秋元議員を再逮捕「汚職まみれ、区の恥」

2020年1月23日

カジノは日本にいらない

 江東区がカジノ問題に揺れています。同区は、カジノ事業をめぐる収賄容疑で14日に再逮捕された秋元司衆院議員(自民党を離党)の地元選挙区。しかも、同区青海地区を、都はカジノ誘致の有力候補地としています。汚職にまみれたカジノはいらないと怒りが広がる、街の声をリポートします。

リポート 怒れる地元・江東区

 再逮捕が報じられる中、秋元容疑者の地元、江東区の区民は、みんな怒っていました。
 秋元容疑者が、よく顔をみせていたという川南地域の商店街・フラワー通り。街のあちこちに張り出されていたポスターがきれいにはがされ、一枚も見当たりません。住民の斉藤斉さん(85)は「元副大臣のやることか。一度会ったときに分かったよ。この人は頭も下げない、苦労したことがない人だってね」と言葉を荒げました。
 魚屋の店主も、訪れた秋元容疑者に会った印象を「こんな高飛車な人じゃダメだと思った」と言います。「政治家って、私らの声を聞いてくれる人たちでしょう。だからみんな政治不信になるんですよ」
 「江東区の恥だ」という声もありました。人通りの少ない商店街、「この不景気を、何とかしてくれるのが、国会議員の仕事じゃないの」と、きびしい口調で批判する人もいました。
 砂町銀座商店街は、買い物客でにぎわっていました。はがし忘れた秋元容疑者のポスターがちらほら。雑貨商の元社長、渡部和亮さん(84)は「(秋元容疑者は)全てにおいて自分が一番、自分のことしか考えない人だったのじゃないか」と指摘。渡辺さんは、議員になる人は本来、地域の人たちを一番に考えるもので、自民党でも共産党でも構わないと考えてきたといいます。
 化粧店代表で元町会長の堀内勝彦さん(65)は「(秋元容疑者は)こんな悪いことをしていたのか」と驚いた1人です。「カジノという博打を経済活性化と結びつけるのがおかしい。カジノを是認する国もおかしい。博打を推進する人を有権者は選ぶべきではないと思う。そのことを、もっとみんなに知らせるべき」と力説しました。

市民連合が学習会「地域の衰退招く」

 17日には、市民が学習会「江東区にカジノはいらない」を開きました。9条改憲反対の運動から結成された「市民と政治をつなぐ江東区市民連合」を中心に3つの市民団体が共催しました。
 開始10分前には会場がいっぱいになり立ち見が出るほど集まりました。
 市民連合共同代表の宇都宮健児弁護士のあいさつの後、カジノ問題の専門家である鳥畑与一静岡大学教授が講演。鳥畑氏が「カジノは、お客がかけ続けるほど、事業者がもうかる仕組みになっています。ギャンブルに依存させる仕掛けが施され、ギャンブル依存症に収益を依存したビジネスモデル」と話すと、「そうだよ」「とんでもない」と声が上がりました。
 鳥畑氏はさらに、「推進派は経済効果を一面的に強調するが、カジノの収益は顧客の負けによって生み出されます。本来は地域で生活や遊興などにまわされる消費力を奪う『マイナスの経済効果』で、地域経済の衰退を招く」と告発しました。
 超党派の区議が参加しました。あぜ上三和子都議(共産党)はあいさつで、「各地の新年会で自民党の人たちは、『秋元さんは自民党をやめた』と言い訳している。しかし、安倍政権の戦略のもとで秋元議員が役割を果たしたのは明らかで、真相をきちんと解明させたい」と強調しました。
 あぜ上氏は、共産党都議団が都に情報公開を求めた資料で、江東区青海が有力候補とされ、「都が前のめりに検討していることがわかった」と告発。その一方、ギャンブル依存症対策の調査の資料が、タイトル以外はすべて黒塗りで開示されたことを、文書を示しながら話すと驚きの声が上がりました。
 あぜ上氏は「都がカジノ誘致を検討しているなら、税金で行った調査の内容を都民にきちんと開示するべきです。7月の都知事選でカジノを推進するような知事はつくらせない。そのために頑張りたい」と話すと、大きな拍手が起こりました。

自民区議も「反対」

 江東区も都と連携するように、着実にカジノ誘致の動きを強めています。区が昨年12月にまとめた「長期計画素案」には、初めて「MICE(マイス)等の誘致」の言葉が入りました。
 MICEは、企業の会議・研修や学会の国際会議などのビジネスイベントの頭文字を取った言葉です。MICE誘致は、カジノを含む統合型リゾート(IR)構想と、密接な関係があります。
 自民党の星野博江東区議は、東京民報の取材に、「国民道徳から言って、カジノというバクチを国が認めるというのはそもそもおかしいので、個人的には反対している」として、「長期計画に『MICE等の誘致』が書き込まれたが、当然カジノが入るだろう。今回の事件もあるので、議会はもちろん、区民の間で大いに議論すべきではないか」と話します。
 日本民主青年同盟(民青)が江東区の成人式で集めたカジノ誘致をテーマにしたシール投票では、211人の回答のうち、江東区にカジノが「いる」は66人で31%、「いらない」が109人と52%で5割を超えました。同区の新成人は3979人で回答数は新成人の5・3%にのぼります。「カジノで治安が悪くなるのが心配」「ギャンブルにはまりそうで怖い」などの声が寄せられたと言います。
 学習会「江東区にカジノはいらない」で司会をした信太隆文さん(出版ジャーナリスト)は、「秋元議員は有権者に説明責任を果たしてほしい」と訴えます。自身のおじも、ギャンブル依存症で一時期、失踪していたという信太さんは、「失踪から見つかったときには、亡くなる寸前でした。失踪で私たち家族も相当な地獄を見た。江東区にも、日本にも、カジノをつくるのは、絶対に止めてほしい」と話します。

(松浦賢三 荒金哲)