「こんな無茶、許されない」 豊洲移転差し止め 仲卸業者ら56人が提訴

「こんな無茶、許されない」 豊洲移転差し止め 仲卸業者ら56人が提訴
 築地市場(中央区)で営業する仲卸業者ら56人は19日、「豊洲市場の土壌汚染は解決されておらず、安全・安心は確保されていない」として、東京都が強行する豊洲新市場(江東区)への移転差し止めを求める訴訟と、築地市場の解体をストップさせるための移転差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てました。一方、小池百合子知事は同日開会した都議会定例会の所信表明で、豊洲市場で起きている地盤沈下や土壌汚染にはまったく触れず、「新市場の環境が万端に整う」として、「食の安全・安心を守る」「築地を守る」との公約も投げ捨て、移転を強行する考えを表明しました。都は築地市場の営業を10月6日で終了、同11日に豊洲市場の開場を強行する計画です。
 
 「こんな無茶な引っ越しをやるとは思わなかった。(都は)なかば脅迫のようにして進めている。こんな無茶なことが日本にあってはならない」。提訴後、司法記者クラブで記者会見した山口タイ原告団長(築地女将さん会会長)はじめ原告らは、やむにやまれず提訴にいたった切ない思いを語りました。
 
 目利きの力で築地ブランドを培ってきた仲卸業者らは、公開質問状や説明会の開催など、食の安全・安心を守ろうと、都にさまざまな要請を行ってきました。しかし都からは、誠意ある対応は、いっさいありませんでした。
 
 
憲法が保障人格権侵害
 会見には、仲卸業者ら12人と宇都宮健児弁護団長(日本弁護士連合会・元会長)が参加。宇都宮氏が訴訟の概要について説明。東京ガス工場跡地である豊洲新市場用地は、土壌汚染対策問題が解決しておらず、都議会の付帯決議(2010年)にある「無害化された安全な状態での開場」(①土壌汚染対策の確実な実施 ②東京ガス操業由来の汚染物質の完全な除去・浄化 ③土壌、地下水の汚染も環境基準以下にする)という市場関係者、都民への約束は、全く履行されていないと指摘しました。
 
 将来想定される首都直下型地震が起きれば、豊洲市場では液状化現象により地中の汚染物質が地上に噴出する危険性があり、市場としての機能を果たせなくなる可能性が大きいと強調。安全性検証も極めてずさんな状況下で行い、小池百合子知事の「安全宣言」は信頼できないとしています。
 
 その上で▽豊洲に移転すれば消費者の不安も大きくなり、原告の営業は大打撃を受ける▽有害物質の汚染が残る市場で働く仲卸業者らの健康がむしばまれる─などの問題点をあげ、豊洲市場への移転は、原告らの生命・身体・精神、生活に関する利益(人格権)が侵害される危険性が極めて大きいとのべ、豊洲への移転は憲法上の権利である「人格権の侵害にあたる」としました。
 
 宇都宮氏は「人格権」が認められた判例として、福井県などの住民189人が関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた福井地裁の判決(14年5月)をあげました。判決は「事故が起きたら半径250㌔圏内の住民の人格権が侵害される」とし、再稼働の差し止めを認めました。