東京五輪 来年7月23日の開会へ コロナ拡大、初の延期

 今年夏の開催からの延期が決まっていた東京五輪は、来年7月23日の開会となることが、3月30日に決まりました。大会組織委員会と東京都、国が国際オリンピック委員会(IOC)と合意しました。「目標が明確になった」との選手の声の一方、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に収束も見えない中で、新たな日程を決めたことには拙速との批判も出ています。関係者は「五輪の精神に立ち返って、大会の準備、検討を」と求めています。(荒金哲)

 国際オリンピック委員会(IOC)は3月22日、臨時理事会で、延期を含めた検討で「4週間以内」に結論を出すと表明。さらに2日後の24日、バッハIOC会長と安倍晋三首相の電話会談で、日本側が1年程度の延期を提案。その後の電話会議によるIOC臨時理事会で承認しました。
 バッハ会長は会見で「五輪にかかわるすべての人々の健康を守るためだ。五輪にとって前例のない試練」と語っていました。
 30日には組織委員会や都など日本側が、バッハ会長との電話協議で、開幕を来年7月23日とする新日程を提案して合意しました。

 新型コロナウイルスの広がりで世界保健機関がパンデミック(世界的大流行)を宣言するなか、各国の選手、オリンピック委員会(NOC)から延期や中止を求める声が広がっていました。IOCと日本側が、24日に「1年程度の延期」を決めたことには、各国NOCなどから、歓迎の声が寄せられていました。
 他方、感染拡大の収束が見えず、日本についても安倍首相が28日の会見で「いつ急拡大してもおかしくない。長期戦を覚悟する必要がある」と述べているもとで、新日程を決めたことには、「拙速」との批判も出ています。米紙USAトゥデー(電子版)は30日、同紙コラムニストの「世界中が絶望と死、病に包まれた中での発表だった」「暗いトンネルの先に光が見えるまで待てなかったのか。少なくとも数週間、待てなかったのか」と批判する記事を掲載しました。

 今後も、コロナウイルス感染拡大の収束が見通せるのか、増大する経費をどうするのか、競技会場確保や大会日程の調整、猛暑対策、選手の選考をどうするのかなど課題は山積みです。
 日本共産党都議団は都議会第1回定例会終了(27日)後の幹事長談話で、「アスリートをはじめ、直接、間接の関係者に与える影響、被害を最小限にすることが必要」と指摘。東京だけが延期に伴う追加費用を負担させられるという報道もあるとして、「懸案事項と追加費用について、公開しての議論を行い、都民が納得できる結論を得ることが必要」と求めました。

あり方、考える機会に
新日本スポーツ連盟会長 和食昭夫さん

 2020年五輪を都民や国民が望む大会にするよう、IOCや東京五輪組織委員会への働きかけなどを行ってきた、「オリンピック・パラリンピックを考える都民の会」共同代表で、新日本スポーツ連盟会長の和食昭夫さんに五輪延期をどう見るか、聞きました。



 感染拡大の現状から言えば、延期は妥当な選択で、選手や各国のNOCの声がIOCを動かしたものでした。しかし、感染収束が見通せない中で、1年後の日程を決めたことは、これでよかったのかと率直に思います。開始時期の判断にあたって、IOCや組織委員会は、必要な情報と討論の経過を公開し、あらゆる可能性を選手たちと共有するべきでした。
 延期にともなう課題は山積です。大変な状況だからこそ、人類にとって五輪はどうあるべきか、オリンピック運動の今後のあり方をしっかりと考える機会にしてほしいと思います。

 この間、IOCは平和やジェンダーの平等、人権、スポーツの権利などの人類的な課題に積極的に取り組むように変わってきました。その一方で、お金の面から見れば、オリンピックは、アメリカの巨大テレビ局のマネーに依存しています。このため、今回も夏開催にしばられています。

 今回の延期に伴って必要になる議論を、選手や関係者と情報を共有して進めることを通じて、オリンピックは今後、どうあるべきか、大会規模、開催の仕方などを考え直す機会にすべきです。
 開催延期による追加費用の問題も重要です。これまで経費の問題では、東京都と組織委員会は、情報公開に消極的でした。しかし、コロナ対策などで経済や生活が厳しくなっているなか、都民や国民の理解と共感を得るには、いまこそ、必要な経費と負担のあり方について、積極的に情報を公開し、さまざまな知恵を集める姿勢が大切です。