危機取り除く外交努力を 衆院予算委

日本共産党の田村智子委員長は11日の衆院予算委員会で、高市早苗首相が7日の同委で「(台湾有事は)存立危機事態になりうる」と答弁したことを撤回するよう求め、首相がやるべきは「危機をあおることではなく戦争のリスクを取り除くための外交努力だ」と主張しました。(論戦ハイライト)
首相は7日の同委で、台湾有事を巡り「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になりうるケースだ」などと発言。10日の同委では、特定のケースを想定したことについて「この場で明言することは慎もうと思う」と弁明しました。
田村氏は「一国の総理大臣が国会の場で、台湾という地域をあげ、有事の具体例を想定し発言すること自体が軍事的危機をあおることになる」と指摘。7日の答弁を撤回すべきだと求めましたが、首相は「政府の従来の立場を超えて答弁したかのように受け止められたこと」を反省しているだけだとして「撤回の必要はない」と拒否しました。
政府が「存立危機事態」と判断すれば、日本は攻撃も侵略も受けていないのに、海外での自衛隊の武力行使が可能になります。田村氏は、外交努力の重要性を指摘し、日本共産党は戦争の心配のない東アジアをつくるための「東アジア平和提言」を提唱していると強調。中国にも、2008年の日中首脳会談での「互いに脅威とならない」との合意に基づき、双方が緊張と対立を悪化させないよう自制すべきだとした上で、台湾の問題についても▽台湾住民の民意を尊重する▽中国による台湾への武力行使や武力による威嚇に反対する▽日米は軍事的に関与すべきではない―ということを繰り返し伝えていると説明。「軍事的緊張を高める言動ではなく、戦争のリスクを取り除くための外交こそ必要だ」と主張しました。
しかし、日本では、北東アジアの軍事的緊張を高める大軍拡が進み、外国の領土を攻撃できる長射程ミサイルの配備計画が進んでいます。田村氏は、日本初の配備地とされる熊本県では、住民が不安を抱き、世論調査でも反対が多数だと強調。にもかかわらず「防衛省は住民説明会すら開いていない」と追及しました。
首相は「(説明会は)防衛大臣の判断に任せたい」と述べ、小泉進次郎防衛相は「県知事と市長には説明し、九州防衛局に問い合わせ窓口を設置している。説明会の実施予定はない」などと答弁。田村氏は「説明すればするほど(住民が)不安になるからできないということだ」と指摘しました。首相は加えて、日本のミサイル配備は「全然足りない」と述べ、さらにミサイル配備を加速する考えを示しました。
高市政権は、軍事費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げを今年度内に補正予算で行うと表明しています。田村氏は予算額の内訳をただしましたが、首相も防衛相も具体的な数字を示しませんでした。田村氏は「(2%の)数字ありきだ」と批判し、2%の目標達成を急ぐ根源には米側の要求があると指摘。トランプ政権によるGDP比3・5%への軍事費増額要求を拒否するよう迫りましたが、首相は「ニーズがあるものにしっかり予算をつけていくのは当たり前」などと述べ、3・5%への増額を否定しませんでした。
(「しんぶん赤旗」2025年11月12日付より)

