足立区の補聴器助成 半年で申請167、助成103件 / 昨年7月スタート 所得制限撤廃などまだ課題

「しんぶん赤旗」の「シリーズ広がる補聴器助成」に掲載された足立区の記事を紹介します。

東京都足立区では、2020年7月、補聴器助成制度がスタートしました。助成を受けた人は同年12月末で100件を超えました。(徳永慎二)


 同区の補聴器購入費助成の上限は2万5000円。昨年12月末までで167件の申請があり、103件が認定されました。「認定されなかった多くが、認定要件の住民税非課税世帯に該当しなかったケースです」(区高齢福祉課)。今年度の予算額は1700万円。680件を見込んでいます。

制度支える 「無料相談」

この制度に欠かせないのが同区障がい福祉センターあしすと自立生活支援室です。ここでは、毎週4日、国家資格を持つ言葉と聞こえの専門家・言語聴覚士による聞こえの無料相談を実施。「聞こえのセミナー」も開いています。

同区は申請前の相談をよびかけています。「相談に来られる方は、70~80歳代の中等度の難聴の方が大半です。制度発足の7月以降、各月とも例年を上回っています」と、言語聴覚士の天野京子さんはいいます。「聴力検査だけでなく時間をかけて生活状況などをお聞きし、その人に合った補聴器を使っていただくように案内しています」

「あしすと」の江連嘉人所長は「補聴器は購入した後が大事で、長いおつきあいになります。一人ひとり、適切に対応して生活向上につながるようにしています」。

陳情・要請・署名集めて

制度実現に大きな力となったのが「みみの会」(聴こえづらさをともに考える会、徳永健代表)の粘り強い活動です。14年5月の設立です。区議会への陳情、議会各会派への要請、議会の傍聴、署名のよびかけ。これらの活動はそのつど「みみの会」ニュースで知らせてきました。

同会が設立時に陳情した傍聴席へのヒアリングループ(磁気ループ)の設置は、全会一致の採択を経て翌年4月、実現しました。助成制度の創設を求める陳情は17年10月。審議未了・廃案になったものの、19年6月、再度陳情。7月には西新井駅前で署名をよびかけ、議会傍聴も重ねました。同年12月末には署名は1167人に。翌年4月、区は助成制度の予算化を表明しました。

強み生かし 流れにして

区議会では日本共産党区議団(ぬかが和子団長)が、助成制度の必要性を主張してきました。

19年10月3日の厚生委員会。西の原えみ子議員は国際的な研究成果を示して「認知機能低下を防ぐためにも早い段階での補聴器使用が大事だと強調しました。

「あしすと」での言語聴覚士による聞こえの無料相談について「全国的にもほとんど例がなく、すばらしいこと」と評価。「その強みを最大限に生かして聴力測定、補聴器給付、その後の使用訓練という流れをつくってほしい」と提起し、助成制度の創設を求めました。


西の原えみ子非課税世帯限定は撤廃
西の原えみ子議員の話

対象を非課税世帯に限定している現行の所得制限は撤廃するか、所得金額を引き上げるかすべきです。また言語聴覚士が補聴器を必要と判断した人は、助成の対象にするなど、問題点を解消してこそ補聴器装着がより広がると確信します。


横田ゆう制度拡充へ引き続き奮闘
現区議会厚生委員の横田ゆう議員の話

助成制度の創設は粘り強い運動の成果だと思います。問題はいろいろあるものの、制度ができたことで、聞こえの相談が増え、関心が高まり、認知機能について区民が知るきっかけになります。制度の拡充にひきつづきがんばります。


※足立区補聴器購入費 助成制度のあらまし

対象は区内の65歳以上の人。住民税非課税世帯の人または生活保護受給者、中国帰国者支援給付受給者。聴力レベルが両耳で40デシベル以上70デシベル未満。耳鼻咽喉科専門医の診断書が必要です。助成額の上限は2万5000円。1人1台1回限り。

(「しんぶん赤旗」2021年2月10日付より)