外環陥没 「異常続発、予見できた」 恐怖にふるえる住民

閑静な住宅街の日曜日、住民の不安が現実のものとなりました。東京外かく環状道路(東京外環)の地下トンネル工事区域の直上(調布市東つつじヶ丘2丁目)付近で10月18日、地表が幅5m、深さ5m陥没する事故が起きました。住民は原因の解明と工事の中止を求めています。    (菅原恵子)

気泡、騒音、振動つぎつぎ
東京外環は関越道大泉ジャンクション(JC)と東名高速を結ぶ16㌔㍍の距離を、市街地の真下を貫通する巨大な地下トンネルで、接続する計画。建設費が1㍍あたり約1億円以上との試算や沿線の環境悪化の懸念から、多くの住民が批判や不要論を訴えてきました。また、トンネル工事は地下40㍍以深の大深度地下で、地上地権者への補償はなく、同意を得ることもなく進められています。前回の都議選での争点にもなりました。
工事は「地上に影響を及ぼさない」として2017年、東名高速道路側から直径がビル3階の高さになるシールドマシン(トンネル掘削機)2基が並行して北に向かって発進。続いて2018年に関越道側から並行して南に向かって2基が発進しました。工事が進行するに従い、沿線住民からは異常が次々と指摘されました。
東名JC付近では2018年5月、シールドマシンの発進以来、野川(世田谷区域)にかかる大正橋付近で気泡の他、酸欠とみられる魚の死骸の発見や観測井戸から水があふれるなどの異常、工事ヤードに出水するなどの事態が続いてきました。住民の指摘に対し、国交省もNEXCO(高速道路会社)東日本・中日本も「工事との関係とはいえない」などと工事を強行してきました。
また、オープンハウスなどの説明会で「横浜市の首都高工事での地盤沈下や、博多駅前の地盤陥没事故を見ても不安です。緊急避難計画なども示されません」と訴える住民に対し、誠実な対応や説明もありませんでした。

避難準備の依頼も
事故は住民の不安が見事に的中した形になりました。事故を受けて住民は10月20日には調布市長と懇談。23日、国交省に向けて緊急申し入れを実施し、日本共産党の宮本徹、笠井亮両衆院議員と山添拓参院議員、曽根はじめ都議が同席しました。
事故現場付近の住民は「微振動がいまだにあり、ドキッとする。歩いていても地底に吸い込まれるのではと不安。これまでも、異常を訴えてきた。事故は予見できた」と訴えました。
別の住民は「20日午前中にNEXCOから『いつでも避難できるように準備して欲しい』と言われた」と告発し、家族が恐怖におびえる状況が語られました。
国交省は「深くお詫びする」としたものの「(工事前の)家屋調査と比較して応急的に対応し、不安を払拭する」として工事の中止や再考などには一切触れませんでした。

緊急の説明会求め
東京民報はこれまで東京外環道の大深度地下工事での異常を繰り返し報道してきました(表)。
事故直後の10月22日に取材すると、事故現場付近ではNEXCOの職員やJV(工事を施工する企業共同体)、水道事業者やガス会社の社員らが巡回し、物々しい雰囲気でした。事故現場裏の民有地では、水道管のジョイント(接続部)に不具合が生じ、緊急工事が行われていることを確認。
近隣住民は「壁がガタガタするという家もある。いつまで不安が続くのだろうか」とおびえていました。調布市長との懇談に参加した人は「事業者を招いて緊急住民説明会など、市でも出来ることを早急にして欲しい」と不安をあらわにしていました。
シールドマシンが掘削していた地層は土丹層といわれる硬質粘土層もありました。地震で揺れやすく、周辺は土砂災害危険区域に指定されています。環境地盤研究所の徳竹真人・地盤解析室室長は東京民報2019年9月9日号で、「地震で揺れやすい場所は振動が伝わりやすい」と指摘。「細かい揺れはさらに伝わりやすい。道路を使用するようになると、つなぎ目から起こる交通振動などが地表に伝わることは十分に考えられる」と述べていました。

「データを示せ」原田都議が質問
日本共産党の原田あきら都議は23日の都議会決算委員会で、「シールドマシンに掘削土の過剰な取り込みがなかったか、圧力などに異常はなかったか、管理基準値を超えることはなかったか、地表面高さなどに問題はなかったか、データを公表すべき」だとただしました。
三環状道路整備推進部長は「地表面高さのモニタリング結果の公表については国などの事業者が公表すべき。工事箇所の影響について住民に知らせることは重要であり、引き続き国に求めていく」と答弁しています。
また同日行われた、第2回東京外環トンネル施工検討委員会有識者委員会後のブリーフィング(報告)の席で、小泉純委員長が「(工事での)データを詳しく示して、わかりやすく説明してもいいだろう」と述べました。
「重要なデータをひた隠しに工事を進めているようにしか見えない」―。住民の不安に正面から応える姿勢が、国などを始めとした事業者に求められています。