市敗訴でも廃園を推進 小金井 市立保育園

 東京都小金井市が、市立保育園2園の廃園条例を「無効」とする判決が確定したにもかかわらず園児募集を再開せず、園の段階的縮小を進めている問題で、市は廃園を正当化する新たな条例案を、現在開かれている市議会に提出しています。保護者らは「廃園撤回」の声を上げ続けていますが、廃園推進派は、この週明けにも採決に進む構えです。(安川崇)

閉園へ新条例提出 保護者は「撤回を」

廃園の方針が示されている東京都小金井市の市立保育園(「しんぶん赤旗」提供)

 11日、小金井市議会の厚生文教委員会協議会。2園に子どもが在籍する保護者らが、次々に陳情を読み上げました。

 「段階的縮小で下の学年が入園しないため、年下・年上の子と関わったり思いやったりする機会を奪われている」「第2子、第3子を入園させられない」「きょうだいが違う園に通うことがどんなに大変か、市はわかってほしい」「廃園条例の前の状態に戻してほしい」

 幼い子を背負い、泣き声を上げそうになるのをゆすってあやしながら発言する姿や、声を詰まらせながら議員一人ひとりを見つめて訴える様子もありました。支援者らも含めて計37の陳情があり、午後9時頃まで続きました。

一人だけで在園

 老朽化などを理由に市が2園の廃止条例を提出したのは2022年。市議会が「継続審査」としたところ、前市長が「専決処分」で制定しました。これに基づき入所できなかった保護者の一人が市を提訴しました。東京地裁は24年2月、専決処分は「違法」で廃園条例は「無効」と判決。市は控訴せず、確定しました。

 しかし市はこの保護者の子だけを入園させ、その他の園児の募集を再開していません。結果、この保護者の子は現在まで、学年に一人だけで在園しています。

 保護者の弁護団によると、市は「廃園条例の効力は、裁判原告の保護者との関係においてのみ否定されたと主張。市保育科も取材に対し「条例は残っているとの認識だ」と説明します。「無効」とされた条例が、この保護者を除いては事実上、引き続き適用されている形です。

 弁護団の植木則和弁護士は「条例は全市民に等しく適用されるもの。市の説明は、極めておかしい」と批判します。

子の時間奪った

 子が学年に1人だけで在園しているこの保護者も11日、陳述しました。「大きな不安がある。同年代の子と関わり、社会性や協調性を学ぶ機会が十分得られない。発達面での不利益も懸念している」(代読)。

 第2子や第3子の入園を希望する保護者らは、市を相手取って新たな訴訟を提起し、東京地裁立川支部で引き続き争っています。

 そんな中、市は今の市議会に「2園を閉鎖する」として新たな条例案を提出。改正案ではなく、専決処分がされた現条例を廃止し、新たな廃園条例を制定するという手法に出ました。

 日本共産党の森戸洋子市議は「無効とする判決が確定した条例を改正しても、後から批判を受ける。いったん廃止して、なかったものにしたいんだろう」と話します。

 「本来は、専決処分前の条例に戻って園児募集を再開すべきだった。この間、入園できなかった多くの子どもたちがいる。このことは、新たな条例案が可決されても正当化できない」

 先の植木弁護士も語ります。「この間、子どもにとってどれだけ大切な時間が失われたか。条例を変えても取り戻せないということを、市は考えてほしい」

 11日の陳情後、廃園推進派の議員からは、新たな条例案の審議を速く進めるべきだという意見が出ました。これに対し森戸市議らが慎重な扱いを求め、いったん延会となりました。22日の同委員会で再開されます。

(「しんぶん赤旗」2025年9月22日付より)

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