コロナ禍に病院削減!?/「地域の宝」住民が存続求め運動

「しんぶん赤旗」紙面より(10/23付日刊紙・首都圏版)

厚生労働省は昨年、公立・公的病院の再編・統合の議論を促すために440病院を名指ししましたが、今も推進する姿勢は変わりません。「コロナでも病院削減か」と全国で批判が起こっています。(吉岡淳一)


東京 区立台東病院

東京都の区立台東病院もその一つです。

「病院なくす話なんて知らなかった。それは困る」。浅草で先月、区民らが次々と台東病院を守る署名をしていきます。「区立台東病院を守る会」(寺山邦裕会長)の行動です。署名は4000人ほどに達し、厚生労働相に提出する予定です。

守る会が発足したのは昨年末。区議会に病院存続を求める陳情を提出し、2月に趣旨採択されています。同時期に署名活動も展開。病院周辺の町会長も「病院が廃止されたら大変」と趣旨に賛同し、地域の回覧板に署名用紙を添付し、署名集めに協力しました。

高齢者の安心に

区立台東病院は都内唯一の区立病院。前身の都立台東病院が2004年に廃止されたとき、区民や区議会、医師会など区をあげて新たな病院をつくる運動が盛り上がり、09年に区立台東病院が誕生。23区で高齢化率上位の台東区で、区立病院は高齢者が安心してこの地域で住み続けられるよう支援する高齢者医療の拠点としての役割を発揮しています。

リハビリ病棟に入院していた70代女性は「守る会」総会(7月)に病床から手紙を寄せ〝発言〟しました。入院生活を通じ、深夜のナースコールで嫌な顔一つも感じないなどスタッフの徹底した優しさを感じ、「敷居の高くない病院。地域の宝です」と記しています。

この女性は、病院の食堂で出会った患者の顔を見て「地域の病院」だと実感したといいます。「下町で長年、仕事をし、暮らし続けていらした雰囲気を持っていた」からでした。

区内の永寿総合病院で3月、新型コロナ患者が多数発生し、2ヵ月近く外来が休診しました。守る会メンバーが区立病院近くで署名行動していると、「永寿に行けないから台東病院にきた」と話しながら署名に応じる姿もありました。

党区議団も共に

日本共産党区議団は、守る会の署名行動に立憲民主党や区民会議の他党派の議員と一緒に取り組んできました。

伊藤延子区議(保健福祉委員)は「台東病院は地域に不可欠の病院です。住民の運動と連携しながら、区議団としては、区として積極的に都や国に意思表明するよう区議会で働きかけたい」と語ります。

守る会の寺山会長は「近くに東大など大学病院があるから再編だと厚労省はいうが、ずっと大学病院にいるのでなく地域に帰らないといけない。台東病院は、慢性疾患を抱えている高齢者にとって地域密着の役割を果たしています。大病院と比較すること自体が間違いです」と語ります。

(2020年10月23日付「しんぶん赤旗」より)