都有地投げ売り追認 / 東京地裁 住民賠償請求を棄却

2021年12月26日 ,

五輪選手村用地

東京都が五輪選手村整備の名目で、中央区晴海の都有地(約13・4ヘクタール)を2016年に近隣地価の10分の1以下の129億6000万円で大手不動産11社に売却したのは違法だとして、都民32人が都に対し、損害賠償約1209億円を舛添要一前知事と小池百合子知事らに請求するよう求めた住民訴訟の判決が23日、東京地裁でありました。

清水知恵子裁判長は都側の主張を全面的に認め、原告の請求を退けました。

判決は、都が選手村用地を東京五輪の選手村として使ったことを挙げ、不動産鑑定評価によらず譲渡価格を129億6000万円としたことを追認。原告側が不動産鑑定基準に基づき本来価格を1653億円余と算定したことについて「選手村要因を前提としない」として退けました。

都が同用地の唯一の所有者として再開発事業の施行者でありながら、自ら認可権者にもなった異例の事態についても追認しました。

原告団の中野幸則団長らは記者会見で「脱法的な再開発制度の乱用を正当化し、地方自治法の規制も、土地価格の公平性を担保する不動産鑑定制度をも骨抜きにするもので、不当な判決だ」と批判。控訴する意向を表明しました。


解説

都有地投げ売り追認 都財政に巨額の損失

東京五輪選手村整備の名目で東京都が中央区晴海の都有地を1200億円以上値引きし、大手不動産11社に売却した小池百合子知事らへの損害賠償請求を求めた住民訴訟の判決で、東京地裁は23日、原告の請求を棄却。原告から憤りの声が上がりました。

「晴海選手村土地投げ売りを正す会」の中野幸則会長らが東京地裁に提訴したのは2017年。原告側は、都が市街地再開発制度を脱法的に乱用して選手村用地の鑑定評価を行わず、都議会や財産価格審議会をも無視して1平方メートル当たり約9万6700円の超安値で売却した経緯を指摘。地方自治の民主主義の根幹を揺るがす重大な違法行為であり、官製談合によって行われた「都政版森友学園事件だ」と追及しました。

中野原告団長は「都の譲渡価格は土地の造成コストを下回り不合理だ」と陳述しました。

原告の桝本行男・不動産鑑定士は「本件土地の適正価格は1611億円」だと主張。清水知恵子裁判長は判決で、「(桝本鑑定は)選手村要因を前提としない正常価格」であり、都の譲渡価格の適否を判断することはできないと逃げました。

しかし、東京都が東京ドーム2・9個分の広大な都有地を、不動産鑑定書も作成せず、財産価格審議会や都議会にも諮らずに、不動産会社に投げ売りし、都財政に巨額の損失を生じさせたことはまぎれもない事実です。控訴審では改めて、小池知事らの責任が問われます。

一方、選手村後利用で晴海地区に小中学校など公共施設を整備する中央区の譲渡申し入れに対し、都の売却価格は1平方メートル当たり56万円余。11社への選手村用地売却価格の5・8倍で、都のデベロッパー優遇に批判があがっています。(岡部裕三)

(「しんぶん赤旗」2021年12月25日付より)