共産党 五輪中止しコロナに集中を 強行を後押しの自民・公明

都議会が閉会 開催巡り論戦
 都議選(25日告示、7月4日投票)前、最後の都議会定例会が7日閉会しました。コロナ禍での東京オリンピック・パラリンピックの開催を巡って、中止しコロナ対策に集中すべきとする日本共産党、小池百合子知事とともに開催に突き進む自民、公明両党との対決が鮮明になりました。7日の最終本会議では、五輪中止を求める陳情が採決され、共産党、立憲民主党が賛成しましたが、自民、公明、都民ファーストが反対し、不採択としました。
 「都民の命を守るため今夏の五輪開催は中止を決断し、コロナ対策に集中すべきです」。本会議代表質問(2日)で、小池知事にこう迫ったのは日本共産党の、そねはじめ都議(北区選出)です。
 小池知事は所信表明で、感染力が強い変異株が広がり、ワクチン接種が遅れている下で、国内観客を入れる形で五輪を開催する方針を表明しました。

 そね都議はこれに対し、「世界各国から10万人もの選手と大会関係者が集まる五輪大会を7月末に本当にできると思っているのか」「(新聞ルモンドが書いた)『変異株の祭典』になりかねないのではないか」と追及しました。
 さらに、世論の6~8割が五輪の延期・中止を求め、公衆衛生の専門家も「五輪のコロナ対策は万全と言えず、開催できる状況にない」と声を上げていることを示し、「五輪による感染拡大はないと断言できるのか」とただしました。小池知事は「安全・安心な大会の開催に向けて、着実に準備を進めていく」と、開催強行を明言しました。
 自民党は代表質問で「関係者が一枚岩となり、最後の総仕上げに取り組むべき」、公明党は「安全な大会開催に向けた道筋を、数値を含め明確に示すべきだ」と主張し、小池知事を後押ししました。昨年の開催延期後も開催を支持してきた都民ファーストの会は、中止・延期の世論の広がりの中で、「再延期」に言及せざるを得ませんでした。

観戦に児童ら90万人を動員
 そね都議は、都内の公・私立幼稚園から高校までの子ども90万人を動員する五輪観戦は「やめるべきだ」「感染防止のため東京に来るなと言いながら、五輪のためには正反対のことをしている」と批判。コロナから都民の命を守る責任と権限は知事にあるとし、五輪中止を重ねて求めました。
 さらに「大会の感動と興奮を共有する」ことを目的に、多くの人を集め、大型ビジョンの映像で盛り上げる「ライブサイト」について、「『人流抑制』という知事自身の方針に反しているのではないか」と、ただしました。
 ライブサイトを巡っては、批判を受けて都内の2つの会場のうち、代々木公園(渋谷区)については、ワクチン接種会場に変更すると小池知事が表明しています。しかし中村倫治オリンピック・パラリンピック準備局長は「安全・安心な運営ができるよう準備・調整していく」と答えました。

限界の事業者 独自の支援金を
 そね都議は代表質問で、コロナ対策の5つの提案①五輪を中止しコロナ対策に集中する②ワクチン接種と大規模検査の促進③都立・公社病院の独立行政法人化の中止④事業者への十分な補償⑤コロナ危機から雇用と暮らしを守る支援―を行いました。
 そね都議は長引く人流抑制、繰り返される休業・時短要請などで崖っぷちに立たされる事業者から、「もうもたない」「助けてほしい」との声があふれていることをあげ、「自らの痛みとして肌身に感じているか」と、認識をただしました。
 その上で、小池知事がひたすら努力と忍耐を求めるだけで不十分な協力金さえ支給が遅れ、支援どころか罰則で脅していると批判。「国に対して十分な補償と持続化給付金、家賃支援給付金の再開を求め、都独自に『中小企業応援金』を支給するなどの支援を強化すべきだ」と訴えました。
 小池知事は事業者の深刻な実態の認識については触れず、「事業を継続できるよう適切に支援する」と答えました。
 また文化・芸術分野でも、都は科学的根拠を示さずに休業要請し、協力金は支給しておらず、5月に専決した補正予算や今回提案の補正予算案にも、文化・芸術関連は1円も組まれていないと指摘。団体維持や生活を支える「特別給付金」などの支援を求めました。

生理の貧困対策 全都立高で配備へ
 そね都議は、コロナの影響による解雇・雇い止めが都で累計2万3000人に及び、中でも非正規労働者に深刻な影響が出ていると強調。コロナ危機から雇用と暮らしを守る支援として、非正規の実態調査と支援の具体化や、国民健康保険料の子どもの均等割の軽減拡大、ひとり親家庭や若者・大学生への支援強化、生理の貧困対策などを求めました。
 さらに、小池知事は都市計画道路について見直すべきは大胆に見直すと言ってきたのに、今年度予算に900億円もの巨額を計上していると指摘。不要不急の大型開発を抜本的に見直し、「コロナ危機から都民を守り、ケアに手厚い東京をつくる仕事に思い切って振り向ける」よう提案しました。
 吉村憲彦福祉保健局長は、国保料の軽減について「国が責任をもって対応すべき」として拒否。「生理の貧困」対策については、都立学校7校で生理用品を配備しており、9月からの全校実施に向けて配備を進めていると答弁しました。

ワクチン接種 迅速な推進求め
 そね都議はワクチン接種を安全、迅速に進めること、無症状感染者を把握するPCR検査を徹底することを提案。医療従事者へのワクチン接種は都内57万人のうち31万人にとどまっているとして、いつまでに接種を終えるのかただしました。
 また、高齢者の接種で「予約が取れない」「会場が遠い」などの声が出ていることを示し、「区市町村と連携し、正確でわかりやすい情報を提供し、全世代の希望者全員に安全、迅速に行き渡らせることが必要だ」と強調しました。
 小池知事は「医療従事者は今月中には接種を完了する予定ではあるが、さらなる前倒しに向けて取り組んでいく」「全区市町村で迅速、円滑に接種が進むよう適切に対応する」と答えました。

増やした検査能力 都民のために使え
 そね都議は、共産党の要求を受けて都がPCR検査能力を1日9万7000件に広げたものの、実際の検査件数は1日1万6000件にすぎないと指摘。都が五輪選手に毎日5万~6万件の検査を行うとしたことに触れ、検査能力を都民のために使うよう求めました。
 小池知事は五輪選手への検査には言及せず、「行政検査に加えて重症化リスクの高い高齢者施設、障害者施設、医療機関の職員への週一回の定期的集中的検査や、感染拡大の早期把握のため、リスクの高い繁華街や大学等でのモニタリング検査を引き続き実施していく」と答弁しました。
 そね都議はまた、不採算医療の後退につながる都立・公社病院の独立行政法人化を中止するよう迫りました。西山智之病院経営本部長は「独法への移行を着実に進めていく」と、従来の答弁を繰り返しました。