「しんぶん赤旗」が豊洲新市場問題を特集

本日(9月14日)付「しんぶん赤旗」日刊紙3面で、豊洲新市場問題が特集されています。

akahata20160914

都民欺く「豊洲新市場」

〝盛り土せず〟共産党都議団の調査で判明

豊洲新市場(江東区)の建物の下は盛り土するので安全という東京都の説明はウソだったー。築地市場(中央区)の移転予定地である豊洲新市場で、土壌汚染対策として行われているはずのすべての建物下の盛り土が行われず、地下空間が存在することが日本共産党都議団の調査で明らかとなり、衝撃が走っています。「食の安全・安心」という豊洲移転の前提を揺るがす重大問題であり、都民をあざむくものです。市場関係者や都民から「移転は中止を」と怒りの声が上がっています。
(細川豊史、岡部裕三、東京都・川井亮)


地下の空洞写真が衝撃

豊洲新市場の施設を調査する日本共産党都議団=7日(「しんぶん赤旗」提供)
豊洲新市場の施設を調査する日本共産
党都議団=7日(「しんぶん赤旗」
提供)

2001年に当時の石原慎太郎知事が築地市場の移転予定地として決定した豊洲新市場は東京ガス工場の跡地で、土壌から高濃度の発がん性物質のベンゼンや猛毒のシアン化合物、ヒ素などが検出されており、市場関係者や都民から「食品を扱う新市場にふさわしくない」と移転反対の声が上がっていました。
都は土壌を掘削し、その上に厚さ4.5メートルの盛り土をする汚染土壌対策を行ったので、安全を確保できると説明してきました。
ところが、この説明がウソだったことが明らかになりました。党都議団は8月25日、都の資料から、施設の地下が盛り土されず、空間になっていることをつかみました。今月7日には実際に水産卸売場棟の地下を調査し、空洞となっていて水がたまっている状況を確認。食品を扱うすべての建物下で盛り土がされていないことを12日の記者会見で明らかにしました。

盛り土が行われず水が溜まった豊洲新市場・水産卸売場棟の地下=7日、東京都江東区(日本共産党都議団都議団撮影)
盛り土が行われず水が溜まった豊洲新市場・水産
卸売場棟の地下=7日、東京都江東区(日本共産
党都議団都議団撮影)

都議団は、盛り土問題を含めて新市場をめぐる重大問題について徹底検証し、移転中止を含めた解決するよう求める提言を12日に発表し、小池百合子知事に申し入れました。尾崎あや子都議は12日の記者会見で「都民と都議会をあざむく重大問題が明らかになった。徹底究明を求める」と強調しました。
小池知事は緊急会見(10日)と、都幹部を集めた緊急会議(12日)を開き、盛り土問題の検証を行うとしました。新聞各紙、テレビ局は党都議団の資料をもとにトップ扱いで報道。都議団に取材が殺到しました。
盛り土を行わず、地下空間とする案が最初に出てきたのが、2008年の「第6回豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」の場だったことも、都議団の調べでわかりました。この地下空間案がその後どのような経緯で採用されたのか、早急な事実解明と公表を求めています。
都議団の提言は、技術会議の経緯を含め、なぜ、いつ、誰が盛り土を行わないことを決め、盛り土をしたという虚偽の報告をしてきたのか、検証して公表すべきだとしています。
盛り土が行われず、虚偽の報告がされていたことは、食の安全・安心の根幹を揺るがす問題です。都議団の提言は、地下空間の水と大気の汚染物質の調査、地下水管理システムの運用実態の検証、これまでの土壌汚染対策の検証を、第三者の専門家を交えて行うよう求めています。

膨らむ工事費・談合疑惑

共産党都議団は提言で、土壌汚染対策工事、建設工事費が高騰した経緯、談合疑惑などを徹底検証し公表するよう求めました。
新市場整備費は、当初予定の4316億円から、5884億円に膨らむ見通しです。なかでも、土壌汚染対策工事費は586億円から858億円、施設建設費は990億円から2747億円に高騰し、市場会計を圧迫しています。
土壌汚染対策工事をめぐっては事前に談合疑惑が指摘されていたにもかかわらず、都は入札予定者から形だけの事情聴取をしただけで、問題なしとして入札を強行しました。
都は施設建設工事の入札を13年11月に行いましたが、大手ゼネコン側は「採算がとれない」との理由で入札を辞退。14年2月の再入札では予定価格を1.8倍に増やし、鹿島建設、清水建設、大成建設の3社が筆頭となる共同企業体(JV)が計1034億円で落札。落札率(予定価格に占める落札額の割合)は平均99.87%と異常な高率でした。契約後に「設計変更」を行い、建設費はさらに膨れあがりました。

施設欠陥検証も

新市場をめぐっては、施設の床の耐荷重不足で荷の重量が制約を受けざるをえない事態が生まれています。また、売り場が狭いなど、使い勝手の悪さが事故の危険や能率の低下などにつながると市場関係者から指摘されています。
提言は、このような事態に至った経過や、都の対応に問題がなかったかどうかを検証して公表することが求められるとしています。


日本環境学会元会長

畑 明郎さん

第三者交えた検証必要

畑 明郎さん(「しんぶん赤旗」提供)
畑 明郎さん
(「しんぶん赤旗」提供)

都の専門家会議でも、汚染土壌を掘削して厚さ4.5メートルの盛り土を行うと提言していたのに、盛り土していなかったことは、約束違反であり、大変けしからんことです。
都が盛り土を行わなかったのは、都が新しい土を入れ替えると60万立方メートルもの土が必要になり、数十億円かかるので、工事を安上がりにするためだったのではないか。都は「安全・安心」と言うが、専門家会議の提言を技術会議が骨抜きにし、対策工事の完了確認をしてコストダウンを最優先してきたのは問題です。
盛り土の手抜きを告発し、徹底検証を求めた共産党都議団の提言は、よくできたものだと思います。都知事は対策を検証する方針を示しましたが、土壌汚染対策は都だけに任せてはいけない。共産党が提言するように、都と立場の異なる第三者の専門家を入れてクロスチェックすべきです。

 

関係者・都民から怒りの声

都の隠ぺい体質を批判

日本共産党都議団が12日公表した土壌汚染対策工事の欠陥問題に、市場関係者から批判があがっています。
水産仲卸業者の男性(48)は「都が『安全・安心』どころか、最低限の工事すらやらずに、全く秘密で進める都の隠ぺい体質は大問題だ。施設内の大気中でベンゼンが検出された問題もそうだが、市場で働く業者は犠牲になってもいいというのか」と憤ります。
豊洲移転反対を訴えるパレードや集会に取り組んできた全労連・東京中央市場労働組合の中沢誠委員長は「市場の人間はみんな怒っている。やると言ってきた盛り土をやらずに、都は情報をずっと隠してきた。移転計画自体が失敗だったことは明らかだ。都は一日も早く移転を中止し、築地市場を存続する決断をすべき」と話します。
移転を推進してきた業者団体、築地市場協会の伊藤裕康会長は、13日に開かれた都の卸売市場審議会の後、記者団に「工事変更に対して何も説明がなかった。都の職員は安心や安全への感覚がまるで鈍い」と批判しました。

(「しんぶん赤旗」2016年9月14日付より)