都内をはじめ首都圏各地で住宅地に隣接する巨大データセンター(DC)が計画され(表)、生活環境が壊されることへの不安と批判が広がる中で、地域共生型のDCのあり方を考えようという公開市民フォーラムが3日、豊島区の立教大学キャンパスで開かれました。DC建設に反対する運動に取り組む各地の住民団体、専門家らが集まりました。

「実態に即す法令改正を」
主催した市民団体、「都市型データセンターあり方検討会」座長の寺西俊一さん(一橋大学名誉教授)は開会あいさつで「世界的なAI開発競争と、DCの建設ブームが起き、アメリカをはじめ、世界各地では、住民の反対で建設計画がとん挫する事態が相次いでいる。そのなかで、ビッグテックと呼ばれる巨大資本が日本に資金を投入し、それに乗った不動産業者らが各地にDCをつくろうとしている」と指摘。「稼働計画の8割が首都圏に集中している。住宅地のすぐ近くに巨大なDCがつくられようとされ、住民の生活に大きな影響が出る。そのことを背景に、2025年9月に、私たちあり方検討会が発足した。1周年を機に開く今日のフォーラムが、各地の状況を交流する場となるとともに、地域共生型のDC建設への転換のきっかけになってほしい」と呼びかけました。
向き合わぬ事業者
前半は、首都圏を中心に日本各地のDC建設の問題に取り組む住民団体からの報告が行われ、都内からは昭島、日野、小平、江東区塩浜、同区千石から登壇しました。
このうち江東区塩浜は、近隣のマンションの住宅管理組合の理事長と対策委員長が発言。「2022年に計画を知り、事業者に問い合わせても、『何も決まっていない』という答えだった。それが2年後に突然、計画が掲示され、『もうすべて決まっているので、変えられない』となった。区の条例に基づき、調停の場を持っても、強制力がないため、事業者は計画の変更に応じず、時間だけが過ぎていく」と焦燥感をにじませました。
また、昭島市の住民団体は、「事業者は私たちの運動を受けて、計画を変更したと言っているが、ほとんど変わっていない。調停団を立ち上げたが、まともに向き合おうとしなかった。いよいよ、建設差し止めの訴訟に踏み切る」と報告しました。
ねらわれる日本
後半のパネル討論では、エネルギーや気候変動、環境アセスなど、さまざまな分野の専門家らがDCのあり方について語りあいました。
あり方検討会の伊瀬洋昭氏が基調報告を行い、世界でDC計画のモラトリアム(一時停止)が広がる中で、日本が建設予定地としてねらわれる理由を、①円安で土地も電気も水も人件費も安く、停電も極めて少ない②治安が良く社会も安定し、反対運動はしつこいが過激ではない③政府は外資受け入れを歓迎し、規制が緩い④自治体は固定資産税の税収に淡い期待を寄せ、反対しない―などに整理。また、DCが「新しい公害」と言われる背景には、▽膨大なエネルギー量と廃熱▽騒音、低周波音、大規模発電機稼働▽大量の危険物の貯蔵▽情報非公開と不明確な責任体制▽法令整備の遅れ―などがあると指摘しました。
また、「最大の問題」として、建築基準法の用途規制にDCが位置づけられていないため、巨大な建物で騒音や火災のリスクも高いのに、「工場」や「倉庫」としてではなく、「事務所」や「その他」の分類で建築確認申請が可能なことをあげ、「実態に即した法令整備」の必要性を強調。「紛争化している都市型大規模DCは過渡期の状態にあり、地域住民の声が正しく反映され、事業者に将来にわたり責任を持たせる仕組みが必要」と訴えました。
利益独占のAI
アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子氏は、AI技術を支えるデータ処理装置や検索システムは、一つの巨大企業がそれぞれ8〜9割のシェアを持つなど、圧倒的な寡占市場になっていることを紹介。「ごく一部の寡占企業が巨大な利益を独占している。AI技術の非民主的で利益優先のあり方に、草の根からの規制をつくっていく必要がある」と呼びかけました。
日本建築学会元地球環境委員長の糸永浩司氏は、脱炭素社会の実現の視点から、DCが莫大なCO2を排出することが「脱炭素社会の構築に大きな足かせとなっている」と批判。再生可能エネルギーの発電量から、地域の生活や産業に必要な電力量を差し引き、その残りの範囲で可能なDCを建設するといった、根本的な仕組みの転換が必要だと語りました。
横浜商科大学学長で環境アセスメントが専門の原科幸彦氏は、日本ではごく一部の巨大な開発事業しかアセスの対象にならない問題点がある一方で、東京五輪招致の際の新国立競技場の建設をめぐっては、当初、示された巨大な競技場のイメージ図が、反対運動の広がりと、計画見直しのきっかけになったと紹介。「簡単な図面1枚でも対話は可能」だとして、事業者が市民への情報公開と対話という「簡易的なアセスメント」を行う重要性を強調しました。
その後のパネリストによる討論では、日本の建築確認が民間の指定確認検査機関にゆだねられている問題や、建築基準法の用途規制で膨大な可燃物を保管するDCを「特殊建築物」などとして扱うよう、法令改正前でも国交省に技術的助言を出させる可能性、ビックテックによる「AI植民地化」が進む日本の現状など、さまざまな角度からDCをめぐる課題を議論しました。

