性暴力相談 3割増/東京 コロナ禍で拡大

(しんぶん赤旗より)

性犯罪・性暴力被害者をワンストップで支援する「性暴力救援センター・東京」(SARC東京)によると、同センターに寄せられた昨年1年間の相談件数が6539件となり、前年(4940件)の1.32倍に達しました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛のもとでの家族からの被害など、コロナ禍で性暴力被害が拡大しています。

SARC東京では、24時間体制で電話相談を受け付け、被害者の要望に応じて面接を行い、心身のケアや病院、警察、弁護士への付き添い(同行支援)を行っています。昨年の相談件数のうち面談・同行支援の件数は632件(前年432件)で、前年比約5割増でした。

内閣府発表の昨年4~9月の全国の性暴力被害の相談件数は、前年比1.15倍でした。

SARC東京の平川和子理事長は、「#MeToo運動」や「フラワーデモ」などを受け、性被害を相談する雰囲気が広がる一方、「10代女性を中心に、自宅で父親や親戚に性被害を受けたという相談が増えた」と指摘。「政府や行政は簡単に”ステイホーム”というが、加害者が家族にいる場合、自宅は安全どころか、最も危険な場所になっている」と警告します。

また、コロナ禍で生活が困窮した中高年層の女性が行政支援を申請し、相談する過程で、過去の性被害がトラウマになっていることが判明するなどしてSARC東京に相談が寄せられたケースもあります。平川氏は「ずっと誰にも言えず、支援の手が届かなかった性暴力の被害の実態が新型コロナ禍で明るみに出ている」と語ります。

防止・適切な支援へ/いまこそ刑法改正を

拡大する性暴力被害

平川氏は、家族からの性暴力などはコロナ禍以前から指摘されてきた被害の実態であり、適切な支援のためにも刑法改正が必要だと訴えます。

相談件数が4倍

平川氏は、2017年の刑法改正で、親や児童養護施設職員など加害者が監護者の場合の「監護者性交等罪」などが新設されたことは「一歩前進だった」と指摘。さらに、「監護者」の範囲拡大や、教師と生徒など地位や力関係を利用した場合の処罰規定、公訴時効(強制わいせつ罪で7年、強制性交等罪で10年)の一時停止や延長を求めています。

中高生向けに性の健康教育を行うNPO法人ピルコンの染矢明日香理事長は、2 月10日の参院国民生活・経済調査会で、昨年の休校措置以降、家族からの性暴力など同団体への10代の妊娠や避妊に関する相談件数が4倍化したと述べ、性的保護年齢(13歳未満)の引き上げを求めました。

DV(ドメスティックバイオレンス)被害者の支援を行う「全国女性シェルターネット」は声明(2月15日)で、配偶者・パートナー間の犯罪類型の新設を求めています。

こうした法改正の項目は、17年法改正で「積み残された課題」です。

国を動かす世論

法務省は昨年6月から「性犯罪に関する刑事法検討会」を開き、「積み残された課題」の是非を議論。その中心は現行法の強制性交等罪の構成要件からの「暴行・脅迫」要件の撤廃と、同意に基づかない性交を適切に処罰する「不同意性交等罪」の新設についてです。同省は、検討会では法の運用や解釈などで現行規定に問題があるとの認識で「一致している」と説明しています。

当事者は、恐怖や地位、力を利用する加害者に対しフリーズ(固まる)してしまい(心理的・社会的抗拒不能)、「暴行・脅迫」がなくても抵抗できない実態を告発してきました。

平川氏は、被害者が自分の受けた傷を「被害だ」と認識できることが相談と支援につながる第一歩だと述べ、「『暴行・脅迫』がないから相談しても仕方がないと思ってしまう被害者は多い。適切な支援のためにも『不同意性交等罪』は必要だ」と語ります。

支援団体などからなる「刑法改正市民プロジェクト」は2日、「不同意性交等罪」の具体的な条文案を示した6万8千人超(2月末時点)の署名を法務省に提出。性暴力の根絶と刑法改正を求める「フラワーデモ」は8日の国際女性デーに、同省前でのスタンディング・デモを予定しています。

被害者の願いに即した法改正を求める世論の高まりが国を動かしています。

(「しんぶん赤旗」2021年3月7日付より)