最低賃金 引き上げで貧困なくそう 全国一律1500円求めシンポ

2020年2月20日

与野党議員「政治の責任で」東京地評

 東京で普通に暮らすために、いくらの生計費が必要か―科学的データの試算が、初めてまとまりました。調査結果は若者の一人暮らしで月24万~26万円の費用がかかるというもので、必要な賃金を時給で計算すると1600円~1700円になります。東京の最低賃金1013円を大幅に引き上げさせようと、調査に取り組んだ東京地方労働組合評議会(東京地評)などが9日、新宿区でシンポジウムを開きました。      (荒金哲)

 シンポジウムには、全国一律の最低賃金を推進する、自民党の議員連盟から、務台俊介衆議院議員が参加。共産党の宮本徹衆院議員、立憲民主党の末松義規衆院議員とともに、あいさつしました。

 務台氏は、議連で全国労働組合総連合(全労連)のメンバーから話を聞く会を開いてきたことなどを紹介。「地方を元気にするため、与野党問わず、各地域で勉強していきたい」と呼びかけました。宮本氏は「先進国で日本だけが給料が上がっていない。政治ができる一番の賃上げが最低賃金引き上げだ」と強調しました。

 東京地評などが取り組み、昨年12月に発表した「東京都最低生計費試算調査」の結果を、協力した中澤秀一静岡県立大准教授が報告しました。

 調査は、労働者の生活パターンを調べる「生活実態調査」と、どんな持ち物を所有しているかを調べる調査を実施。結果をもとに、生活に必要な費用を積み上げて計算する「マーケット・バスケット方式」と呼ばれるものです。
 今回は、集めたデータのうち、10~30歳代の一人暮らしの若者411人分を先行して分析。東京で、若者が普通に暮らすために、いくらの費用が必要かを算出しました。

 新宿区に職場のある労働者が北区、世田谷区、新宿区にそれぞれ住んでいるという三つのモデルを想定。必要な費用は、最も安い北区・女性モデルで月額24万6362円、最も高い新宿区・男性モデルで26万5786円の結果でした。
 月150労働時間でこの賃金を得ようとすると、時給は1640円~1770円ほどが必要になります。東京の最低賃金は、昨年10月改定で1013円。必要な時給とは大きな差があります。

中小業者への支援は

 シンポジウムでは、非正規労働者、公務員の職場、最低賃金引き上げを求める青年、中小業者などが、それぞれの実態を報告しました。
 最低賃金1500円を求めるエキタスの齋藤道明さんは「働いても貧困な生活をせざるを得ない労働者が増えている。苦しんでいる誰かの支援というのではなく、自分たちが貧困の当事者だという声を広げていきたい」と強調しました。

 全国商工団体連合会の中山眞さんは中小業者の立場から、「中小業者と大企業の公正な取引ルールを確立するなど、増加する給与に見合う中小企業支援が必要。赤字でも課税される消費税の減税こそ有効な支援になる」と指摘しました。
 中央大学の米田貢教授が「人々の生活最優先の経済運営への転換を」と題して基調講演しました。