身体損なわぬ権利認めて LGBT法連合 不妊要件の判決受け会見

 「正規の仕事に就くことが出来ず、非正規で働かざるを得ません。生活するのに精いっぱいで、性別変更のための不妊化要件を満たす手術費用が貯められない負のループです」―就職の際に身分証明書提出を求められ、記載された性別と見た目の性別に相違があるために困難を抱える当事者の声です。「性的志向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」(LGBT法連合)は11月27日、会見を開きました。

 会見には当事者も参加し、「差別なく自分らしく生きられる」社会を希求する思いが語られました。身体上の性別と精神的な性別の相違から生じる日常の困難について訴えるとともに、性別変更のための手術で経済的だけではなく、「命がけ」と称されるほど身体に生じる大きな負担や不安も併せて訴えられました。戸籍上の性別変更の条件に不妊化手術を課している国がごく少数であり、「人権侵害」だとしてWHO(世界保健機関)などからも意見が発せられていることも公表されました。
 「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律(特例法)」の生殖不能要件を違憲とする最高裁判決(10月25日)以降、インターネットを中心に「公衆トイレ・浴場などに性同一性障害を理由に男性が入り込む」「男性器を有する人が入ってくる恐怖」など不安を訴える女性の声が大きくなり、性同一性障害への差別・偏見の助長やヘイトにまで発展。国会でも誤解を招きかねない質問がなされるなど、当事者の安全が脅かされる事態も生じています。
 LGBT法連合は特例法による性別変更手続きは専門医2人以上の詳細にわたる診断書の他、家庭裁判所の審判が必要であり「自称で容易に性別変更できるものではない」と強調。
 三成美保・奈良女子大学名誉教授は判決について「不妊要件の違憲判決は、憲法13条違反で身体を損なわれない権利を認めた」と解説。女性専用スペースの問題は「浴場などはトランスジェンダー(生物学的性と性自認が一致していない人)が安心して楽しむことが出来るよう施設の改善を、国や自治体が支援するべき」とし、「トイレや更衣室などではルールの工夫が必要となる」と具体的に述べました。さらに「トランス女性と称して施設を利用するものは刑法違反として罰するべきだ」と述べました。
 杉山文野さんは、「自分のパンツの中身を見ず知らずの人に説明しなければならない日々を想像して欲しい」と切り出しました。女性の専用スペースでの安全に対する不安の声に対して、「トランスジェンダーではなく、(一部の)男性が長年起こしてきた性暴力に対する社会全体としてのトラウマです。性暴力はジェンダーや同性・異性に関係なく起こりますが、多くは男性が起こしてきたものです。多くのみなさんが冷静な判断力を失うほど、性被害の不安があるということです」と訴えました。