「しんぶん赤旗」インタビュー:都知事選野党統一候補・鳥越俊太郎さんに聞く

東京から憲法守る波を

東京都知事選(31日投票)に野党統一候補として立候補したジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)に、政策と、都政に臨む決意を聞きました。

(聞き手 岡部裕三、細川豊史 写真 縣章彦)


非核平和都市宣言を提案

―憲法を守り、東京都が非核平和都市宣言をするという政策提案と演説が好評ですね。

東京は一つの国と同じくらいの存在感を持っていて、その東京が何を言うかは世界中から注目されます。オバマ米大統領がプラハで「核のない世界を目指す」と演説してノーベル平和賞を受賞したように、世界中が「核のない世界」を望んでいるんです。

日本は、広島、長崎、そして福島と、3度にわたって核の被害を受けました。東京が非核平和都市宣言をできなくてどうするんだと言いたいですね。

憲法の問題ですが、日本は71年間一度も戦争をしていません。これは日本の近代史上初のことです。それまではだいたい20年に1度戦争をして、多くの人命が失われました。

こういう経験から、一切戦争はしない、平和を守り抜くと固く誓い合って憲法をつくりました。今、自民党は「憲法改正草案」で緊急事態条項という、とんでもないものまで出してきています。東京都が憲法を守るんだという旗を立てて、東京から日本中に憲法を守る波を届けていきたい。

大型公共事業でなく暮らしにお金を回す

家賃補助で住まいを確保

―子育て支援、特に保育園の待機児童解消や、家賃が高過ぎて暮らせない、都は支援策をという要望が強いですね。

少子高齢化の中、今のままでは、都民の命、健康、生活を守る仕組み、たとえば介護や保育などが困難に直面してしまいます。緊急に手を打たなければなりません。私は緊急課題として、東京都の約8500人の待機児童をゼロに近づけたいと思います。

住宅問題も、暮らしの場ということで重要です。東京は家賃が高くて住めないという状況があります。都が家賃補助を出すなどして、暮らしの場を確保したい。

大型公共事業にお金をかける時代は終わったと思います。これからは人にお金をかけて経済を循環させる時代。都民の需要があるのはどこか。人の暮らし、命、健康、そういうところにお金をかけてこそ経済のあり方が見えてくると思います。

築地市場移転計画は延期も

―築地市場を豊洲に移転し、11月7日に開場する計画について、仲卸業者の過半数は、年末商戦を控えた多忙な時期の移転は延期してほしいと都に要望していますが。

土壌汚染の問題もありますから、きちっと精査しなければなりません。問題があれば移転ありきでなく、いったん中止すべきです。大多数の業者が喜んで新しいところへ行きましょうという気持ちになるようにしなければなりません。

年末に向かって築地市場が一年で一番忙しい時期に、移転という、商売を根本から変えることは問題だと思います。当事者の方々から、私の耳でちゃんと話を聞いて、納得がいく形で進めます。(開業日を)先延ばしにしてくださいという声が多ければ、そうならざるをえないと思います。

五輪費用縮減へ オープンに

―2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の膨脹が大問題になっています。

私は、費用を縮減してできるだけコンパクトに、都民、日本全体がそれならいいと思えるオリンピックを迎えたいと思います。

前提となるのは情報公開だと思います。どこで誰が話しているのかわからないまま、費用が2兆円、3兆円、という話が出て、国民はあっけにとられています。これではもろ手を挙げて歓迎する気持ちになれないでしょう。

市民の納得感を得るためには情報公開ありきだと思います。五輪をやるのに秘密はいりません。全部オープンにして、これでどうですかと国民に問いかけて進めることが大事です。スポーツの祭典が、利権まみれ、カネまみれになるようなことはあってはいけないと思います。

首都直下地震の防災対策は

―首都直下地震の可能性が増す中、防災対策も大切ですね。

熊本の地震でも火災が、それも電気系統から多く発生しました。これを食い止めなければなりません。揺れを感じて自動的に電気を止め、漏電による火災を防ぐ感震ブレーカーの設置も進めていくことが必要だと考えます。

「体内年齢」48歳 今が一番健康

―立候補会見でも、がんを克服して、今が一番健康だとおっしゃいましたね。

がんになったおかげで、自分のこれまでの生活を見直して、食事、睡眠、運動のバランスを整えました。最後の手術後7年たって完治し、健康に生きています。このようにがんを克服して生活をしている人はいっぱいいます。

体重計で「体内年齢」が測れるんですが、私は48歳です。がんになる前より、今が一番健康なんです。

(「しんぶん赤旗」2016年7月21日付より)