定時制だから学べる 教育関係者が存続求め集会

 東京都教育委員会の都立夜間定時制高校7校廃止案に対し、教育関係者が6日、存続を求める集会を都内で開きました。都教委は廃止の理由に「極端な小規模化により学習環境に課題が生じている」ことをあげます。集会では、在校生や元教師から「少人数だから生徒に合わせた支援ができる」との意見が相次ぎました。

東京・7高校夜間廃止案

 廃止方針に名前があがる、都立小山台高校(品川区)夜間定時制に在籍する小堀颯大さんが発言。中学で不登校になりましたが、高校では働きながら楽しく学んでいるといいます。「年齢、国籍関係なくいろんな人が学べるのが魅力。廃止するのはあり得ないと思う」と話しました。

 世田谷区の夜間中学の教師だった中川恵理さん(66) は、卒業生が進学先に近隣の小山台や桜町(世田谷区) の夜間定時制を選んでいると指摘。「夜間定時制を廃止するのは、夜間中学の生徒に『もう勉強するな』と言っているのと同じ」と批判しました。

 夜間中学の外国籍の卒業生が定時制高校に入学した際、進学先の教師が夜間中学に来て生徒の事情を聞き引き継いでいったエピソードを紹介、「丁寧な指導で高校を卒業することができた」と話しました。

 都教委は立川(立川市)の募集を25年度に停止。26年度には小山台、桜町、大山(板橋区)、北豊島工科(同)、蔵前工科(台東区)、葛飾商業(葛飾区) の6校の募集を停止する方針です。代替校にあげるチャレンジスクールには受験者が集中し、多くの不合格者が出ています。

 集会を主催した「夜間定時制の存続を求める連絡会」の河合美喜夫さんは「計2万1776筆の存続署名を都教委に提出し要請した」と報告しました。

 日本共産党都議が参加、清水とし子都議は「都議会第3回定例会が正念場。力をつくす」とあいさつしました。

他から守るため あきらめない/東京大学教授 本田由紀さんの発言

 集会での、本田由紀・東京大学大学院教授(教育社会学)の発言を紹介します。

◇   ◇   ◇

 少子高齢化で子どもが減る中、学校では不登校・自殺・いじめが急増し、心身を病み休職する教員も増えています。次世代を一層大事に育てなければならないはずです。

 しかし文部科学省は、教員に過重・長時間労働を押しつけ、学習指導要領で現場に無理を強いています。

 つらい体験をしてきた生徒にとって、夜間定時制は社会や人間への信頼を取り戻す場です。家から比較的近く、少人数のため教員から密に指導を受けることができ、専門学科もあります。

 文科省は全国で学校統廃合を進めます。その論拠は、小規模の学校はよくない、一定の人数が確保できなければ教育効果が低いという適正規模論、切磋琢磨(せっさたくま)論です。なんの科学的根拠もありません。

 日本の教育の象徴的な一断面が夜間定時制の廃止です。かろうじて残されている宝を守るため、あきらめるわけにはいきません。

(「しんぶん赤旗」2025年9月9日付より)

タイトルとURLをコピーしました