“都心のオアシス”として親しまれている東京都立日比谷公園(千代田区)が大改造されようとしています。都による「公園再生整備」計画によって、園内の樹木約1000本が危機にあります。(芦川章子)
葉が落ち、紅葉しつつある10月下旬。ケヤキ、マツ、イチョウ、サクラ…。約16万平方メートル、東京ドーム3・5個分の面積に、約3100本の樹木が茂ります。今年、開園120周年を迎えました。
「樹齢100年前後の木々ばかり。先人たちが大切に育んできた宝です」
約10年間、日比谷公園に勤めてきた元管理所長の髙橋裕一さんは、いとおしそうに樹木を見つめます。
既に伐採開始
都が策定した「公園再生整備計画」は、全体を九つのエリアに分け、段階的に再整備するもの。2033年の完成をめざし、10年かけて工事をします。第1期工事は9月4日から始まっています。
計画の目玉は、隣接する「東京ミッドタウン日比谷」(三井不動産)などの民間商業ビルと公園をつなぐデッキの建設です。幅8メートルと18メートルのデッキを2本かける計画です。
デッキ予定地そばの「にれのき広場」では、すでにニレの木23本が伐採されています。
園内の多くの木々は、樹径1メートル超、高さ15~20メートル近くの大木。地中深く、どっしりと根を下ろしています。
髙橋さんは「移植なんて事実上、不可能。デッキの建設は、木を切らなければできないだろう」といいます。
公園の外周の木々も撤去の対象です。髙橋さんの試算では、約1000本が伐採される可能性があります。
計画では、カワセミが飛来し、在来生物が数多く残る「心字池(しんじいけ)」には橋がかかります。園内の柵はすべて撤去されます。「植物が踏み荒らされ、生態系が破壊される」(髙橋さん)。
文化財も壊されようとしています。
歴史建造物も
1903年、日本初の近代的洋風公園として開園した日比谷公園。「日本の公園の父」と呼ばれた本多静六博士が設計しました。
再整備計画では、大音楽堂(野音)、小音楽堂、テニスコート、大噴水など、歴史ある建造物も容赦なく壊す予定です。日比谷公園100周年記念事業で始めた「思い出ベンチ」200基もすべて撤去します。
計画について都民、利用者に周知したとは言い難い状況です。説明会は工事開始直前の8月初旬、猛暑の中、公園内のテントで行いました。来場者は3日間で約200人でした。
10月下旬、さいたま市から訪れた女性(77)は「これほどの公園はなかなかない」。仲間30人とスケッチをするつもりだといいます。計画について「まったく知らなかった。景観が台無し。明治神宮外苑と同じことが起きている」と驚きを隠せません。
日本共産党の原純子都議は9月13日、都議会の環境・建設委員会で計画は「スクラップ・アンド・ビルド」の「公園大改造」だと批判。「誰のための都立公園か」として「工事をストップし、都民、利用者の声を聞き、計画を抜本的に見直す」よう求めました。
「日比谷公園の歴史と文化をこよなく愛する会」は、「チェンジ・ドット・オーグ」で計画見直しを求めるネット署名を呼び掛けています。
(しんぶん赤旗2023年10月30日付より)