タワマン乱立 街潰し

もうけ優先にストップ 「住み続けられる東京」が争点

 タワーマンション(超高層住宅)の乱立が止まりません。東京都北区では「せんべろ」の名で親しまれる居酒屋街を丸ごと潰(つぶ)し、タワマン化する計画が持ち上がっています。巨額の税金を注ぎ込む市街地再開発。住民を追い出し、街を壊した末、投機の舞台になっています。22日投票の都議選では「稼ぐ東京」か「住み続けられる東京」かが争点になっています。(芦川章子)

 JR赤羽駅前。夕暮れ時、昭和の風情が残る商店街に提灯(ちょうちん)がともります。焼き鳥屋、ウナギ屋、おでん屋…。連日、縁日のようなにぎわいです。

大衆酒場が並ぶ商店街=東京都北区赤羽(しんぶん赤旗提供)

 飲食店の店主は、タワマン計画について「ぜんぜん聞いていない。ばかなことを」と一蹴します。店から出てきた上機嫌の男性は「この街のレトロな雰囲気が好きなんだけどな」と驚きます。

 赤羽駅東口周辺では高さ100メートルのタワマンを最大3棟建てる市街地再開発が計画されています。区は、再開発にからめ、商店街に隣接する赤羽小学校を赤羽公園に移す案も検討しています。事業協力者には野村不動産など大手企業が名を連ねます。

 「やさしいまちをつくる会きたく」の藤平輝明代表は「せんべろは北区が誇る文化財であり、貴重な観光資源です。あげくに、学校を移転し、公園はつぶすという。区民の批判は大きい」と憤ります。

 約200人が参加した5月の住民説明会では約30人が発言し、タワマン推進の発言は1人だけだったといいます。

 日本共産党北区議団によると、計画への税金投入は、すでに事業認可が出た第一地区だけで88億円に上ります。

 同会と「住民本位の赤羽まちづくりを進める会」は、計画見直しを求める4000人超の署名を区へ提出。今、第4次の署名を呼びかけています。藤平さんは懸念します。

 「開発主体の不動産デベロッパーは売ったらおしまい。この街の将来や住民の暮らしなんて考えていない。湯水のように税金を使った十条駅前(北区)再開発の二の舞いになってはいけない」

 日本共産党の、せいの恵子都議候補(北区)は「もうけを優先するまちづくりにストップをかけ、『住み続けられる東京』を目指したい」と訴えています。

税金注ぎ街壊し タワマン

北区十条駅前

 東京都北区のJR十条駅前では、昨年9月、タワーマンションが完成しました。「ザ・タワー十条」、39階建てです。市街地再開発事業には、公共施設整備を含め約240億円の公金が使われました。

投資家のための舞台

午後9時、明かりもまばらな「ザ・タワー十条」=東京都北区(しんぶん赤旗提供)

 竣工(しゅんこう)から半年以上たった今も、1~2階は「テナント募集」の紙を貼った空き店舗が目立ちます。午後9時、マンション上層階の明かりはまばらです。

 不動産屋のサイトでは、2億~3億円で転売中の物件もあります。新築として未入居のまま月20万~40万円で貸し出されている物件も数多くあります。不動産屋の職員は取得しても居住していない家主が多いと指摘し、「家主のほとんどは投機目的で買われた方」といいます。

 いったい誰が買ったのか。本紙は最上階の全室の不動産登記を調べました。所有者が分かった8部屋のうち、4部屋を企業、1部屋を学校法人が所有していました。

 三菱UFJ信託銀行の「2024年度下期デベロッパー調査」も、住宅が投機の舞台となっていることを表しています。新たに都心(千代田区、港区、渋谷区)で供給されたマンションの「2~4割」は海外からの取得だとしています。

 24年3月期決算の大手デベロッパー5社(三井不動産、住友不動産、三菱地所、東急不動産、野村不動産)は過去最高益を上げています。

 大手デベロッパーなどが加盟する不動産協会は、自民党の政治資金団体「国民政治協会」へ毎年4000万円、三井不動産は1社だけで同2000万円の献金をしています。

 日本共産党の野々山研・北区議は「ごく限られた人しか入居できないような超高額タワマンを多額の税金を使って建設し、企業や海外の投資家による金もうけの舞台をつくっている。タワマンは修繕費も高く、いずれ廃虚化する可能性もあります」と語ります。

 22日投票の都議選。北区の自民、公明、都民ファ、維新は、赤羽駅前の市街地再開発計画を推進しています。

修復型まちづくりで住み続けられる東京

 せいの恵子都議候補の話 「アパートから立ち退きを迫られているが、今の収入で入れる住宅が見つからない」。私のところにもそうした住まいの相談は数多く寄せられています。

 東京の住宅家賃は爆上がりし、バブル期を超える異常事態です。

 大規模な容積緩和や大手開発業者に減税や優遇をほどこす異次元の金融緩和によって、「特区」とされた都内のあちこちにタワーマンションを呼び込む再開発が急速に広がり、住宅家賃を引き上げています。

 住民の生活より、もうけを優先するまちづくりにストップをかけたい。まちの魅力を残し、コストも節約できる修復型のまちづくりに切り替えることで「住み続けられる東京」を目指します。

(しんぶん赤旗2025年6月13日付より)

東京の大型再開発問題を特集したJCPTOKYO+
タイトルとURLをコピーしました