自民政治を変えるか否か

酒井候補 「きっぱり決別」/ 維新陣営 改憲で自民同調 / 都ファ・乙武氏 改憲宣言

酒井菜摘候補の勝利を訴える田村智子委員長=16日、東京都江東区

 16日告示された衆院東京15区(江東区)補選(28日投開票、立候補9人)では、金権腐敗・大軍拡の自民党政治を首都東京から、市民と野党の共闘の力で終わらせるかどうかが問われています。自民党が不戦敗に追い込まれる中、市民と野党が共闘した酒井なつみ候補=立憲民主党公認=と、自民党政治の補完勢力との対比が告示前後の論戦で鮮明になっています。(東京都・川井亮)

 IR(カジノを中核とする統合型リゾート)汚職の秋元司氏、昨年4月の区長選をめぐる公選法違反事件の柿沢未途氏と、同区選出の自民党衆院議員が2代続けて政治とカネで有罪判決を受けたのをはじめ、同区では5年間で7人の自民党政治家が逮捕・起訴されています。

 酒井氏は「市民と政治をつなぐ江東市民連合」と交わした確認書で「金で動く自民党の古い政治ときっぱり決別し、国民の声で動く新しい政治を実現します。企業・団体の政治献金は禁止します」と明記。「憲法も国民生活も無視する軍拡は許されない」「ジェンダー平等・人権保障」「IRカジノ誘致に反対」などを掲げました。

 16日に行った街頭演説では、日本共産党の田村智子委員長、立民の蓮舫参院議員、社民党の福島瑞穂党首、衆院議員の櫛渕万里氏が並び、酒井氏は「政治を自民党に任せるわけにはいかない。利権やカネの力で動く政治ではなく、国民の声を受け止めるまっとうな政治をみなさんとともに進めたい」と訴えました。

酒井氏はまた、看護師・助産師として医療現場で12年間、働いてきた経験を紹介し、「子どもたちが社会の宝として、大切に育まれる環境をつくる。若い世代の所得を上げ、結婚・出産・子育て・学びの不安を取り除いていく」と強調しました。

自民と個々に“連携深める”

 これに対して、日本維新の会陣営と、小池百合子都知事が擁立した陣営は、改憲を競い合っています。

 日本維新の会の馬場伸幸代表は16日の同党候補第一声で、企業・団体献金の禁止を言う一方で、「立憲民主党は政治とカネの問題にかこつけて、本来やるべき課題をやらない。いい例が憲法審査会。憲法はぼちぼち改正する時期がやってきている」と改憲をけしかけました。

 小池知事が事実上率いる「ファーストの会」が無所属で擁立した乙武洋匡氏は、16日の第一声で「『憲法改正に反対している』とデマを書かれているが、私は改憲反対論者ではない。国民でしっかり議論して、変えるべきところは変えればいい」と宣言しました。

 小池知事は12日の記者会見で補選について「自民党については個々の方々、また関連団体も含めて連携を深めていくと考えているかと思う」と語りました。これでは自民党政治を変えることはできません。

「自民に打撃を」 有権者が期待

 維新の馬場氏は「身を切る改革をやってきたのは日本維新の会だけ」と豪語しましたが、維新主導の大阪府市が推進しているのは、ギャンブル依存症という人の不幸をもうけの対象にするカジノや、能登半島地震の被災地を横目に莫大(ばくだい)な費用をかけようとしている大阪・関西万博です。

 馬場氏はまた、「この日本を自民党と維新という二大政党に持っていって、政府の予算や法律のA案に、私たちはB案を出して、議論をたたかわせる」とも述べました。

 しかし、馬場氏は昨年7月、「(維新が野党第1党を目指すのは)自民党と対峙(たいじ)するためのプロセス。第1自民党と第2自民党が改革合戦をどんどんやる」と「第2自民党」を宣言していました。維新の国会議員が増えても自民党政治に代わる新しい政治が生まれないことは、明らかです。

 16日の市民と野党の共同街宣には、SNSで開催を知った人らが詰めかけました。酒井氏らの訴えを聴いた男性(20)は「自民党は裏金問題を解決する意思が見えない。野党候補が勝利して自民党にダメージを与えてほしい」と話していました。

(「しんぶん赤旗」2024年4月18日付より)