深化した“本気の共闘” 都議選レポート 日野市(2人区) 16年ぶりに議席奪還

2021年7月30日 , ,

先の都議選(7月4日投票)で、2人区の日野市で共産党が当選したのは2005年以来、実に16年ぶりの快挙でした。三つ巴のたたかいで優勢と言われた自民現職を破り、なぜ当選を勝ち取ることができたのか―。キーワードは共闘の「深化」でした。
(長沢宏幸)

「市民と野党の共闘をずっと守り、発展させてきたことが実を結びました」。当選確実を決めた清水とし子さんが開口一番に語った喜びの言葉です。その言葉を裏付けるように、選挙事務所には無党派市民と言われる「市民応援団」の人たちが詰めかけ、喜びを分かち合いました。

市民応援団の結成
「日野市の共闘は、たんなる『エールの交換』ではなく、『本気の共闘』でした」。清水選対の中野あきと本部長(日野市議)がこう語るように、日野市では他の選挙区ではみられない、共闘の姿がありました。
その一つが「市民応援団」です。昨年7月の都議補選でつくられた「市民選対」、4月の市長選候補となった有賀精一・前市議の支援団体(自治のまちをめざす会)、市長選をたたかった法律家らが、いっしょになって結成したものです。独自事務所を構え、市民の自主性を生かした活発な活動を展開。独自ビラを作成、配布した他、共産党作成のビラ配布や選挙ハガキも分担しました。
自治のまちをめざす会のメンバーの中には当初、共産党と距離を置く市民もいたといいます。しかし市長選を共にたたかった清水さんを、会として応援することを決定。市長選結果の報告とともに、そのことを知らせるビラを全戸配布しました。選挙本番では、市内で最も人通りの多いスーパー前で連日スタンディングを行い、対話形式で支持を広げました。
清水さんの街宣には日本共産党、立憲民主党、社民党、新社会党ののぼりがずらりと並び、各党の国会議員や近隣市の野党市議、無所属市議が応援にかけつけました。有賀氏は清水さんにつきっきりで支持を訴えました。中野さんは「本当に気持ちのいい共闘ができました。ここまで幅広い市民と野党の共闘を実現できたのは、革新市政時代からの市民との共同の積み重ねがあったからです」と言います。

分断攻撃乗り越え
同市の市民共闘の歴史に詳しい中谷好幸氏(元共産党市議)は、その画期となった出来事として「日野市民連合」の結成、その後の2017年総選挙で「市民と野党の共闘」を守り抜いたこと、20年7月の都知事選と同時に行われた都議補選、そして今年4月の市長選の4つをあげます。
17年総選挙では、共闘の一翼だった民進党が、小池百合子知事が立ち上げた「希望の党」に突然合流。その“政変”で、21区では社民党の新人候補を短期間に擁立することになりました。それでも「ギクシャクは生まれたものの、共闘を守りたたかい抜いた」(中谷氏)、選挙になりました。
そして「日野市民連合」が中心となって次期衆院選(東京21区)を見据えた共闘が進む中で迎えた都議補選。自民党との一騎打ちとなり、立憲民主党の21区予定候補となった大河原雅子衆院議員(元生活者ネット都議、2017年総選挙で比例北関東ブロックから初当選)を支援する有力者を含む幅広い市民から、清水候補を「市民と野党の共同候補」として応援するよう各野党への働きかけが行われたのです。
これに社民党、新社会党、大河原議員が応えました。当時、共産党は21区に予定候補を立てていましたが(後に自主的に取り下げ)、大河原議員は初めて共産党の候補者カーに乗り込み、「市民と野党の本気の共同候補、清水候補の支持を」と連日訴えました。市民もお金を出し合い、「市民選対」事務所を立ち上げ、ポスター張りやビラ配り、選挙本番では政党カーを独自に運行するほど熱が入りました。
中谷さんは「党派選挙でありながら、共産党と市民選対という2つのエンジンを持って推進する選挙となった」と振り返ります。
ところが、市の区画整理事業の補助金詐取など副市長の不正問題が最大焦点となった市長選で、自公推薦の現職候補と無所属の有賀精一市議(当時)との一騎打ちとなったのに、立憲市議が自公推薦の現職市長側につくなど、市民と野党の共同は危機に直面しました。しかし市民と他の野党は共闘を貫き、最終盤では立憲の国会議員が有賀氏応援に駆けつけ、補選に出た立憲市議候補も有賀支持を表明するなど、幅広い市民と野党の共同が実現。結果は破れたものの1865票差の大善戦で、陣営の確信となるものでした。

次のステージへ
中谷氏は「日野市の市民と野党の共闘は、激しい共闘分断とのたたかいでもありましたが、その攻撃を乗り越えて、より強固で幅の広い市民と野党の共闘として発展した。それが今回の都議選勝利に結実したのです。党派を超えた政党と市民が力を合わせてたたかい抜いた意義は小さくない」と強調します。
開票日に清水事務所に駆けつけた有賀さんは当確が出た直後、「日野市の不正を都政の場で追及してほしい」との期待の次に語ったのは、「共闘の選挙をさらに広げ、国政選挙の勝利、そして市政刷新にもつなげたい」との意気込みでした。政権交代に向けた日野市の「市民と野党の共闘」は、次のステージへ、さらなる深化を遂げそうです。