新型コロナウイルス感染症から都民の命と健康を守るうえで、都立病院(8病院)と公社病院(6病院)は、コロナ専用病床確保の中心を担うなど、重要性が増しています。ところが小池百合子知事は、全ての都立・公社病院を採算重視の経営形態となる地方独立行政法人に一括して担わせる計画(独法化)を、このコロナ禍でも強引に進めています。都は独法化で人材も集まり、経営も安定すると、バラ色に描きますが‥。

クローズアップ都議選
 「都立病院の看護師は、何かあったら都民のために動くという公務員の使命感をもって働いています。そのための訓練も受けています」。新型コロナ患者を受け入れる都立病院に勤務するベテラン看護師(50代)は、こうきっぱり語ります。実際、新型コロナウイルスが未知の感染症ウイルスとして恐れられていた昨年1月末、中国武漢から帰国(チャーター機)した感染者を真っ先に受け入れたのは、都立の駒込病院と公社・荏原病院でした。
 都内の感染症指定病院は 15 病院118床(20年3月時点)あり、そのうち7割近い80床を都立の駒込、墨東両病院、公社の荏原、豊島両病院で占めています。感染が急拡大する中、都立・公社病院のコロナ病床を増床してきた都は、今年1月には1100床から1700床に増やすために都立広尾、公社荏原・豊島の3病院を「実質的なコロナ専用病院」にしました。
 都内全体では4900床を確保しましたが、大学病院はじめ民間大病院など600数十施設ある都内において、都立・公社のわずか14病院が都内全体の約35%を担ったことになります。

地域住民から信頼
 都内にある6つの公社病院も、地域中核病院として、住民からなくてはならない医療機関として頼りにされています。正式には「東京都保険医療公社」と言い、都や都医師会などが出資し、1988年に設立されました。
 多摩北部医療センター(337床、東村山市)もその一つで、東村山や東久留米、清瀬各市などの地域医療を担います。新型コロナ対策でも入院治療にあたり、地域住民になくてはならない医療機関として頼りにされています。
 ただ産科はなく、設置を求める声も少なくありません。最近、妊娠高血圧症で区内の病院に救急搬送され、2人目を出産した渡邊奈保子さん(37)もその一人。超低出生体重児で3カ月間、NICU(新生児集中治療室)に入院し、本人退院後は親子離ればなれの暮らしとなりました。
 渡邊さんは「(体力や経済的理由で)毎日会いに行くことができないもどかしさや、何より子どもに申し訳ない気持ちになりました。私のようなつらい思いをするパパ、ママがいてほしくはありません。ぜひ産科、NICUをつくってほしい」と訴えています。

強引に進める小池都政
 地域住民でつくる「多摩北部医療センターを良くする会」(井口信治会長)では、同医療センターの改築にあわせた医療機能の充実を求めていますが、都が進める独法化には、医療機関の充実とは逆行すると強く反対しています。
 それは都立や公社病院が、感染症や産科、小児科をはじめ、精神や災害・救急医療など行政的医療と呼ばれる、採算がとれにくくても都民の命と健康を守るために、都が直接責任をもって担っているからです。都はそのため、都立病院に年間約400億円、公社に約100億円を一般会計から支出し支援しています。
 ところが小池百合子知事は2019年末の都議会で突然、全ての都立・公社病院の経営を都の直営から地方独立行政法人に移すと宣言したのです。都はその理由について、都立病院として行政的医療の安定的・継続的な提供や都の医療政策に貢献する人材確保と安定した経営基盤の構築が、独法化によって実現できるからだとしています。

都ファ・自民が旗ふり
 これに対し「行政的医療の充実は見せかけだ」と断言するのは、都議会厚生委員会に所属する日本共産党の白石たみお都議です。「独法化の真の目的は不採算医療を切り捨て、小池知事が言う『儲かる』医療を機動的に行えるようにするためのものだ」というのです。
 そのことは、小池都政の最大与党である都民ファーストの会や自民党などが、都の財政支援を「赤字」だと問題視し、独法化の旗ふりをしてきたことでも分かります。
 実際、他県で独法化された病院では、不採算医療の切り下げが相次いでいます。東京都でも2009年に都立病院で初めて独法化された東京都健康長寿医療センター(板橋区)では、最高2万6000円の高額な個室が4分の1を占めるようになり、都立病院の2・5倍に。
 一方、人材確保の面では、常勤医師が2018年度から19年度にかけて14人も減り、2020年度は1人しか補充できていません。そのため医師不足を主な原因として、2018年度は11億円、翌19年度も10億円の赤字を出しました。都が独法化すれば、人材も集まり、経営も安定するとアピールするのとは真逆の惨たんたる状況です。

定款提出を見送り
 都立・公社病院の独法化に不安を抱く各地元の住民が中心となって、独法化中止を求める運動が草の根で広がっています。そうした中、都は開会中の第一回定例会への法人設立のための定款の提出を見送りました。しかし都は独法化に固執し、2021年度予算案には39億円もの準備経費を計上しました。
 日本共産党は「都立・公社病院は命のとりで」だとして、都議会で唯一、独法化に一貫して反対。独法化は都民にとってデメリットしかないことを明らかにしてきました。
 原のり子都議は新型コロナの急拡大で医療崩壊への危機が広がるなか開かれた、都議会の代表質問(2月24日)で、こう訴えました。「今ほど都立・公社病院の役割の発揮が求められている時はありません。財政支出を減らすことが目的の独法化は中止し、都が責任をもって抜本的に拡充・強化することを、改めて厳しく求めるものです」