暮らせる最賃実現へ 全国一律、参院選でも争点に

2019年7月8日

 貧困と格差の拡大や、地方経済の疲弊など自民党政治の矛盾が広がる中で、賃金の底支え、最低生活保障となる最低賃金引き上げによる経済効果が注目されています。安心できる暮らしの実現が争点になっている参院選(21日投票)でも、全国一律最賃制の実現と1500円への段階的引き上げを目指す共産党への期待が高まります。
(内田惠子)

賃上げが経済の活性化促す

 「全国一律最賃を実現すれば、普通に働いて普通に暮らせる賃金が確保され、年金などの社会保障の制度維持が可能になります」
 東京地評、東京春闘共闘会議などによる実行委員会が開いた「最賃シンポジウム」(6月22日・千代田区)で、京都の中村和雄弁護士は、全国一律最賃の効果を紹介しました。
 中村氏は、グローバル経済を推進するIMF(国際通貨基金)も、日本の最低賃金が先進国の水準を下回っていて、平均賃金比でも最低クラスとなっていると分析していることを紹介。「経済をデフレから脱却させ、成長を再活性化するためにも、社会のすべての層での賃金の引き上げは大きな効果を持ち得ると提起している」と話すと、会場が驚き、どよめきました。
 中小企業・労働問題研究家の筒井晴彦氏は、日本共産党の政策を紹介しました。「最賃1500円になれば、8時間働いて週休2日、残業なしで25万円になります。人間らしい最低限度の暮らしが可能になります」
 筒井氏は、最賃引き上げに伴う中小企業への支援策についても話しました。
 「フランスで成功している社会保険料事業主負担分を国が公費で補填するやり方が効果的なんです」と筒井氏。「7000億円あれば、1000人未満の全ての企業で、1000円を実現できます。これを3年間ほど続ければ1500円に接近できる」と語りました。

厚労省のごまかし

 なぜ、日本の最低賃金は先進国で最低の水準にとどまってきたのでしょうか─全労連で賃金、公契約を担当する斎藤寛生氏はその裏に、厚生労働省と中央最低賃金審議会の“まやかし”の計算式があると言います。斎藤氏によれば、東京最賃の985円で155時間働いた場合、足立区の生活保護基準を7903円下回ります。是正が求められているのに、厚労省は労働時間を長く見て比較して、最賃が下回ることはないと実態から目をそむけているのだと話しました。
 斎藤氏はまた、現行の最賃制度が都道府県を4グループに分けて、その内の一部でしかない都市部の最賃の上げ幅を大きくしていることを批判。全労連が行っている生計費調査、持ち物調査では、25歳単身で月155時間勤務する場合の必要な時間給は1350円から1590円。地域間で必要な生活費に格差があるという主張には根拠がなく、企業側の要望に基づく理由のない主張だと強調しました。斎藤氏は、全労連は各党を回って全国一律最賃制の必要性を訴えてきたことや、自民党議連が2月以降に開いた6回の総会には、パネリストの中村弁護士や全労連の黒澤幸一事務局次長が説明を行っているとして、「必ず実現し経済の7割を占める消費を回復させよう」と力を込めました。都教組養護教員分会の高野薫さんが「保健室から見た子どもの貧困」について、全労連・全国一般の東京地本の梶哲宏副委員長が低賃金構造の打開の問題を話しました。
 アメリカの経済動向に詳しい萩原伸次郎横浜国立大名誉教授は講演で、「貧困を減らすばかりか、経営者にとっても、離職率を減少させ、雇用の長期化で求人コストの削減が実現できるメリットがある。トランプは最賃を『企業の自由を束縛する』と反対しており、アメリカの最低賃金闘争の前進は、2020年大統領選挙での、サンダースなど民主党左派の躍進にかかっている」と話しました

時給1500円以上に 共産党都議団 大幅引き上げを要望

 日本共産党都議団は6月25日、最低賃金を大幅に引き上げ、速やかに時給1500円以上の実現を目指すことを求める申し入れを前田芳延・東京労働局長と都留康・東京地方最低賃金審議会会長宛に行いました。
 米倉春奈都議が申し入れ内容について説明。全国どこでも最低賃金1500円程度必要だとする労働組合の最低生計費調査を示し、1日8時間働けばまともに生活できる賃金とするため、早急な最低賃金の大幅引き上げを求めました。また「地域別最低賃金に合理性はない。全国一律賃金をめざしてほしい」と訴えました。
 東京労働局賃金課の担当者は、全国一律最低賃金にするためには法改正が必要であるとしつつ、「各団体などから要望があることは認識している。今回の要請についても厚生労働省に伝えます」と答えました。
 尾崎あや子都議は、中小・小規模企業が最低賃金を引き上げる際の業務改善助成金の実績が、東京都で21件しかないことを指摘。「設備投資だけではなく、業務の見直し等での生産性向上でも適用できることを周知すべき」と提案。清水ひで子都議は社会保険料の事業者負担を軽減するよう予算を大幅に増やすことを求めました。

都に対策強化求める
 共産党都議団はまた、翌28日には小池百合子知事宛に▽都内の最低生計費について、各年代、各階層ごとの調査、公表▽東京地方最低賃金審議会に対し、知事名で最低賃金の大幅引き上げを求める▽最低賃金の引き上げのため、中小企業・小規模企業支援策の強化・拡充―など、最低賃金の大幅引き上げが実現できるよう、都の対策強化を求めました。