届かぬ協力金 原因は〝東京ルール〟/「赤旗」日曜版報道受け申請前倒し

(写真提供:しんぶん赤旗)

25日告示(7月4日投票)の東京都議選で、営業時間短縮や酒類提供禁止など自粛を要請されている飲食店への協力金支給の遅れが重大問題になっています。4月前半分の協力金でみると、埼玉県が9割支給しているのに、都はゼロ(2日時点)だと「しんぶん赤旗」日曜版20日号は報じています。

都内の飲食店は、都独自の時短要請が始まった昨年11月28日以降、200日超も通常営業できない状況が続いてきました。協力金支給の遅れは、廃業につながりかねません。

ところが、東京都では6月に入っても、4月前半(1日~11日)分協力金の支給率がゼロ%でした。同じころ、埼玉県では支給率が9割を超えていました。(表)

支給が遅れる最大の原因は、協力金申請の受け付け開始が遅いことです。東京都では4月前半分の受け付けが、要請期間の終了から50日後に始まりました。

なぜ、受け付け開始が遅いのか―。編集部の取材で明らかになったのは、“申請期間を重ねない”という都独自ルールの存在です。

協力金の申請は自粛要請の回数だけ、それぞれ申請が必要です。埼玉県では毎回、期間終了翌日に受け付け開始です。ところが、都は前の申請の受付期間が終わるまで、次の申請を受け付けないというのです。

このルールを続けると、6月20日までの協力金は受け付け開始がさらに遅れ、約70日後の8月末になります。都産業労働局は「今まで通りなら、(約70日後は)その通りだ」(担当者)と認めました。

同じルールが原因で、東京都では申請の受付期間も約1カ月間と短くなっています。埼玉県のように1カ月半などにすると、次の受け付け開始がもっと遅くなるからです。

都は、こうした申請受け付け・審査などの事務を、競争入札なしの「特命随意契約」で大手広告代理店・博報堂に委託しています。

委託費の総額は昨年4月から今年3月までの契約20件で計約98億円。4月以降の契約額を都は未公表(6月18日時点)ですが、これを含めると100億円を優に超えます。

都議選で日本共産党は、協力金の手続きの簡素化、迅速な支給、対象事業者の拡大などを訴えています。

 日本共産党都議団は、事業者から寄せられた声をもとに、「迅速化」など協力金支給の改善を求めてきました。

◇日本共産党都議団の申し入れ(5月12日、抜粋・要約)

▷直接、間接に影響を受ける全事業者への支援。国の一時支援金の上乗せ・横出し

▷協力金対象外の事業所に中小企業応援金(仮称)を支給

▷協力金を事業規模に見合った額に

▷協力金等は、申請を簡素化し、体制を強化して迅速に支給

▷協力金等を日割りで支給

▷期限内に申請できなかった事業者に遡及(そきゅう)して協力金を支給

批判かわしに小池知事躍起

日曜版報道を受けて、東京都の小池百合子知事は18日の会見で、申請受け付けの前倒しを発表しました。

編集部が遅れの原因と指摘した“申請期間を重ねないルール”を撤回。▽4月12日~5月11日分の受け付け開始を6月30日から同21日に変更▽5月12日~31日分と、6月1日~20日分は7月中に同時に受け付け開始―です。

小池知事は、支給遅れの批判をかわそうと躍起です。

都産業労働局は日曜版20日号の印刷が始まった翌17日、協力金の支給済み店舗数や支給率を「今後は非公表。取材にも応じない」(担当者)と方針転換しました。

小池知事は18日の会見で、支給率にかわる数字として「処理率」を披露。これは、申請の審査が完了した割合を示すものです。実際に協力金が支給されるのは審査完了から約1週間後のため、処理率は支給率よりも高い数字になります。“低い支給率を隠そう”という姑息(こそく)なごまかしです。

(2021年6月21日付「しんぶん赤旗」より)