飲食店オーナー「対策後手で中途半端」 政府が緊急事態を再宣言

新型コロナウイルスの感染急拡大のなか菅義偉首相は7日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を再発令しました。期間は8日から2月7日までの1カ月間。飲食店などに営業時間の午後8時までの短縮を要請し、国民にも不要不急の外出自粛を呼びかけました。一方、「対応が遅すぎる」「対策が中途半端」など、政府への批判が噴出しています。
(長沢宏幸)

東京都と3県は宣言を受けて同日、特措法に基づき営業時間の短縮を要請する対象を、飲食店やカラオケ店に限定することを決めました。要請に応じた店舗には、1日当たり6万円の協力金を支給します。一方、パチンコ店やゲームセンター、劇場などには、午後8時までの営業時間短縮への協力の呼びかけにとどめました。協力金の支給対象とはなりません(一覧参照)。

都は都立高校について、時差通学の徹底、対面指導とオンライン学習を組み合わせた分散登校を実施。全ての部活動を中止します。区市町村の教育委員会には、小中学校への感染対策の徹底を求めます。
小池百合子知事は7日夜開いた記者会見で「最大限外出を控えていただくことを強く要請する」と都民に呼びかけました。しかし、検査体制の拡充など、積極的な感染抑止策には触れませんでした。

十分な補償あれば
営業時間の短縮を迫られる飲食店の受け止めは様々です。
北区で中華料理店を2店舗経営する藤ノ木宏明さん(47)は、これまでの時短要請には、16人の従業員の人件費や家賃、ローン返済などの固定費があり、経営が成り立たなくなるとして深夜営業を継続してきました。年末にやっと7~8割程度のお客が戻ってきたところだといいます。緊急事態宣言が出されたもとで、どうするか悩んでいます。
「1店舗1日当たり6万円の協力金が出ても間に合わない。8時閉店となると月100万円ぐらいの赤字が出てしまう。従業員数や営業実績に見合った補償があればいいのですが」と不安げに話しました。

早くうまい酒を
奄美大島の郷土料理が人気の小料理屋「くればわかる」を新宿区歌舞伎町のゴールデン街に開いて約30年となる宇畑(ひろはた)智由美さんは、「1日6万円の協力金をもらっても8時までしか店を開けられないなら赤字。だったら休業の方がいい。本当は営業を続けたいけれど、これ以上感染者を増やさないためには仕方がないでしょ」と、寂しそうに笑います。
店はカウンターの10席のみで、満席ともなれば隣の客と肩がふれあう距離感。グラスを片手に、遅くまで笑い声が響きます。宇畑さんは感染状況が心配で、年明けの営業は7日が初日でした。

宇畑さんは同業者らでつくる「新宿の灯を守る会」の代表も務め、歌舞伎町が感染拡大の中心地として名指しされて客足が遠のき、窮状に陥った業者を守ろうと、行政の支援やPCR検査体制の拡充を求める署名運動に奔走してきました。
「お客にもしものことがあってはいけないから、雇っているアルバイト全員に自費で検査もやってきた。素人なりにみんな一生懸命考え悩んでいるのに、こんなに感染が広がったのは国や都の対応が後手後手で中途半端だからだよ」と憤ります。
カウンターでグラスを傾けていた会員制クラブを経営する男性も「夜の自粛ばかり強調するが、コロナは夜行性じゃない。GOTOキャンペーンを続ける一方で、歌舞伎町の飲み屋をターゲットにしてきたことへの怒りはすごいですよ。十分な補償はもちろん、PCR検査(体制の拡充)もやるべきだ」と口調を強めます。
宇畑さんが手にした閉店後に張り出すという休業を知らせる張り紙には、「はやくうまいお酒が飲みたいですね」とのメッセージが書かれていました。

歌舞伎町は日本有数の歓楽街で、多くの飲食店とそれに関連する無数の業者が商売を営んでいます。新宿民主商工会には、そうした業者が多く加盟し、協力金の申請や持続化給付金などの手続きの相談が押し寄せているといます。
江島あゆみ事務局長は、「時短営業で大変になるのは飲食店だけではなく、そこに納入している酒屋や食材の仲卸などの業者も同じです。それなのに協力金の対象が飲食店に限られている。持続化給付金などの支援策も打ち切られようとしています。政府や都は経営が大変なすべての業者を支援すべきだし、協力金は店の営業実績にそくした補償にすべきです」と語っています。

緊急事態宣言時の主な要請
期間 1月8日~2月7日
店舗・
施設 飲食店は午後8時までの時短営業要請
・酒類提供は午前11時~午後7時
・対象は居酒屋などの飲食店、バー・カラオケなど飲食店営業許可を受けている遊興施設
・応じた店舗への協力金を1日1店舗6万円
・応じない場合は店名公表も(罰則はなし)
外出 午後8時以降の外出自粛
出勤 テレワークなどで「出勤者の7割削減」を要請
イベント 大規模イベントは収容人数の50%を上限に5000人まで
学校 大学入学共通テスト、高校入試は予定通り実施
小中高校の休校は要請せず
保育 保育所や学童保育は原則休園・休所せず
特措法に基づかない午後8時までの営業時間短縮の協力要請
対象施設 遊興施設(パチンコ店やゲームセンターなど飲食店の営業許可を受けていない店舗)、劇場、映画館、演芸場、集会場、公会堂、ホテル(集会会場)、運動施設、博物館、図書館など

宣言の解除基準 直近1週間の新規感染者数10万人当たり25人。東京は1日当たり約500人

医療体制の危機に直面
都内の新規感染者数は7日から3日連続で1日2000人を超え、医療崩壊への危機感は増しています(グラフ)。
都内の入院患者数は11日時点で3355人、コロナ患者用に確保している病床4000床の8割を超えました。このうち重症患者は131人と日ごとに増加。ホテルなどの施設療養者は1043人、自宅療養者は7494人。療養先が決まっていない調整中の患者は7031人にのぼっています。死者は累計で689人です。
7日に開いた都のモニタリング会議で国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は、「医療提供体制は破綻の危機に瀕する。実効性の強い対策をただちに行う必要がある」と危機感を示しました。都医師会の猪口正孝副会長は「新型コロナ患者の医療と通常の医療との両立に支障が生じている」と指摘。「感染拡大が続けば、他の疾病による重症患者の受け入れが困難となり、多くの命が失われる可能性がある」と訴えています。

超党派で臨時議会
開会求め申し入れ

日本共産党都議団は7日、緊急事態宣言発令に伴う都の補正予算の編成に向けて、臨時議会を開くよう、立憲民主党、東京みらい、生活者ネット、自由を守る会の4会派と共同で小池百合子知事と都議会議長に要請。また5日には緊急事態宣言を前に、実効性ある対策となるよう小池百合子知事に緊急の申し入れを行いました。応対した多羅尾光睦副知事は、「申し入れの趣旨を十分留意しながら対策にさらに尽力していきたい」と答えました。

共産党都委
緊急窓口に深刻相談
年末年始に急きょ開設

日本共産党都委員会はコロナ禍のもとで緊急相談の窓口を開設し、さまざまな深刻な相談が寄せられています。
相談は、電話とインターネットの相談フォーム(窓口)から受け付け。同都委員会の新型コロナウイルス対策本部長の谷川智行氏(衆院比例東京ブロック、東京4区予定候補)は、「年末年始は各分野の相談体制が弱まるので、困っている人が相談しやすい体制を取ろうと開設しました。どれも深刻な内容です」と話します。「入国管理センターに収容されている友人が、病気で診断もされているのに、まともに治療されていない」という相談や、虐待を受けて逃げ出し住まいを失っている人からの連絡もありました。

谷川氏は医師で、市民団体や労働団体が開いた相談会や炊き出しなど、さまざまな場に駆け付け、医療相談や生活相談に応じています。「これまで炊き出しや支援の場に来ないような層の人たちが、多く列に並んでいたのが印象的でした。コロナ禍は、あらゆる職種、階層にまたがって困窮を広げているので、行政が幅広く使いやすい支援を整えることが、どうしても必要になっている」と話します。
緊急事態宣言のもとでさらに困窮する人が増えると予想されます。政府が1月15日としている持続化給付金、家賃給付金の申請期限の延長、再給付、雇用調整助成金の特例措置延長、拡充が急務となっています。
相談・各種制度の問い合わせ先=最寄りの共産党事務所や議員まで。東京都の協力金相談センターは03(5388)0567(午前9時~午後7時、無休)。