不支給は「生存権の侵害」 コロナ支援金 不備ループ問題で国を提訴

 「支援金の不支給ありきで翻弄されたとしか思えません」―コロナ禍で国が支給する支援金を申請し不支給となった当事者が、怒りで声を震わせました。申請から支給まで民間委託で進められる中、不支給のため不利益を受けたとして国を相手取り法人2社が、損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、6月22日に記者会見を開きました。主催は「不備ループを解消する会」です。

 支援金は新型コロナにより売り上げが激減した個人事業主、中小法人事業者に対し中小企業庁が書式による申請を経て一時支援金や月次支援金を支給するもの。原告2社は指定の書式によって申請を行っていたのに、何度も資料などの再提出を求められる「不備ループ」に陥ったといいます。
 会見で弁護団の小部正治弁護士は「申請から支給に至るまで民間に委託されたことにより、専門性を欠いた臨時雇用の職員が肉声ではなく電子機器などでやり取りしたことで、請求者の要求や疑問に答えることもなかった」と強調。「いわば“輸血”が必要な患者が輸血されずに基本的人権を踏みにじられた。さらに憲法25条における生存権の侵害だ」と批判しました。
 会見には原告2社の役員らも同席。心情を吐露しました。昭和2年に創業したという有限会社ハマダヤ食器の代表取締役は、「申請も質問もウェブ上で文字のやり取りが基本でした。2021年4、5月には認められて支給されていた書類と同様なのに6月には不備とされ、意味がわからないので電話しても通じない」と語りました。
 「提出したはずの資料が再度要求されたこともあり、月が替わると同様の書類が認められないなど一貫性がありません」と実態を告発。「(審査過程で)6月になって『毎日、複数取引がない』という指摘がされましたが小売りではなく、引き出物などの卸売りがメーンなので実態を理解していない。ウェブ上での指示が夜間にあり、提出時間が翌日だったので帰宅後も事務処理を強いられた」と怒りをにじませました。

問題の指摘ない
 都内で営業する製本印刷会社の役員は「要求された書類は税理士など専門家に見てもらって提出してきた。不備の指摘は10回にとどまらないのに、どこがどう問題なのかという指摘もない。電話が通じず、やっと通じたと思ったら要領を得ない。ただの電話番でしかありません」と批判。「心労がかさみ体調を崩しどうしたらよいのかわからない。創業51年になる父が残してくれた会社を残したい」と訴えました。
 会見では、「支援金を出さないための対応なのかとさえ思う。でも負けたくない。つぶしたくないんです」と、当事者の思いが繰り返し語られました。