五輪後の国立競技場 定まらぬ利用方法

年間維持費約24億円/採算見通し暗く

東京五輪のメインスタジアムとなる国立競技場(写真提供:しんぶん赤旗)

東京五輪のメインスタジアムとなる国立競技場(東京都新宿区)は、大会後の利用方法が定まっていません。政府は球技専用に改修する方針を一度は決めたものの、その後陸上トラックを残す方向に転換しました。年間の維持管理費は約24億円と試算され、採算を確保できるかが大きな課題となります。

政府は2017年11月、五輪後にトラックを撤去して観客席を増設し、サッカーのワールドカップ(W杯)開催に対応できる約8万人規模に拡大する計画を発表しました。サッカーやラグビーの他、コンサートや市民スポーツ大会などで積極的に活用するとしました
方針が変わったのは昨年10月でした。世界陸連のコー会長が来日した際、25年世界選手権の開催を提案し、萩生田光一文部科学相が球技専用の方針を見直す可能性に言及しました。
ただ、五輪で陸上のできる競技場を残す機運が高まることが条件でした。無観客開催で大会の盛り上がりが当初ほど期待できず、今後の方向性にも影響が及ぶ可能性があります。
警備上の理由から五輪後まで詳細な競技場の図面を開示できず、運営権を民間事業者に売却する「コンセッション方式」の導入、事業者の選定は先送りされてきました。建設した大成建設など共同企業体の試算では、今後50年の修繕費を含めた維持管理費は総額約1200億円。収容人員に見合う大規模イベントは限られ、新型コロナウイルスの影響で当面は観客数も制限されるでしょう。収益性の見通しは暗いままです。
東京・明治神宮外苑地区は、秩父宮ラグビー場と神宮球場の再整備も予定されています。五輪のために聖徳記念絵画館前に仮設したサブトラックは大会後に撤去されるため、陸上の国際大会を開催するには新たに確保が必要になります。国立競技場が「聖地」と呼ばれるめどは立っていません。

(「しんぶん赤旗」2021年7月21日付より)