先日は東京・新宿の末広亭で「がまの油」をやりました。こう薬売りの「がまの油」といっても最近じゃ、知らない人が多いんです。塗り薬の売り口上を現代版にしてやったら、圓蔵(えんぞう)師匠から昔からの口上もあったほうがいいといわれました。昔の口上と現代版口上の両方を並べました。
噺(はなし)が受けるかどうかは、時代に合うか合わないかです。合わないと古典も死んでしまうんです。
若いころに古典を130覚え、二つ目から新作に取り組み、その数300以上になります。なかでもキャラメル菓子のネタ「グリコ少年」は、甘いものに飢えていた少年時代の思い出で、随分受けましたね。しかし、いまは甘いものに飢えてないし、グリコキャラメルもなかなかないので若い人にはうけません。それで今は「牛肉少年」をやってます。ハンバーガーショップや牛丼屋がネタです。大衆芸能は今がなきゃダメなんです。古典でも今とつながっていないとダメですね。
噺家は体力勝負なので、ぼくは健康には人一倍、気を遣っています。
1日1万歩以上歩いて軽い筋トレもしてます。下の歯はインプラントを7本も入れた。上はほとんど総入れ歯ですけど、かむ力はしっかりしています。最近じゃ、ぼくは肉食系になりましたね。ご飯は少なめで野菜はたっぷり。これが大きい声の秘けつでしょうか。
時代の空気といえば、東日本大震災で初めて、落語家が手弁当で復興支援の寄席をやって募金を集めました。(当時の)会長の小三治師匠から「やってよ」といわれてね。ふだんチャリティーというと営業ですが、このときは噺家がみんなが気持ちを一つにしてやったと思います。
赤旗まつりの一番の思い出といえば紙芝居ですね。自転車を引いて、お菓子を売ったりしました。子どもも親も喜んでくれて温かくて、とてもいい雰囲気でした。
前回から屋内の体育館ですが、夕立でお客さんがいなくなることもないし、野外のように、いろんな音が入らないので集中できるからいいじゃないですか。
前回の赤旗まつりではグリム童話をテーマにし、シンデレラが、最後、桃太郎になると言う「シンデレラ伝説」をやりました。今回も、まつりらしい楽しく笑える噺をやりたいですね。
(武田祐一、写真も)
(「しんぶん赤旗」2014年9月19日より)