深く温かいメッセージ
あっという間の新年でしたが、合間をぬって山田洋次監督の映画「母と暮らせば」を観(み)てきました。
舞台は長崎。原爆で一瞬にして亡くなった医大生の息子が、霊となって母のもとに現われ、息子の婚約者などとともに織りなすファンタジーです。
母を演じた吉永小百合さん、息子の二宮和也さん、その婚約者の黒木華さんなど、出演者がみな素晴らしく魅力的で、坂本龍一さんの音楽も胸に沁(し)みました。明るいエピソードにあふれ、山田監督ならではのユーモアが随所にちりばめられているのですが、途中から涙が止まらなくなって困りました。
長男は戦死し、次男は医大生になって召集猶予されたのに原爆死。「しょうがないよ、そいが僕の運命さ」とつぶやく息子に、母が、「運命?例えば地震や津波は防ぎようがないから運命だけど、これは防げたことなの。人間が計画して行った大変な悲劇なの。そう思わん?」と。声高に語らず、しかし反戦の深いメッセージが伝わります。
この作品は、二宮和也さんの言葉を借りれば「帰り道が温かくなる映画」です。すでにご覧になった方も多いと思いますが、まだの方には、ぜひともご家族や大切な人と観ていただけたらと思います。
(「しんぶん赤旗」2016年1月16日付より)