来月開始の介護保険「総合事業」:移行はわずか

担い手なく サービスの削減も

4月から介護保険制度が大きく変わります。要支援者の訪問介護と通所介護が介護保険給付から外され、区市町村が安上がりの代替サービス「総合事業」を始めます。

都内は移行1割

2015031902_02_1b 移行期限は17年4月までの2年間ですが、初年度の移行は、わずか7%の114自治体(厚生労働省調査)。東京都内でも1割の8区市です(図)。

品川区は、訪問介護は生活援助が中心のサービスに移し、単価を現在の介護報酬に比べて17%も引き下げます。通所介護も50%近く引き下げます。国立市は、訪問介護を26%削減します。厚労省は、単価を現行以下にせよと求めていますが、大幅削減になっています。

品川区内に支所をもつ訪問介護事業所の所長は「経営は厳しくなりますが、利用者がいるので打ち切りはできません。予防介護を軽視する改悪です」と話します。

ボランティアへの置き換えを求める厚労省の方針を受け、検討されているのが、シルバー人材センターです。

世田谷区では1回500円(30分以内)で生活援助を行う事業を試行し、16年度からの移行をめざします。現行なみに1回1時間程度を月4回利用すると、利用料は4000円。介護保険の訪問介護と比べて約3倍の負担増です。

18年働くヘルパーの女性は「ヘルパーは家事代行ではありません。高齢者を継続してみることで、認知症など状態の変化に気付き、介護計画の見直しや医師による対応につなげています。安易に無資格者に担わせることは問題です」と指摘します。

稲城市は市の支出を抑えるために早期実施が必要だとして、4月から開始します。5年後には3500万円の削減につながると試算しています。

その中身は、体操や趣味の活動、買い物や掃除代行など、既存のサービスを置き換えただけです。しかも、参加費が無料だったのが、新たな負担を強いられます。

移行する自治体も含めて共通しているのが、住民が担い手になるサービスの体制がつくれないことです。行政の担当者らは「地域の担い手を把握できていない」「既存の団体がそのまま担い手になるのは難しい」と話します。

維持求めて運動

こうしたなか、総合事業への移行反対や要支援者サービスの維持を求める運動がおきています。

「品川の医療と介護をよくする会」が、要支援者のサービス削減の中止などを求める請願署名1130人分を区に提出しました。日本共産党の鈴木ひろ子区議は「高齢者から必要なサービスを取り上げ、事業所には廃業の危機が広がる。いまでも大変なのに、さらに深刻になります。せめて、現在の介護報酬と同額にするなどサービスを維持させることが必要です」と語っています。

介護の充実を求める署名を呼びかける日本共産党の石田ちひろ区議(中央)ら=2月8日、東京都品川区

介護の充実を求める署名を呼びかける
日本共産党の石田ちひろ区議(中央)ら
=2月8日、品川区

共産党は移行中止要求

日本共産党は、要支援者サービスを切り捨てるものだとして、総合事業への移行を中止するよう求めています。移行しても要支援者サービスを守り、拡充するために国と自治体が責任を果たすことを主張しています。

(「しんぶん赤旗」2015年3月19日付  岩間萌子記者記事より)