英スピ 公正性と採算は矛盾 入試活用中止求め夏の都民集会

 改選後の初めての都議会定例会を前に、都立高校入試に英語スピーキングテスト(ESAT―J)結果の活用中止を求める「夏の市民大集会」が8月20日、都議会(新宿区)の会議室で開かれ、教育関係者や保護者らは新都議とともに公正・公平性に欠ける同テストの中止に向けて決意を固めました。集会にはオンラインを含めて約100人が参加しました。

 英スピテスト(ことば)は公立中学校の全学年の生徒(22年度は中3のみ)を対象に行われ、中学3年生のテスト(YEAR3)の結果は都立高校入試の合否判定に活用されます。多くの問題が指摘されながら24年度も3回目のテストを実施。約7万人が受験しましたが、機器の不具合や試験監督の運営の不手際などが相次ぎ、再試験対象となった生徒が前年度の4倍超の255人に上りました。
 一方、都教育委員会は都議会の追及にも「適切に行われた」として問題の検証もせず、改善も進んでいません。今年も11月23日に4回目を予定し、7月3日から受験申請の受付が始まっています。
 集会では「入試改革を考える会」代表の大内裕和・武蔵大学教授が英スピテストに関する制度や運営面の問題、費用対効果や法的リスクなど、問題点を包括的に報告。都教委や区市教育委員会の責任と対応を促し、試験活用の中止、見直しを求める論点を多角的に報告しました。
 具体的には▼不受験者に仮結果推定の点数を与えることで不受験者が有利になる設計上の問題がある▼同じ試験問題を使って同じ会場で前半、後半に分けて受験させることや、教室内に多人数の受験生を詰め込むことで解答音声が漏洩する恐れがある▼試験監督の研修が不十分で運営に支障をきたした事例がある▼10〜15分のテストに受験生が5時間以上拘束される―など、受験生や保護者、試験監督から寄せられた声や告発をもとに検証しました。
 その上で「英スピテストの問題点を分かりやすく、一人でも多くの都民に知らせることが重要だ」として、それに役立つ資料を紹介しました。

事業採算で改善望めず
 都立高校で英語を教えた経験のある「英語スピーキングテストの導入に反対する会」の池田真澄氏が教育現場から見た英スピテストの問題点について解説。
 民間事業者に委託して実施することで品質・公平性の確保と事業採算の間に両立できない関係性が生じるため、十分な準備、設備・人員への資金の投入が行われにくいこと、同じ会場を使って前半・後半に分割する実施方式はコスト圧縮が主因と考えられ、それがテスト問題漏えい・不公平の温床になっていること、問題点が報告・可視化されない仕組みが改善を阻害していることなど、山積する問題を指摘しました。
 池田氏はまた、英語の習得には約3000〜4000時間が必要とされる一方、小中学校合計で授業時間は約630時間にとどまるとし、「この学習量でスピーキングを高い信頼性で測ることに無理がある」と強調。コミュニケーションの本質について、単語「book」を例に、意味確認にとどまらず相互表現の中で英語の実感を育てる授業実践が重要だと力説。「機械相手の一方向発話では本質的なコミュニケーション感覚は育ちにくい」とし、効果は限定的だと述べました。
 その上で入試への導入・継続は中止を含めて再検討し、教室内での対話的活動の充実と、少人数化などの学習環境整備に資源を再配分することが望ましいと結論付けました。

結果の活用なし
 子どもが中学3年生の母親は、中学2年生が受ける英スピテスト「YEAR2」の返却されたテスト結果を示しながら問題を告発。試験後に学校側の振り返り授業は実施されず、3カ月後に返却される結果を各自で復習するのみだと紹介。
 また、個人レポートの「学習アドバイス」は画一的で、満点者と中間層でも内容がほぼ同一で実効性に欠け、学校での「試験結果を活用した授業」は行われておらず、実質「受けっぱなし」状態だと批判しました。
 都議会の超党派でつくる英スピ議連に加盟している立憲民主党会派(立憲ミライネット・無所属の会)、日本共産党の都議の他、参政党の都議も紹介されました。
 立憲の竹井よう子都議は同会派から文教委員長を出したことを紹介し、「会派に所属する22人全員が英スピ議連に入る。子どもにとっては大事な3年間、改善させていきたい」と表明。日本共産党の、とや英津子都議は「共産党は文教委員会に2人の委員を出せた。みなさんの声をしっかり届け、中止に向けて議会内外で頑張ります」と力を込めました。

中学校英語スピーキングテストESAT―J
(イーサットジェイ) 都教委が中学校の授業で学んだ英語で「どのくらい話せるようになったか」を測るためとして2022年度から都内公立中学校3年生を対象に実施を開始。23年度から、中学校1年生対象の「YEAR1」、2年生対象の「YEAR2」を開始。受験生一人ひとりに渡されるタブレットに映し出される画像とヘッドセットから流れる出題音声を聞き取り、音声で解答します。採点は回収されたタブレットの録音音声をもとに行います。テストへの厳しい批判が広がる中、運営事業者のベネッセが撤退し24年度からブリティッシュ・カウンシルに変更。都は同テストの運営に24年度は43億円、6年間で210億円もの税金を投入しています。

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