を指示していたことも、共産党都議団が入手した内部文書で分かりました。
都議会自民党は1月18日に記者会見し、「都議会自民党として政治資金パーティーを行わず、政治団体としては解散する」と表明。23日の会見では、19年と22年のパーティーで現職16人を含む都議ら26人が不記載を行っていた事実を認め謝罪。当事者の一人の宇田川聡史都議会議長が議長辞任に追い込まれ、同氏ら幹事長経験者6人を都議選で非公認とせざるを得なくなりました。
しかし、疑惑はこれにとどまりませんでした。
共産党都議団は3月5日、「しんぶん赤旗」日曜版が入手した資料を基に、この他に少なくとも現職国会議員や都議ら12人以上(故人を含む)も不記載だったことを明らかにしました。
野党会派が結集し自民を追及
問題発覚を受けた都議会では、疑惑の全容解明と再発防止が焦点となりました。
共産党、立民、ミライなど6会派は2月19日の都議会本会議で、裏金問題を全会派の参加で解明する「政治倫理審査委員会」の設置を共同提案し、都議会の3分の1を占める42人が賛成しましたが、自民、都ファ、公明が否決。裏金解明を目的としない「政治倫理条例検討委員会」が設置されました。
検討委で共産党、立民、ミライは密室での審議に反対し、公開での議論と裏金都議らの参考人招致を要求。4月には、不記載があったパーティー開催時の都議会自民党幹事長で自らも裏金をつくっていた小宮安里、鈴木章浩両都議の参考人招致、裏金16都議への文書質問が実現しました。
小宮、鈴木両氏は「(売り上げを)口座で管理していた」などとした一方、裏金を使ったかについては「全額を口座で留保していた」と説明しました。
しかし、鈴木氏が自身のブログ(1月25日付)で「政治資金として支出した」と書いていたことを白石氏が追及。鈴木氏の説明が支離滅裂であることが浮き彫りになりました。
自民事務局長の証言で矛盾鮮明
裏金づくりをいつから誰の指示で行っていたかについては「確認できなかった」(小宮氏)、「前例を踏襲」(鈴木氏)としただけ。16都議の文書回答でも「いつ、どこで、誰から、というのは定かではありません」(宇田川氏)などと、判で押したように沈黙しました。
ところが、19年のパーティー開催時に都議会自民党政調会事務局長だった鴫原(しぎはら)浩氏が、検討委の文書質問への回答書(5月20日付)で、開催前の10月21日に都議1人当たり100枚のパーティー券が渡され、うち50枚分100万円を「所定の期日までに会計担当に納入するよう幹事長(鈴木氏)から説明があった」「残りの50枚については各議員の意向に委ねるとの発言があった。さらに追加分については、会費の半額を納入するよう指示があった」と具体的に説明しました。共産党都議団が入手した内部文書が都議会自民党のものであることを認めました。
鴫原氏は5月28日の検討委にも参考人として出席し、19年10月21日の総会で「「ほぼそのペーパー通り(鈴木)幹事長が発言したのを私自身は明快に覚えている」「実際の発言は、ご自由にどうぞ、お好きにどうぞというような、かみ砕いた言い方だった」と証言。都議会自民党が事実を認めた26人の他に少なくとも12人が不記載だったことを示す「追加リスト」についても「都議会自民党政調会の共有サーバーにそのような資料があった」と語りました。
自民党都議の回答と、元事務局長の証言との間に矛盾があることが鮮明になり、共産、立民、ミライは小宮、鈴木両氏の再招致を求めましたが、小宮、鈴木両氏は再招致も資料の提出も拒否しました。
パー券9割 企業や業界
自民16都議の文書回答では、2回のパーティー券を売った相手の約9割が企業や業界団体だったことも鮮明になりました。
共産党など6会派は6月6日の本会議で、自民都議の再招致拒否を批判し、「真相解明にほど遠い下で、まずは原因となった政治資金パーティーは自主的に禁止することが必要不可欠」(共産党の大山とも子都議の趣旨説明)として、政治資金倫理条例案を共同提出。
これに対して、都ファと公明党は「パーティーは法的に認められて活動している」(3日の検討委で都ファ)として、パーティーを温存する「政治倫理条例」案を提出しました。そして、定例会閉会前日の5日になって突然、条例案に「条例施行前の行為には適用しない」との文言をわざわざ盛り込み、自民党と共同提出するという助け舟を出しました。
白石氏は6日の本会議で「これ以上、自民党の裏金問題を追及しないという宣言に他ならない。自民党が共同提案者となるための露骨な『配慮』と言われても仕方ない」と厳しく批判しました。
都議会自民党はこの日午前に行った都議選公約発表の記者会見で「都政を刷新させる」「都議会自民党も生まれ変わる」と表明しました。
しかし、都議会で疑問にまともに答えなかった自民党に「都政の刷新」も「生まれ変わる」ことも期待できません。窮地の自民党を助けた都ファと公明も同様です。裏金政治の一掃には共産党の躍進こそ必要です。
裏金自民都議一覧(敬称略)
◆自民党が1月の会見で不記載を認めた現職都議の都議候補
石島秀起(中央区)
吉住栄郎(新宿区)
鈴木章浩(大田区)※
三宅茂樹(世田谷区)※
小宮安里(杉並区)※
早坂義弘(杉並区)
河野雄紀(板橋区)
柴崎幹男(練馬区)
発地易隆(足立区)
宇田川聡史(江戸川区)※
伊藤祥広(八王子市)
星大輔(町田市)
本橋巧(北多摩2区)
田村利光(西多摩)
小磯明(南多摩)
三宅正彦(島部)※
◆同元職の都議候補
山崎一輝(江東区)※
◆「しんぶん赤旗」日曜版3月2日号が明らかにした2019年パーティーの「追加分」記載の現職都議候補
山加朱美(練馬区)
松田康将(板橋区)
※は非公認
(しんぶん赤旗2025年6月13日付より)