納めすぎた税金を取り戻す確定申告のポイントは?平石共子税理士に聞く

納めすぎた税金を取り戻す確定申告のポイントは?平石共子税理士に聞く
 
 確定申告というと、「自営業者のもの。サラリーマンには関係ない」と、思う人が大半でしょう。ところが、面倒でも当てはまる場合は確定申告をすれば、税金が安くなるケースもあります。平石共子税理士に聞きました。
(聞き手・菅原恵子)

 確定申告は前年度の所得を確定するものです。自営業者はもちろん、2カ所以上の事業所から給料を受けていたり、様々な控除(収入から差し引かれる金額)がある人は確定申告をする必要があります。
 サラリーマンや年金所得者の場合、年金機構や会社が所得税や住民税を源泉徴収(ことば)していますが、納めすぎている場合は還付されます。ただし、最初から税額0円の場合、還付はないのでご注意ください。
 
医療費控除は10万円以上?
 
 平成29年分の確定申告から医療費控除が変わります。セルフメディケーション税制が始まる一方で、今までの医療費控除もあります。どちらか一方しか適用になりませんので、世帯で当てはまる制度を選択します(図2)。世帯で合算した金額をおひとりだけ控除できます。
 セルフメディケーション税制は薬局やドラックストアで購入した医薬品で、パッケージに「セルフメディケーション税控除対象」と明記されたもののみが対象です。レシートにも記載があります(下写真)。購入金額の総額が12000円を超えた場合、超えた分が控除の対象です。
 医療費控除は医療機関での診察費・入院費の他、処方薬、通院費(公共交通機関、タクシー代。自家用車に関する費用は対象外)、医薬品、介護保険利用費の医療費部分、介護用紙おむつ代などが対象になります。基準は所得の5%または、10万円の低い方を超えた金額です。生命保険などで補てんされた金額は対象になりません。領収書のない交通費は、手帳にメモするなど記録が不可欠です。
 今年から医療費控除は領収書を添付せずに、明細書のみの提出になります。しかし、個人は領収書を5年間保管するという義務があります。捨てないように気を付けましょう。
 
親に仕送りしている人
 
 故郷に住む親に仕送りするなどをして、扶養している場合も(親の収入が一定の金額より少ない場合は)扶養親族とすることができます。
 ただし、きょうだいなど複数で金銭援助をしている場合はきょうだい全員が扶養控除できるわけではありません。あらかじめきょうだい同士で話し合って、誰の扶養にするのか決めておきましょう。
 
障害者控除の対象は
 
 障害者手帳などを交付されていなくても、障害者控除は可能です。介護保険の認定書がなくても、年間6カ月以上寝たきりなど、一定の状態なら障害者控除が可能とされています。
 また、16歳未満のお子さんに障害がある場合も障害者控除は可能です。
 
学生バイトの税金は
 
 所得が103万円以下の場合は親の扶養親族でいられます。学生の場合はプラス27万円の勤労学生控除があるので、申告をしていれば130万円までは所得がゼロになり、所得税の支払い義務もありません。
 ただし、世帯で見た場合、103万円超の給与を得てしまうと、親の扶養親族ではいられないため、親の納税額が増えます。家族単位でみると損になるケースも。給与所得が130万円以上の場合、自身で健康保険の加入が必要です。
 130万円を超えた場合は、勤労学生控除は受けられません。所得税と住民税、社会保険料を支払うことになります。
 アルバイト先が2カ所以上の場合、確定申告が必要です。発行された源泉徴収票や給与明細を確認してください。「源泉徴収税額」の欄に金額が記載されていれば税金を納めています。確定申告をすることによって税金が戻ってきたり、親の扶養親族でいられます。
 この場合の学校は小中高の他、大学、専門学校、公的職業訓練校です。英会話教室などの私塾は対象外です。
 
シングルマザー・ファザーは
 
 いずれも合計所得500万円が前提になります。
 女性の場合は、①夫と離別や死別または生死が明らかでない場合で再婚せずに、子どもや親族を扶養している場合は、寡婦控除の「特定の寡婦として35万円」の控除ができます②夫と離別や死別または生死が明らかでない場合で再婚しない場合は「寡婦控除27万円」が適用できます。
 男性の場合、妻と離別や死別または生死が明らかでない場合で再婚せずに子どもを扶養している場合「寡夫控除27万円」が適用となります。未婚の場合、あるいは内縁関係や事実婚の相手がいる場合は対象となりません。
 
ゲリラ豪雨の被害は
 
 火災、空き巣、泥棒などの被害の他、ゲリラ豪雨での床上浸水やがけ崩れで痛い出費があった場合には、雑損控除の適用となる場合があります。
 買い換えた家財道具や工事費などの領収書を揃えて、被害(被災)証明を準備して専門家や税務署に相談してください。

 確定申告は自身がどのくらい税金を納めているのかわかる良い機会です。納めた税金がどのように使われているのか見ていくのも、納税者の権利です。
 はじめは難しいかもしれませんが毛嫌いせずに、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 
東京民報