東京都が狙う都立・公社病院独法化とは

東京都が7月に都立病院・公社病院を独立行政法人(独法)に移行させようと狙っています。そもそも独法とはどういうものなのか。

■独法とは
独立行政法人とは「公共上必要だけれども、民間でできるものは公(国や地方自治体)でやるべきではない」との考えで、国や自治体が実施しているサービスを直営から外すことをいいます。
地方独立行政法人法の第2条では、民間では必ずしも実施されない事業を、自治体が設立する法人として独立行政法人を定義しています。

■その狙い
一言で言えば、公共サービスの縮小・廃止のためです。事実上の民営化ともいえます。
独法の議論は自民党の橋本龍太郎内閣時に発足した行政改革会議(1996~98年)にさかのぼります。当時の行革論議は、住民福祉の向上より効率と独立採算を優先することでした。

■しわ寄せ

東京都には都直営の都立病院が8、都立に準じる都保健医療公社の病院が6あります。
都は都立・公社病院を7月に独法の「都立病院」へ移行させようとしています。都立と名乗っても、都の責任が直接及ばない民間病院並みになることを意味し、経営効率化が強く求められます。そのため医師や看護師などスタッフの削減・賃金引下げといったリストラのおそれがあります。
2009年4月、先行的に都立病院から独法病院へ移行した健康長寿医療センター(旧老人医療センター)ではベッド数が100床以上減らされ、141床で差額ベッド代が徴収されるようになり、入室時に10万円の保証金も必要になりました。
全国の国立病院や県立・市立病院なども独法化される中で、国立病院への運営交付金が大幅に削減されたり、大阪府立病院では職員賃金を17億円削減し「黒字化」、分娩料2倍など、医療従事者と患者にしわ寄せされています。

■コロナで
コロナ第五波で都立・公社病院は2000床をコロナ対応にあて、都内の同病床3割分にのぼります。他の病院とくらべて都立病院が感染症対策に力を入れることができたのは、都の一般会計から必要額を繰り入れることで、民間病院では採算を取るのが難しい分野に力を注いでいるからです。それは感染症分野では専門病床や訓練されたスタッフを恒常的に配置してきました。感染症以外では、難病、周産期、小児、災害、島しょ医療などが含まれます。
全国でコロナ対応のベッドを確保しても実際に患者を受けれた数が少ない問題が指摘されています。
都直営のままで残してこそ、今後も起こりうる新規感染症に備えることができます。

(「しんぶん赤旗」2022年1月28日付より)