「しんぶん赤旗」クローズアップに横田基地のパラシュート降下訓練中の事故に関する佐藤つよし記者の記事が掲載されました。同記事を紹介します。
米軍訓練「いつ大事故に」
在日米軍横田基地(福生市など東京・多摩地域5市1町)でパラシュート降下訓練中の米兵が基地外の市街地に降下し、パラシュートの一部を落下させる事故が発生しました。「一歩間違えれば、人命にかかわる重大事故になりかねない」と住民の不安が広がっています。米軍は「部隊の即応性維持のために不可欠」と、事故2日後には訓練を再開。危険な降下訓練が繰り返される背景に、米軍による横田基地のインド太平洋地域の作戦拠点化と、部隊の即応性強化があります。(佐藤つよし)
相次ぐパラシュート落下 児童館敷地にも
事故が発生したのは11月18日夕。米兵は住宅の上に降下し建物の一部を破損。主パラシュートを開くための「誘導傘」が歩道の上に落下しました。いずれも基地北西側の羽村市のJR青梅線羽村駅に近い市街地です。訓練を再開した20日にも、福生市の児童館敷地にパラシュートを落下させ、市への連絡もないまま米軍が回収していたことも明らかになりました。
米で死亡事故も
米軍は過去にも横田基地周辺で、パラシュートの一部を落下させる事故も起こしています。2018年4月10日に羽村市の中学校のテニスコートに「誘導傘」が落下。19年1月8日に主パラシュートが作動せず切り離し基地内に落下、翌9日にも同様の事故が発生しパラシュートを入れる袋が基地外に落下しました。使用したパラシュートは長方形の特殊作戦部隊などが使用するもの。高高度から降下を開始し、地表近くでパラシュートを開き目標地点に着地する、秘密裏に相手国の支配地域深く侵入し攻撃するための訓練です。
降下訓練は米特殊部隊でも死亡事故が多発する危険な訓練です。12~22会計年度の全ての死亡事故48件うち16件(24年11月21日、米政府監査院報告)に及んでいます。
陸自の訓練も増
横田基地で降下訓練が最初に行われたのは12年1月10日。陸軍兵士100人が一度に降下しました。防衛省北関東防衛局の周辺自治体への情報提供では14年度に12回に及ぶなど、毎年頻繁に行われています。22年度以降、米軍による横田基地での降下訓練の回数は減少していますが、代わって19年度から横田基地配備の米空軍C130J輸送機を使った陸上自衛隊第1空挺団(習志野駐屯地、千葉県船橋市)の訓練が増えています。陸自の訓練は、東富士演習場(静岡県)や習志野演習場(千葉県)などで23年度から毎年5~6回実施されています(グラフ)。

米空軍輸送機が陸自まで使って頻繁に降下訓練を行うのは、パイロットや機材の操作員の即応性を高めるために不可欠だからです。米空軍のC130J輸送機の訓練についての訓令(20年2月10日付)では、パラシュート降下や物資投下に関わる作業について45日以内の間隔で技量の資格認定を受けなければなりません。いつでも出撃できるための兵士の連度維持が、市街上空での危険な訓練の目的です。
羽村平和委員会の高橋美枝子さん(83)は「落下事故があったのはJR羽村駅からほど近い、区画整理された真新しい住宅街でした。『誘導傘』の落下地点はよほど危険な場所だったのか番地など具体的な場所は不明のままです。落下地点周辺は電車が走り自動車の通行量も多く、一歩間違えれば大惨事です。羽村市で度重なるパラシュート事故は許せません。危険なパラシュート降下訓練は禁止を」と話しています。
(「しんぶん赤旗」2025年12月11日付より)

