外苑再開発
多くの都民や専門家が反対・見直しを求める神宮外苑再開発(港区・新宿区)のうち、事業者の一つである日本スポーツ振興センター(JSC)が所有する秩父宮ラグビー場の建て替え手続きが文部科学相の認可を受けてしまいました。現在、新ラグビー場の計画変更が都に申請されており、小池百合子知事がどのような判断をするか緊迫した状況が続きます。この後には再開発最後の手続きである「権利変換手続き」(ことば)しかありません。この問題を都議会で追及してきた日本共産党の原田あきら都議に、現局面と今後の取り組みについて聞きました。
原田あきら都議に聞く

―神宮外苑再開発事業の計画変更案はどのような内容ですか
計画変更案は樹木の伐採本数や建物の形状の変更など新秩父宮ラグビー場と、新神宮球場の計画が動いたものです。新神宮球場については、市民運動の成果でもあるのですが、これまで事業者側が問題ないと主張してきたイチョウ並木への影響を事実上認め、これまでの計画より10メートルのセットバック(後退)をさせるという変更が含まれています。
これは相当規模の変更であり、アセスのやり直しや住民説明会の開催が必要だと考えます。
―この再開発に対する市民運動はどのように発展してきましたか
2021年12月に約300人が集まった住民説明会が一つのきっかとなり、そこから多くの市民や様々な分野の専門家、関係者が声を上げてきました。
多くの異なる視点から意見が出され、音楽家の坂本龍一さんのメッセージや国際イコモス(ユネスコの世界遺産委員会の諮問機関)の計画撤回を求めるヘリテージ・アラート(遺産危機警告)、神宮外苑の自然破壊を憂うサザンオールスターズの新曲なども影響して、世論が形成されてきました。前代未聞の計画に対して、かつてない広がりをもった住民運動が対抗してきたと言えます。
結託し
ルール歪め推進
―改めて、この再開発計画の問題点を教えてください
そもそもこの計画は一体どういう計画なのかということを、改めて注目してもらいたと思っています。事業者は明治神宮の「内苑」を守るためだとか、「公共性」とか言っていますが、都市計画公園の指定を外し、開発を制限する風致地区や高さ制限も緩和し、さらに都市計画公園の容積を区域外の超高層ビルに移転するという前代未聞の手法が使われています。公園を使って超高層ビルを建てるという、世界でもありえない再開発が行われようとしています。
都議会でも追及してきましたが、この再開発計画は、そもそも公共の利益が欠如しており、背景には企業、政治家、行政の癒着があります。
共産党都議団が公開させてきた都の文書では、萩生田光一氏や森喜朗元首相など自民党の政治家と事業者の三井不動産が入り込むことによって、超高層ビル建設のためにスポーツの質も私たちの街も公園も壊される、よりひどい計画に変えられてきた経過がほぼ明らかになっています。
同時に肝心なところは白塗り(非公開)になっているので、明らかにさせることが重要です。企業と政治家と行政が結託してまちづくりのルールをねじ曲げた真相を隠し続けることは許されません。
変換不認可なら
計画は立ち往生

今回の事業計画の変更届が認可されないと権利変換はできません。建物の形状や大きさが変わると面積に関わるため、それが確定しないと権利変換はできないはずです。
再開発計画への都民の強い反対がある中、情報も明らかにしないまま、ラグビー場の工事だけを先行して始めるのは認められません。
―今後の取り組みについてどう考えていますか
超党派でつくる外苑議連としてすでに、小池百合子知事に権利変換計画を認可するなと申し入れました(9月2日)。都民のみなさんと力を合わせて、これから開かれる都議会定例会でも迫っていきます。情報公開を求めることも大事です。
また、文教地区建築条例の問題もあります。新球場にはホテルが併設され、ラグビー場はコンサートなど様々なイベントに利用されることになります。旅館や劇場、演芸場、遊技場などの施設建築や用途変更を禁止する文教地区の規定に違反する可能性があります。
この先も再開発工事が進むにつれて被害が明らかになるでしょうから、その都度世論を盛り上げていくことが重要です。都内では再開発が目白押しです。このたたかいは外苑の緑と歴史を守るだけでなく、東京のまちづくりの民主主義を守るたたかいになっています。
ことば
権利変換手続き
市街地再開発事業で土地や建築物の権利を地権者間で移転・変換すること。計画の前後で資産価値が等価交換されることが前提となります。JSCが秩父宮ラグビー場と明治神宮が所有する神宮球場の土地を交換して建て替えることから、JSCは権利変換計画の認可申請を都に提出し、都知事が認可するかどうかを判断します。公共性の高い施設であり、資産価値の評価が妥当かも問われますが情報はブラックボックスの中です。