憩いの家裁判 市に16万円余の返還命令 大きな意味持つ一部勝訴

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 2019年から4年間に渡りたたかってきた、東村山市の高齢者施設の運営委託料を巡る住民訴訟「憩いの家裁判」(別項参照)は、5月12日に東京地裁で判決が言い渡され、被告・原告どちらも控訴せず判決が確定しました。住民訴訟の原告のひとりでもある渡辺みのる市議に、裁判の経緯と判決の意義などについて寄稿してもらいました。

寄稿 地方議会から
日本共産党東村山市議 渡辺みのる

原告の勝訴判決
 判決は①東村山市から委託先の大成(株)に対して16万2000円を請求すること②談合ないし談合類似行為は認められない③市長には故意・過失は認められず、指揮監督上の義務違反はない―という内容でした。
 これまで市は、不履行業務に関する返還金は2018年12月に返還させた68万円余りをもって完了していると主張していました。しかし、富士見及び萩山憩いの家への防火管理者が設置されていなかったことを認め、必要経費として市から大成(株)に請求することを命じました。
 また、市は原告の主張は、訴訟の要件である監査請求を経ていないとして、裁判所として審理しないよう「門前払い」を求めていました。判決では、監査請求時に添付されていた資料や判例に照らして、監査請求との同一性が認められると判断しています。
 金額そのものはわずかではありますが、住民訴訟で原告側の主張が一部でも認められ、市に大成(株)への返還請求を命じたことは、大きな意味を持つ判決といえます。

談合、市長の責任認めず
 一方で、委託業務の入札における談合ないし談合類似行為と市長の管理・監督責任については認められませんでした。
 委託業務は指名競争入札で行われていましたが、予算の参考見積を委託先業者の大成(株)から聴取しており、見積額・予算額・入札予定価格が1円違わず一致していた年もありました。6年連続で大成(株)が96~99%の落札率で落札していることなどから、談合が疑われていました。しかし、予算増額に関する説明不足や完了検査の形骸化、予算決定時の検討不足などの指摘はしたものの、談合ないし談合類似行為は認められないという判断となりました。
 市長の責任については、業務の不履行や予算の大幅増額が問題となり、予算案が撤回された18年3月分の委託料の支払いを、市長の権限で止めることができたにもかかわらず、その責任を怠ったのかどうかが問われました。

運動と議会でたたかい継続
 判決では、3月の予算委員会では「契約内容の不履行」がほとんど言及されていないことから、市長が「不履行」を知ったのは6月議会の直前との判断でした。
 予算や入札予定価格が、委託先事業者の言いなりで決められていたことを一部認定しながら、談合ないし談合類似行為の認定をしなかったこと、予算委員会で仕様書に明記されている業務が未実施であることが議論になったにもかかわらず、市長の管理義務違反を認めなかったことは、とても残念です。
 市に対して、大成(株)に不当利得請求をさせるという評価できる判断の一方で、談合や市長の責任を認めないという判決にたいし、原告団と弁護団で控訴期限ぎりぎりまで議論を交わした結果、控訴はせず、今後の議会での論議や市民運動の中で、市政運営の公平性と透明性を求めるたたかいを続けていくこととなりました。
 談合ないし談合類似行為を立証する物的証拠がないことや、市長の責任、特にいつ業務不履行を知ったのかを証明する客観的な事実を、新たに提示することが難しいこと、控訴審で勝ち取った内容まで覆る可能性があることなど、総合的に判断をしたものです。
 原告団は、市長の責任が一切認められなかったことに対して、納得をしている訳ではありません。今後も、市民のみなさんと力を合わせて、現市長の不公正な市政運営を正していくために、取り組んでいく決意です。

憩いの家裁判とは 東村山市の高齢者施設「憩いの家」の運営を業務委託している「大成株式会社」と市の間で、予定価格とほぼ同額で落札が行われていたことなどは「談合の疑いのある入札で、不当な公金支出にあたる」として、市議5人が市長に対し、総額1億9937万円余の返還を求める住民訴訟を東京地裁に起こしました。2018年11月に市議8人が市監査委員に住民監査請求を行い、翌19年1月に棄却されたことを受けてのものです。