米倉都議「今は立ち止まろう」 都立・公社病院 6波さなかの独法化強行

 都議会第1回定例会は本会議を開き、小池百合子知事の施政方針に対する代表質問(2月22日)と一般質問(2月24~25日)を行いました。日本共産党からは代表質問に米倉春奈都議が立ち、都政の重要課題で知事をただしました。その中で、7月移管に向けて都立病院条例廃止をはじめ7つの関連議案を提出した都立・公社病院の地方独立行政法人化について、施政方針でなぜ一言も触れなかったのかと厳しくただすとともに、新型コロナ第6波のさなかの独法化は一旦立ち止まろうと、全会派に呼びかけました。(長沢宏幸)

代表質問 全会派に呼びかけ
 「丁寧に説明すると言ったのはうそだったのか。実際は説明する言葉がないのではないか」。米倉都議は小池知事を厳しくただしました。
 米倉都議は独法化中止を求める署名が30万人を超え、3つの障害者団体が「都立病院条例廃止」の中止を求める要望書を都議会全会派に提出するなど、都民の理解は得られていないと強調。
 また独法化で都職員7000人が公務員の立場を奪われるのに、大塚病院での説明会には職員約600人中約30人しか会場に参加していないなど、コロナ対応で忙殺されている職員との十分な意思疎通はできていないと指摘。「独法移行に際し職員団体との十分な意思疎通を定めた国会の付帯決議違反だ」と追及しました。
 その上で「独法化に対する意見の違いは色々あっても、コロナ禍の第6波のさなかの今やるべきではない」と強調。独法定款に賛成した会派も含めて「今は立ち止まることを心から訴える」と呼びかけました。
 小池知事は「昨年3月の第3回定例会で法人の定款を議決いただいた」「7月の設立に向け、引き続き必要な準備を着実に進めていく」と強弁。米倉都議は「聞いたことに答えていない」として再質問し、「施政方針で、なぜ一言も触れなかったのか、都民のみなさんに分かるように、きちんと丁寧に説明を」と迫りました。知事は席を立たず、西山智之病院経営本部長も答えませんでした。

病床削減も推進
 米倉都議は「都立・公社病院の独法化は、医療費や公共サービスを削減する、自民党政権による新自由主義の具体化に他ならない」と強調。予算案に消費税を財源に都内医療機関の病床を削減する病床機能再編支援事業1億6000万円を計上したことも重大だと批判しました。

後手のコロナ対策
 小池知事は新型コロナ感染拡大の第6波で猛威を振るう変異株オミクロン株に対して、「先手先手の対策を講じ」「効果は着実に表れています」と胸を張りました。
 これに対し米倉都議は「対策は後手後手だ」と批判。都民生活や医療、保健所、介護施設、学校、保育園などの現場の実態は極めて深刻で、重症者や死亡者が急増していると指摘。都の一日当たり13万件の検査能力に対して実際の検査数が6万件をピークに減少していること、3回目のワクチン接種も遅れていることをあげ、「コロナ危機が始まって以来、最も深刻な事態という認識で対策を講じる必要がある。検査能力を十分活用できていない原因を明らかにし、必要な人が迅速な検査を受けられるようにすべきだ」と提言。佐藤智秀・都健康危機管理担当局長は「必要な検査を受けられる体制を確保している」と、実態から目をそらす答弁をしました。
 米倉都議はまた、国が検査への診療報酬を大幅に引き下げ、検査をするほど赤字になるとの声が上がるもとで、PCR検査1件当たり5000円を補助する海老名市(神奈川県)のような都としての検査補助が必要だと主張。学校や保育園での子どもたちへの定期検査、高齢者施設での週1回のPCR検査を週二回に増やすことなどを提案しました。
 都が打ち出した陽性者の「自分で健康観察」という方針について、「放置と言わざるを得ない」と批判。保健所やフォローアップセンター、食料配布などの支援体制強化を要求。市町村長から保健所増設を求める意見が相次いでいることをあげ、「保健所増設を決断すべきだ」と求めました。

時代錯誤の神宮外苑再開発
 東京都は新年度予算案で国際競争力を口実にした臨海部、築地市場跡地、有楽町周辺、渋谷・青山地区などの大規模開発を4割も増やしました。米倉都議は「大型開発を推進するのではなく、東京五輪が終わった今、都民福祉の向上など地に足が着いた施策を大事にする財政運営に転換すべきだ」と主張。中でも大問題となっている神宮外苑の再開発問題について、「時代錯誤だ」として中止を強く求めました。
 この計画は都市計画公園の面積を3・4㌶も削減し、ホテルなど民間の超高層ビルなどを建設するもの。樹齢100年を含む1000本以上の樹木を伐採・移植する計画で、有名なイチョウ並木の一部も伐採し、巨大なホテル付き新球場も建設する予定です。さらにスポーツ拠点整備の再開発だといいながら、都民に親しまれている軟式野球場やフットサルコートは廃止します。
 2月9日の東京都都市計画審議会で計画は承認されたものの、市民の手による計画見直しを求めるネット署名が急速に広がり、国内外の著名人が批判の声を上げています。世界遺産の保護・保存に取り組む日本イコモス国内委員会は、計画見直しを求める都知事と都議会議長あての提言を発表しています。
 米倉都議はこうした事実を指摘した上で、再開発の前後で温室効果ガスの二酸化炭素の排出量の変化を質問。上野雄一技監は、現在の再開発地区の二酸化炭素の排出量は報告義務がないために、「全体の実績値が把握できないために算出できない」とする一方、開発後の二酸化炭素の排出量については、年間4万7000㌧(環境影響評価書案)になると答弁。林野庁試算では、この量の二酸化炭素を吸収するには東京ドーム(4・675㌶)約1136個分もの杉林(樹齢40年)が必要になります。

気候変動危機 本気度示せ
代表質問で米倉都議

神宮外苑再開発をめぐって米倉都議は「都市計画決定の権限は小池知事にある。SDGs(持続可能な開発目標)の理念に反し、都心に残された貴重な自然や景観を破壊し、百年の歴史と文化的価値を踏みにじる時代錯誤の再開発は中止すべきだ」と迫りました。小池知事は日本イコモスの提言は知っているとしたものの、「スポーツの拠点としてさらに発展させていく」とのべ、開発ありきの方針を変えない考えを表明しました。
 また米倉都議は、陥没・空洞事故を起こして工事が止まっている外環道建設のトンネル掘採工事を国と事業者が再開を強行しようとしている問題について、「都民の命と暮らしを守る立ち場から、工事の再開中止を国と事業者に申し入れるべきだ」と提言しました。
 中島高志建設局長は「外環事業の必要性は変わらないと認識しており、(事業者に)引き続き適切な対応を求めていく」と、開発優先の姿勢を示しました。


 気候危機対策の都の新年度予算案は、前年度の3倍になりました。米倉都議は小池知事が施政方針で「国際的な脱炭素化の潮流をリード」すると表明したことに関連して、国際社会の脱炭素の最大の焦点は石炭火力発電の廃止だと指摘。
 東京電力の大株主である都の責任者として「東電に石炭火力発電からの撤退を強く働きかけることが重要だ」とのべ、都の姿勢をただしました。
 栗岡祥一環境局長は「全国の電源構成などのエネルギー政策のあり方は、国レベルの議論、検討がなされるべき」とのべ、都としての責任を果たす考えはないことを示しました。
 米倉都議は気候危機に取り組む「フライデー・フォー・フューチャー」の若者たちが求める、市民参加で気候危機対策を話し合い、計画や施策に反映していく「気候市民会議」の設置を提案しました。