教員1割超 自衛隊で研修 防衛省が募集活動に利用

都教委 高校など対象に実施

 東京都教育委員会は勤務10年超の都立学校の教員への「公務員としての資質向上」のための校外研修先の一つとして、自衛隊を紹介し、研修の対象教員の1割以上が自衛隊を研修先に選んでいます。都は「任意」で「選択制」だとしていますが、研修先として都が紹介する企業等のうち自衛隊が定員の4分の1を占めています。自衛隊は教員への研修を生徒への隊員募集に利用している実態があります。(染矢ゆう子)

定員全体の24%

 都教委によると自衛隊の研修は「中堅教諭等資質向上研修1」の「選択研修」の選択肢の一つとなっています。「研修1」は勤務が10年を超えた公立学校の教員が対象です。都教委は高校や特別支援学校など都立学校の教員に、学校以外の職場やボランティアを体験する「選択研修」の2日間の実施を定めています。自衛隊での研修は2005年から20年間続いています。

防衛人事審議会処遇・給与部会(4月25日)の会議資料。自衛隊東京地本が都教委の研修を組織的募集の一つと位置付けています

 都が今年度の対象の教員に配布した「選択研修希望調査票」によれば、銀行やメーカーなどの大手企業や都立施設など15カ所520人の定員のうち、「防衛省自衛隊」の定員は125人と24%を占めています。

 同調査票によると都教委は研修先として希望する企業等を優先順位をつけずに5カ所まで選ぶよう求めています。今年度は7、8月の4日間で65人が自衛隊の研修に参加。約530人の対象教員の12%にあたります。「ここ5年間も十数%で推移しています」と担当者は話します。

 都教委は研修に自衛隊を入れる理由を「防災について学ぶため」としています。

 しかし、防衛人事審議会処遇・給与部会(4月25日)で自衛隊東京地方協力本部が出した自衛官募集業務を説明する資料では、この研修を「学校等、自治体以外の組織とも連携」した「組織的募集」の一例にあげています。

広報官と名刺を

 自衛隊東京地本によると研修の中身は自衛隊についての説明と、災害の場面を想定して幹部自衛官として部隊を動かす計画をたてるというもの。その後、勤務校のある地域で自衛官募集を担当する広報官と懇談します。広報官とは名刺を交換し、1対1などで懇談します。就職希望の高校生がいれば、「正しい情報を入れていく」(同地本担当者)としています。

 実際に参加した教員は、広報官から「(生徒の)適性に合わせて資格もいろいろ取得できる」「万が一適性が無くても、退官後の再就職もきちんと斡旋(あっせん)してくれる」との説明を受け、「今後、進路に悩んでいる生徒がいたら薦めてみようかとも思う」とブログに記しています。

 同地本によると、懇談で提出を求めた教員の名刺をもとに、後日高校に電話をかけ、「あいさつする」ことも行っています。


 都教委の担当者は「募集活動に使われるのであれば研修の趣旨から外れている」と話し、訂正を求めていくとしています。


権利条約の選択議定書に違反

日本共産党の清水とし子都議会議員の話 防衛省が教員の研修を自衛隊勧誘の場に利用するのは、とんでもありません。日本も批准する子どもの権利条約「武力紛争における児童の関与に関する選択議定書」では、18歳未満の人について、志願者が軍務における任務について十分な情報提供を受けていることを定めています。自衛隊の主な任務が軍事行動を伴う防衛出動である説明を抜きに生徒に自衛隊への就職を薦めるよう教員に広報することは、この選択議定書にも違反します。

 自衛隊の主な任務は軍事行動を伴う防衛出動であり、平和と民主主義を生徒に教える教員の研修先として不適切です。自衛隊は、都道府県知事の要望等により、独自の災害救助活動を行うため、自衛隊との連携は防災の研修としてもふさわしくありません。

(「しんぶん赤旗」2025年9月25日付より)

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