補聴器 早期使用で認知症抑制

2019年11月26日

慶応大 小川教授「公的支援を全都に」

 日本共産党都議団は16日、「高齢期のきこえの支援を考える学習会」を新宿区で開き、約170人が参加しました。加齢性の難聴を放置すると認知機能の低下を招くとの警鐘を鳴らす慶応義塾大学医学部の小川郁教授が講演。医師会や補聴器業界、難聴当事者の団体代表が来賓に訪れるなど、期待の高さが示されました。開催にあたっては都議会各会派にも参加が呼びかけられ、都民ファーストの会、東京みらいの都議も参加しました。

共産党都議団 聞こえの支援へ学習会
 曽根はじめ団長が「(聞こえの改善は)国や都の役割が問われている問題。理解が深まればと思います」とあいさつしました。
 小川教授は難聴についてコミュニケーションが不自由になり笑ってごまかすようになることから「ほほ笑みの障害」と言われると紹介。高齢化が進む中で、難聴者は、今後10年間で1400万人から1600万人になると指摘。「難聴は高齢者の認知機能の低下に関与している」とし、中程度の難聴を放置すると7歳上の年齢と同じ認知機能に低下するとのアメリカの研究結果を紹介。他にも難聴が脳の萎縮を招いたり、死亡などのリスクを高めているとするさまざまなデータをあげました。

使用は14%のみ
 また、難聴と認知機能の低下との関連について、難聴の進行によってコミュニケーションの障害が起き、社会的孤立を招く結果、認知機能の低下になるとの仮説を説明。
 同時に補聴器を使用することで認知障害を抑制する効果が示されている各種調査結果を紹介。難聴が高度なほど認知機能が低下し、補聴器の使用者は認知機能が保たれていたという比較データを示し、「補聴器の使用は早ければ早いほど効果がある」と強調。補聴器をつけて、新聞や雑誌を音読するトレーニングや、人とのコミュニケーションが取れる環境をつくる重要性を力説しました。
 その上で、補聴器を必要としている人のうち、使用している人の割合は14%にとどまっている要因の一つとして、公的補助がないことを指摘。政府や国会議員への働きかけによって、購入費の医療費控除の実現や先天性難聴の子どもへの対策予算は拡充したが、高齢者への公的補助は課題となっていると指摘。「こうした動きをより活発化していただき、現在8区の補助を東京全体に広げてもらいたい」と力を込めて語りました。
 参加者からは「スクリーニング(精密検査)を受ける年齢の目安はあるか」「補聴器は片耳だけでも効果はあるのか」などの質問が相次ぎ、小川教授が丁寧に答えました。