統一地方選は、住民の願いを大切にする自治体を実現して、安心して暮らせる地域をつくる選挙です。学校給食費の無償化や若者支援、住民の生活相談や、インターネットを通じた議会論戦の発信など、草の根から暮らしに希望をつくろうという取り組みを紹介します。

八王子市 奨学金返済支援の新制度
民青 実態集め市に届ける

 年の瀬が迫った12月18日、八王子市南大沢の都立大学前で、日本民主青年同盟八王子地区委員会によるフードバンクが開かれました。
 「今年最後のフードバンク」の看板が立てられ、机には、米やパスタ、レトルトカレー、缶詰などが隙間なく並べられます。
 2時間にわたって途切れることなく学生が立ち寄りました。ほとんどの学生が、持ってきた袋だけではなく、主催者が用意したビニール袋ももらって、何袋も食材を詰めて持ち帰ります。
 都立大学2年生の女性は、「コロナ禍で、1年の時はバイトも思うようにできなかった。大変なので、ありがたいです。お米やパスタが助かります」と笑顔で話しました。
 民青八王子地区委員会では、都立大学前のほか、多くの大学が集まるモノレール大塚・帝京大学駅前などで、繰り返しフードバンクを開いてきました。メンバーは「のべ千人くらいは利用しているのでは」と話します。
 支援を通じて集めた学生の実態は、八王子市との懇談などを通じて、行政に届けてきました。そのなかで八王子市は今年7月、大学卒業後も市に在住する若者が、在学中に受けた奨学金の返還額の半分を支援する返還支援制度をつくりました。市政の大きな課題である、大学卒業後の定住促進のねらいもあります。
 市議会で学生への支援を求めてきた日本共産党の望月しょうへい市議は、「私自身も市議会で、フードバンクの場などで聞いた切実な声をとどけてきました。そうした論戦とあわせて、青年たちが自ら声を集め届けてきたことで、市が学生の実態と支援の重要性を認識し、市政における学生支援の位置づけが高まった」と振り返ります。
 今年度の50人の枠は、8月に募集を始めると3日間で埋まりました。
 足立区も11月、返済不要の給付型奨学金の創設を発表しました。大学の入学金や授業料などにかかる費用全額を給付します。日本共産党足立区議団は、成績要件の緩和や対象人数の拡大など「さらに使いやすい制度に」と求めています。

困り事の中に政治の課題
地方議員 年末年始へ相談活動

 #(ハッシュタグ)困った時は共産党―ツイッターで一時、トレンドになるぐらい、コロナ禍で日本共産党が頼られています。その中心を担っているのが、区市町村で活動する地方議員です。
 港区の共産党区議団は毎月1回、弁護士と連携した「なんでも相談会」を開いています。福島宏子区議が12月21日に開いた相談会には3人が訪れました。法律に関することは、小河洋介弁護士が対応します。
 「毎日が相談日です。生活保護や近隣トラブルなど内容は人それぞれで、内容によっては区の窓口につなげます。生きづらさを抱えていたり、コミュニケーションがうまくできないことで自ら解決できない方も少なくありません。しっかり相談者に向き合って話を聞くように心がけています」と、福島さん。
 地元のシングルマザーの女性は「子育ての相談や生活の悩みを親身になって聞いてもらい、とても心強いです。いつも明るく寄り添ってくれる」と、頼りにしています。

悩み聞く社会に
 板橋区の、いわい桐子区議が12月11日に開いた弁護士同席の相談会には4人枠に9人が予約。毎日2~3件の新規相談も寄せられ、臨時の相談会を開きました。
 「経済的な相談が多くなってきた印象です。中間層の方が追い詰められて相談に来るケースも増えています」と、いわいさん。「住宅ローンが払えない。競売にかけられそう」「年末をもって解雇になった。退職金も出ない」「コロナの支援金や協力金で踏ん張って商売を続けてきたが、もう限界」。生活保護のようなセーフティーネットに直接、つなげられないケースです。
 「困りごとの中に政治の課題があります。それを見つけるのも政治家の仕事です」と言う、いわいさんに、記憶に残る相談者がいます。
 川に飛び込んで死のうと思った女性が通りすがりに見た「生活相談」の看板を思い出して、事務所を訪ねました。いっしょに泣きながら話を聞きました。女性は自殺を思いとどまりました。いわいさんは言います。「困った事、悩み事を誰かに聞いてもらえる社会でありたいですね」。

TikTokに議会論戦
荒川区 まんなか世代が配信強化

 昨今行われた選挙結果の分析から、インターネットやSNS(ネット上の交流サイト)を利用した情報発信の重要性が明らかになっています。
 荒川区では、日本共産党の北村あや子(50)、相馬ゆうこ(40)の両区議、2021年11月に同党に入党した薬剤師のゆーたん(36)、22年夏に入党した会社員のみーたん(29)の4人がチームを組み、統一地方選を見据え、区議会の論戦や区議の人物像を紹介するSNSを使用した動画配信に力を入れています。
 動画は3分までのショートムービーに音楽を付けて投稿できるTikTokをメーンに、写真や動画を共有できるInstagramと、短文や写真、動画がアップできるTwitterに、同じ動画を流しています。
 北村区議は「YouTubeでは動画編集の負担が重くなる。手軽に始められるツールとして、TikTokにチャレンジしてみました」と語ります。
 動画のアップは週1回が目標。1、2カ月に1度のミーティングで、投稿する動画の内容やスケジュールを決め、ゆーたんとみーたんが撮影や編集、加工を行います。編集や字幕の文字打ちなど、作業はすべて携帯電話ひとつ。「議会論戦は分からない用語が度々出てくるので、最初は言葉を聞き取ることが大変だった。質問の原稿をもらうようになり、作業が楽になりました」と、ゆーたんは笑います。
 「投稿する時間帯が重要。比較的みんなが携帯を手にするお昼頃に投稿すると再生回数が伸びる」と、ゆーたん。北村区議は「意外にも、かわいい動物の動画より議会論戦の動画のほうが再生回数は多い。ハッシュタグは荒川区だけの問題だと視聴者が限られるが、アスベストや統一地方選など、全国規模のワードは視聴回数に跳ね返ってくる」と視聴の傾向を話します。
 動画投稿を始めた当初の目的は、「日本共産党の露出を高める」こと。4人の努力が地域の人たちに伝わり、今では各区議のTwitter発信も増えました。まんなか世代の活躍が、SNSに苦手意識のあったベテラン世代にも大きな影響を与えています。