保育園給食費 31区市町村で新たな負担

2019年9月9日

保育料無償化なのに
 安倍政権が10月からの「保育の無償化」で、給食の食材料費を無償化の対象外としたことから、これまで負担のなかった保育園の給食費の保護者負担が、都内53区市町村中(島部を除く)、31区市町村で、新たに発生する見込みであることが東京民報の調べで分かりました。一方、21区市町村では食材料費を公費で負担し、これまで通り保護者負担はありません(8月29日現在、新宿区を除く)。9月議会で要綱や条例改正案の審議、議決する自治体も多く、議会の焦点の一つになるとみられます。   (長沢宏幸)

 これまで保育園の食材料費は、3~5歳児の場合、副食費(おかず代)は国が決める保育費用(公費と保育料で賄う)に含まれていました。国が決める保育費用に含まれない主食費については、東京都の場合、全ての区市町村で自治体が負担し、事実上、保護者が給食費を払うことはありませんでした。給食が保育における食育として重視され、保育の一環として位置づけられてきたからです。
 ところが今回、内閣府が示した方針では、保育料の無償化の対象が住民税非課税世帯と限られる3才未満児(都は独自に対象拡大)の食材料費については、引き続き保育費用に含むとする一方、3~5歳児は実費徴収にしたのです(生活保護、ひとり親世帯の一部、年収360万円未満などの世帯や第3子以降の子は免除)。内閣府は食材料費を、主食費3000円、副食費4500円と見込んでいます。
 副食費を徴収するとした都内自治体のほとんどが、国に準じて4500円を徴収(私立は同額を目安に各園が徴収など)。ただ、立川市では市が3500円を補助し、1000円に軽減。世田谷区では、免除する収入基準を国より引き上げ、760万円未満、中央区は約494万円としました。

主食費も負担 保育料より高く
 主食費については、都内自治体(島しょを除く)の85%の自治体が補助を継続するとした一方、稲城市では国に準じるとして3000円を徴収、副食費と合わせると7500円となり、都内最高額となります。三鷹、町田、多摩、西東京の各市は主食1500円を徴収し、副食費との合計で6000円、清瀬市は700円で合計5200円を徴収します。
 そのため保育料が無償化になったために、これまで保護者が収入によって負担してきた保育料より、定額となる給食費が高くなるという「逆転現象」が起こる可能性があります。稲城、多摩両市は、それを防ぐために保育料より高くなる世帯に限り補助などを実施する方針です。

徴収なしは区74% 新たな多摩格差
 給食費の実費徴収を行なわない自治体は、17区2市1町1村あります。
 理由として、「もともと徴収してこなかったので」「保育の無償化の趣旨にあっている」「無償化制度の円滑な導入のため」「現場の事務負担が増える」などをあげています。中には「給食費を取られる仕組みになったことを保護者は知らないのではないか。問い合わせがほとんどない」と、実費徴収に不安を語る担当者もいました。
 また当初、実費徴収の方針だったのが「事務作業が増えて対応できない」との現場の声を受けて、補助することにした自治体もありました。
 実費徴収を行わない自治体を区市町村別に見ると、区部では74%にあたる17区。一方、多摩地域では2市1町1村で、わずか13%でした。保育サービスをめぐる区部と多摩地域間の新たな行政サービス格差、いわゆる「多摩格差」の要因となるものです。

経営者団体も都に支援求める
 給食費の実費徴収をめぐっては、「低所得者ほど負担が重くなる」「保育無償化の趣旨に反する」「福祉の後退ではないか」「実費負担はあまりにも突然。保護者の理解は得られない」など、全国民間保育園経営研究懇談会や東京社会福祉協議会(保育部会)、各地の保育問題協議会など、幅広い保育関係の団体から疑問や反対、引き続く保護者負担金補助などの要望があがっています。
 また、自治体間で格差が生まれることから、特別区長会は2020年度予算要望で都に対し、「幼児教育・保育の無償化に伴う対象施設、食材費等について、利用者の公平性を確保するための施策等を実施すること」、東京都市長会も「都において一律の制度を設けるべく、予算措置を講じること」を要望しています。

共産党議員団 給食費も無償に
 共産党都議団は給食費の徴収が、「新たな多摩格差となる恐れがある」と指摘。「都内のどの自治体に居住していても、給食食材料費の実費負担をしなくてもすむように、都として保育施設の3歳以上の副食食材料費への補助や、国に対して給食の食材料費も無償化の対象にするよう求めることを、小池百合子知事に要請してきました。

小金井 独自の補助制度
 小金井市では「子育て世代の負担軽減を図るため保護者の負担がないよう、市独自の補助制度を創設」します。9月議会には、そのための補正予算案、約2700万円を提出します。
 共産党市議団は市に対し、食材料費を徴収しないよう市に繰り返し求めてきました。市議会には昨年12月、小金井保育問題協議会から「給食食材費の実費徴収を行わないでください」などとする意見書提出を国に求める陳情が提出され、全会一致で採択しています。
 こうした中、他市の状況を見ながら判断するとしていた市は、新たな補助制度の創設に踏み切りました。