輪島市で医療支援 医師・衆院候補 谷川智行さん

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 元日に発生した能登半島地震では、現地の医療機関にも大きな被害と混乱が生じました。日本共産党衆院比例東京ブロック候補で医師の谷川智行氏は、石川県輪島市の輪島診療所(全日本民主医療機関連合会加盟)で、医療支援にあたりました。現地の状況などについて聞きました。(嘉藤敬佑)


 2月2日から5日まで診察にあたりました。被災地のみなさんの役に立つことはもちろん、ほとんど休みが取れていない現地の医療スタッフに少しでも休んでもらいたいという思いで行きました。

現地で医療支援にあたる谷川智行氏(しんぶん赤旗提供)

 暖房がない避難所もあるなど厳しい避難生活の中で体調を崩す人も続出しました。新型コロナやインフルエンザ、胃腸炎が広がり、支援に入った医療チームが治療や感染対策にあたったとのことです。断水が続き、地震活動も続く中、おびえながら自宅で生活している人が、持病の悪化やめまいが出るなどの体調不良で受診されることも少なくありませんでした。

 輪島市内に九つあるクリニックのうち、三つで診察ができなくなっています。市立輪島病院も通常診察を制限せざるを得ない中、輪島診療所では、通常は休診の週末を含め、時間外にもできる限りの対応を続けていました。自らも被災し、避難所や診療所で寝泊まりしているスタッフも少なくありませんでした。

 地震で足にやけどをしたという一人暮らしの高齢者は移動が困難で、診療所のスタッフが送迎していました。他の人と話す機会が少ない中、「気にかけてくれて助かる」と話していました。

 診察時には、患者さんが今、危険と判断されながらも自宅で過ごしているのか、車中泊なのか、避難所なのかなど、どこで生活しているのかを丁寧に確認しました。

 すでに重症の患者さんや介護が必要な人は金沢市や富山県、遠方では名古屋市の病院に移っていました。金沢市内の医療機関と高齢者施設はひっ迫しており、治療後の退院先が見つからない状態が続いているといいます。

 避難者数減少に伴い、避難所の集約化が始まっていました。人の移動により感染症が広がらないか心配です。

 (1面のつづき)

この地で生きる希望を

人員・資源・資金 復興に回して

 心のケアも重要な課題です。金沢に避難している家族が自宅の片づけのため輪島市に向かっていたところ、輪島市に近づいた車の中で子どもがヘルメットをかぶったと聞きました。家具の下敷きになり、大きな恐怖を経験した子どもでした。

 明るく振る舞っている患者さんや、元気に仕事をされている医療・介護のスタッフも、大きな心的ストレスを抱えていると実感しました。早急な対応が求められています。

診療維持できず

輪島診療所の前に立つ谷川智行氏(しんぶん赤旗提供)

 市立輪島病院の河﨑国幸事務部長からも話を聞きました。多くの職員が被災し、院内に宿泊しながら業務に当たるスタッフも少なくないとのことでした。120人の看護師のうち25%が退職の意向を示しており、通常診察の維持は極めて困難といいます。子どもの学校のことなどを考え、金沢市への転居を決断した看護師が多いようです。

 市内の高齢者施設は軒並み運営できず、約400人の高齢者が輪島市に戻って療養する見通しが立たないとの話は衝撃でした。病院で治療を終えた高齢者の行き先もありません。施設スタッフの雇用維持も困難になっています。

 私が診療した患者さんは、施設で働いていた看護師と介護士の家族が職を失ったと語っていました。あらゆる業種で雇用が失われ人材が流出しています。政府は、医療・介護現場のリアルな実態をつかみ、これまでの枠にとらわれない支援を行うべきです。雇用調整助成金の助成率、日額上限の引き上げは待ったなしです。この地で生きていく希望を示すことを、改めて強く求めていきます。

ヘルパーも不足

 自宅や仮設住宅に要介護高齢者が戻った際、在宅療養を支えるヘルパーが圧倒的に足りないことを河﨑さんは心配していました。輪島市ではヘルパー事業所の閉鎖が続いており、私が在宅介護に同行した事業所も、在宅介護部門は赤字だとのことでした。

 政府が社会保障を削り、介護報酬を低く抑えてきたことの罪深さを改めて痛感します。2024年改定での訪問介護の報酬引き下げなどとんでもありません。

 現地での活動を通じ、大阪で万博をやっている場合ではなく、政府は被災地の復興に全力を挙げるべきだという思いをさらに強くしました。中止をただちに決断して、工事人員や資源、資金を被災地の復興に回せば力になりますし、被災者を励ますメッセージにもなります。

 「その土地で生きていきたい」という人たちの願いにこたえるのが政治の役割です。戦闘機や武器を買うのではなく、暮らしを支えることに税金を使うべきです。

(しんぶん赤旗2024年2月12日付より)