〝東京の村〟に産廃施設計画

檜原村 自然豊かな水源地 撤回へ村民が初デモ

「檜原村に産廃施設はいらない」と事業者本社前でデモ更新する人たち=6月4日、東京都武蔵村山市

東京都心から電車とバスで3時間近くかかる西端の檜原村(ひのはらむら、人口約2000人)で、登山道や林道がある山あいに産業廃棄物焼却施設を建設する計画が起こり、村民の反対運動が広がっています。(東京都・川井亮)

「檜原の水源地を守れ」「産廃施設計画は白紙撤回せよ」―。6月4日、施設を計画する事業者「比留間運送」(武蔵村山市)の本社周辺で、村民らのコールが響きました。

産廃施設計画を知った村民らが初めて取り組んだデモ行進。約100人の参加者が「産廃焼却施設断固反対」の横断幕やのぼりを掲げました。あきる野市から来た男性は「デモというものに初めて参加した。檜原村は自然が豊かで、家族で何度も来ている。施設建設に憤慨している」と話しました。

産廃施設計画が明らかになったのは昨年11月。事業者が村南部の人里(へんぼり)地区の住民に向けて開いた、特別養護老人ホーム跡地の「利活用について」とした説明会でした。

林道や登山道がある同地区の山あいに、高さ45メートルもの煙突を持ち、1日24時間稼働体制の焼却施設を建設し、10トントラック13台、4トントラック12台などが出入りし日量96トンを処理する計画。今年3月に施設の設置許可申請を都に提出しました。

地元自治会役員の吉本昂二さん(69)は「計画を聞いて、こんな自然が豊かな村に産廃施設を造るなんて、とんでもないと思った」と話します。

事故の増加懸念

地元自治会有志ら村民が「自然環境が犠牲にされる」「道路が細く曲がりくねった村内で、大型車が通れば事故が懸念される」と施設建設反対運動に立ち上がり、環境問題や地質学の専門家を招いた学習会を開催。7月9日には「檜原村の産廃施設に反対する連絡協議会」を結成しました。

建設反対を求める署名は施設予定地がある村南部だけでなく、村北部でも広がり、都・都議会・村・村議会宛ての署名は村民の6割以上を含め6600人以上が応じています。

村議会では6月、村民の陳情を全会一致で採択。施設の申請を不許可とするよう求める知事宛て意見書を可決しました。

事業者の許可申請を受け、都は廃棄物処理法に基づく専門家会議を7月27日に開催。村民207人から計1014件もの意見が寄せられたと報告されました。

不安払拭されず

会議では委員から、「事業者の回答は抽象的で具体性に欠ける。地域の不安の払拭(ふっしょく)をいかに図ろうとしているか具体的に示す必要がある」「住民に寄り添う答えがないと、合意が得られないだろう」などの意見が続出。次回、事業者の出席を求めるとしました。

廃棄物処理法では産廃処理施設の設置許可について、「環境省令で定める技術上の基準に適合している」だけでなく、周辺地域の生活環境の保全や周辺施設への「適正な配慮がなされたもの」でなければ「許可をしてはならない」と定めています。

都は専門家会議の意見を踏まえて、今年秋までに施設設置申請の可否を判断するとしています。

吉本さんは「これだけの大きな運動は、村が始まって以来ではないかと思います。6月のデモは、私も初めてでした。声を強めて、産廃施設計画を撤回させたい」と話しています。

(「しんぶん赤旗」2022年8月4日付より)