訴えの握りつぶし明らかに 東京国税局 パワハラ分限免職で審理

 東京国税局に勤務していた原口朋弥さんは2021年6月、人事評価が最低のDが続いたことをもって分限処分(ことば)で国家公務員の職を解かれました。「具体的な問題点の指摘や指導もなく、密室で怒鳴られ続けるなどのパワハラを受けた。パワハラによるうつ病発症時も、ADHD(注意欠陥多動障害)の診断以降も配慮がなされなかった」として原口さんは、人事院に処分の取り消しを求めて審査請求をしており、13、14の両日、同院で公開口頭審理が行われました。
 これまで原口さんの代理人弁護士らが人事院を通じて、東京国税局に評価を問い合わせた際には黒塗りの資料が出されており、「どの点が職務遂行上において問題なのか」が具体的に明らかにされていません。今回の審理では東京国税局から証人が5人、申立人の原口さん側から2人が尋問を受けました。
 初日の尋問では主に東京国税局の証人が人事院の公平委員会の人事調整官立会いの下、国税局側、申立側からの質問に宣誓後に答えました。
 原口さんに分限免職の辞令を交付し、締め出すように?町税務署を追い立てた当時の副署長はオンラインで参加。国税局側の尋問に対して「原口さんと話す時はADHDと感じない」とし、▽母がうつ病のために本を読んでいて知識があった▽同署でのパワハラの訴えの時は迅速に事情聴取を行った―などの他、原口さんの聞き間違えや記入ミスなどを事細かに列挙しました。
 原口さんの代理人は「?町署では原口さんが他部門への配置転換を希望していたのに、面談シートへの記入とそれに関わる議論がなかった」ことを指摘。さらに元副署長が統括官による「バカ」という発言について「統括官に確認して『よくないけれど指導の一環』と言うので『原口さんがやめて欲しいと言っている』と伝えて終わった」と軽視するような発言をしたのに対し、代理人は「人権否定ではないか」と述べました。
 元副署長は「一つだけとらえてパワハラではなく、いろいろ総合的にとらえてパワハラと認定する」と回答。厚生労働省のパワーハラスメントの定義(2018年10月)には「バカ、ふざけるな、役立たず」という発言がパワハラに値するとされているにも関わらず、異なる認識が露呈し、各署に配置されているというパワハラ相談員は機能していないことがはっきりしました。さらに原口さんが最初の配属先の練馬東税務署配属時にパワハラを受けていた記録に目を通していないことや、無遅刻無欠勤であったことも明らかになりました。

障害がある人の働く場ないのか
 続く東京国税局の証人らは「周りに配慮ができない」「税務調査さえできない者はどの仕事もできない」「事細かな指示を与えないと仕事ができない」「ホチキスの位置がずれる」などと次々に証言。休憩中の傍聴席からは「誹謗中傷だ」という声がため息とともに漏れました。
 公平委員会から、国税局が提出した資料にある業務量から「ADHDへの配慮が判断できない」「対外的な仕事もあるのでは」と尋ねられても、まともに答えずに「(原口さんは)評価に値しない」との内容に終始しました。
 同席した労働組合の全国税の役員は「国税局には障害がある人が働く場がないということか。税務署の仕事をベースに考えれば情報処理などもある。なぜ仕事が進まないのか組織的に分析したか」などと質問しましたが、きちんとした回答はありませんでした。
 審理について弁護団は「なぜ人事評価がDになったのかが不明なままだ。練馬東署で明らかなパワハラがあり、うつ病を発症して休み復職したらC評価。またパワハラを受けても引き離し措置が取られてない」と批判。「異動の時にD評価がついたのでパワハラを訴えた報復ともとれる。ここからあら捜しが始まったように思える。麹町署でパワハラを訴えたのに対し、1時間も叱責したのは異常だし、訴えが握りつぶされていることが今日の尋問で明らかになった」と語りました。
 原口さんは「最後までたたかう」と話しています。