【都教委】育鵬社版採択せず 侵略美化の教科書不使用 19年ぶり

2020年7月29日

来年度から使われる中学教科書の採択で、東京都教育委員会が都立の中高一貫校と特別支援学校について、侵略戦争を美化し憲法を敵視する育鵬社の歴史教科書・公民教科書を不採択にしたことが28日、わかりました。

都立学校から侵略美化の中学教科書がなくなるのは19年ぶりです。27日の会議で決定しました。

現在、都立の中高一貫校(10校)と聴覚障害・肢体不自由・病弱の特別支援学校中学部(22校)では全校で育鵬社の歴史・公民教科書が使われていますが、来年度からは育鵬社の教科書は都立学校では使われないことになります。

都教委は2001年に、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」が事実上編集した扶桑社の歴史教科書と公民教科書を、都立養護学校(現特別支援学校)の一部で採択しました。

扶桑社の教科書に対しては国内外に強い批判の声が広がっていました。
その中で、公立学校で扶桑社版を採択したのは都教委が全国初めてで、激しい抗議が起こりました。

都教委はその後、養護学校に加え、新設された都立の中高一貫校でも扶桑社の教科書を使用。
さらに扶桑社版の後継である育鵬社や自由社の教科書を採択してきました。

都民の間では侵略美化の教科書の不採択を求める運動が続けられていました。

大きな一歩~子どもと教科書全国ネット21の鈴木敏夫事務局長の話

それぞれの学校の特色を売りにしてきた中高一貫校で、他の教科では学校ごとにさまざまな教科書を採択していましたが、歴史・公民教科書では育鵬社など「つくる会」系を採択してきました。

生徒の教育にふさわしい教科書の選択ではなく、何らかの政治的思惑をうかがわせる教科書採択が行われていることに対し、批判が続いていました。

こうした約20年にわたる「つくる会」系教科書の採択に都立学校でいったん終止符を打つことができたことは、大きな一歩です。

日本の植民地支配やアジア太平洋戦争について歴史的事実をゆがめ正当化し、日本国憲法の基本原則を根本的にゆがめ、その価値をおとしめ、憲法改悪に誘導しようとする育鵬社の歴史・公民教科書や自由社公民教科書、生徒の内心を侵害し、数値による自己評価を求め、植民地支配を肯定的に描く教材まで載せている日本教科書の道徳の採択を許さない取り組みを、引き続き全国の市民、教職員、研究者、弁護士などの皆さんと全力で進めます。

(2020年7月29日付「しんぶん赤旗」より)